神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第22話 軍師・孔明の邂逅

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庵の前に通されたピッドだったが、視線の先では狐が横になり寝転んでいた。

それを見た門番たちが、主人を慌てて起こそうとする。

しかしそれをピットが制す。

「ピット様申し訳ありませぬ。主は明け方戻り、ピット様をお待ちしていたのですが…」

「いえ、構いませんよ。私が会いたくて伺いましたので、起きるまでお待ちします」

しかし…と話す門番たちの話を制し、用意された椅子にも座らずにナインテールが起きるのを待った。

どれほどの時間が過ぎただろうか。

すっと目を開けたナインテールは、上半身だけを起こして背伸びをし、男が立っていることに気づく。

「白眉、あの方はどなただ?」

「はい、こちらはラビット村の主、ピット様でございます」

慌てて話す白眉にナインテールは怒り出す。

「愚か者!私を起こさず客人を待たせるとは何事か!」

「申し訳ありません!」

必死で謝罪する2頭を見て、ピットはナインテールに訳を話す。

「どうか…2人を責めないでください」
「事情を知った私がナインテール様を起こさないでほしいと頼んだのです」

「こちらこそ済みませぬ、ピット様が三度も足を運んでいただいていたのにお会いすることができませんでした」

平身低頭に謝罪するナインテール。

再び体を起こしたナインテールは、ピットを円卓へと案内する。

卓の上には、森全体の地図と碁石のようなものが置いてある。

「さて、わざわざ三度も訪ねてこられて、私と話したいこととは一体何だったのでしょうか?」

ナインテールはすました顔で尋ねる。

「…そうですね、ナインテール様がどんなかたなのか見てみたかった?でしょうか」

ほう、と嘆息するナインテール。

「それで、私の姿は如何でしたかな?」

「はい、普通に尾が9本ある狐のお姿でした」

その言葉にナインテールは噴き出す。

「それはそうでしょうね、私は九尾の狐ですので」

ナインテールは笑いながら答える。

「では、前世のお姿はどうなのでしょうか?」

ナインテールの笑いが止り無表情になる。

「ここに私の家臣、官兵衛を呼んでも宜しいでしょうか?」

「あと、門番のお二人も」

ふむ、と息を入れ、門番に官兵衛を呼ぶよう伝える。

官兵衛はナインテールに挨拶しピットの隣に立つ。

「今から私たちのもう一つの姿をお見せします」

ふたりの体が光り、人の姿をした二人が現れた。

「ご存じとは思いますが、これが私たちのもう一つの姿です」

ナインテールも彼らが変態できるのは知っていた。

しかし、目の前でそれを見せられると、やはり驚かずにはいられなかった。

「そうか、そういうことですか。つまり、人間の形に進化することで前世の記憶を取り戻すと!」

「このナインテール…初めて心が揺れております!」

興奮を隠せぬナインテールに、ピットはこう提案する。

「ナインテール様、よかったら前世の姿に戻りませんか?」

その言葉にナインテールの興奮は収まり、淡々とした言葉で返す。

「ほう、取引ですか?」

「その条件は?私を家臣にでもするのですか?」

その言葉にピットは首を振る。

「私は何も見返りを求めたりなどは致しません」
「ただ、前世の姿になるためには私と信頼関係…つまり信じてくれねばなりません」
「私がナインテール様に求めるものは、私の村と良き隣人になって頂ければと考えています」

そう話し終えると、ナインテールは質問する。

「それでは、あなた達に何の得があるというのです?」
「私が力をつけても、あなた方にはいいことなど何もないかもしれませんよ?」

いたずらっぽく笑うナインテールにピットもいたずらっぽく答える。

「だって…信用できる強い友人が隣にいた方がこちらも安心して暮らせるでしょ?」

この言葉を聞き、すべてを悟ったナインテールは本気で大笑いした。

「ハッハッハッ、今ならどんな取引もできる状況であるというのに、そんなことをする気が毛頭ない!」

「この御仁は稀代のお人よしですね!これではいろいろと探っている私の方が滑稽です!」

「ピット様が主君では、官兵衛殿も気苦労が絶えませんな?」

「はい、私もそう思います」

「だから私はそんな上様に全てを捧げたくなるのです」

官兵衛の言葉にナインテールも相槌を打つ。

「そうですね、私もその気持ちが理解でます。きっと私の前世も…そんな事があったのかもしれませんね…」
「官兵衛殿とは気が合いそうです」

そう言い終わると、ナインテールはピットに向き直る。

「ピット様、私はあなたと共に、この先の未来を描いてみたいと思います。」

「願わくは我々一同を配下にお加えください」

ナインテールと二人の門番は、ピットに頭を下げる。

ピットはナインテールに一言声をかける。

「宜しくお願いします、大軍師殿」

その瞬間、3匹の体は光だし、3人の男に変化した。

その大男は、綸巾を被り、鶴葦を纏い、右手に羽扇を持っていた。

「我が君ピット様、私の名は諸葛亮・孔明と申します。以後、我が君の覇道をお助け致します」

その後ろで2人の男が挨拶をする。

「我が君ピット様、私の名前は馬良・季常と申します。皆には白眉と呼ばれております」

「我が君ピット様、私の名前は姜維・伯約と申します。武芸にも自信がありますので、御用の際には何でも申し付け下さい」

半蔵の時に分かったことだが、今回は3人同時に進化したが、その種族で1番のものがピット直属となり、
それ以外は直属の配下になるようである。

3人が挨拶を終え、孔明が話を続ける。

「ナインテールの勢力、総勢10000名、ピット様と運命を共にさせていただきます」

この瞬間、森の3大勢力が、レッドキャップ・イワイ・ラビットに上書きされた。
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