眠れる姫に口づけを

あまいろ

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春にめざめて

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アリスは料理も得意だけれど。不思議なものを作るのも上手。

棗はそう思いながら自分がここにいる意味を考えた。

「僕ってなんでここにいるのかな」

ソファに横になりながらアリスに問う。

「運命だからじゃないかしら?」

アリスはその問いにあっさりと答えてしまう。

「私は棗と出逢えなかったら、なんて考えたくないもの。」

コポコポとフラスコに緑の液体を流し込みながら恥ずかしい事を口にするアリス。

「はい、できた。胃薬よ。ちゃんと一気飲みして!いい?おいし~い!!て言うのよ?」

「な、何その理不尽!」

「はい!飲んで!おいし~い!」

ふ、と悟った表情をしながら、棗はぐいっと飲み干した。

「お、おいし~い・・・」

とても不味い。




深い眠りから目覚めたのは、アリスが薬を作ってくれたからだ。

アリスが救ってくれた。




彼女より目覚めるのが遅かったのと年齢の所為もあり、棗は身長がアリスよりも低い。

アリスはすらっとした手足。歩き方すら優雅。

「背、伸びないかな・・・」

「伸びたら・・・どうするの?」

悪戯っぽく彼女は笑う。

「女の子より低いなんて嫌だ!!」

「だってまた15歳じゃない」

「私なんてもう18歳よ。」

三つ離れていてこの身長差・・・。

「大丈夫よ、小さくても私は棗に惹かれていたしずっと一緒にいる。」

「・・・うん。でも身長は絶対抜かす。」

ぎゅっと抱きしめられて、先ほどまで氷を触っていたからか、冷たい指先が首筋にあたった。

暑い、暑い、夏。冷たい、冷たい、彼女の手。




「前も言ったけど、お祭り行きましょう。明日、あるの。」

「アリスって最近、町の人と仲いいね。」

「やっぱり色々なお話しが耳に入って楽しいの!」

アリスは目を細める。

「行くでしょう?皆さん棗に会いたがってるのよ?」

「うん、行きたい。お肉屋さんのおばさんに会いたい。」

棗は頬を赤らめた。

「ふふ、そうね。熟女マニアなんだから棗ったら。」

「ち、ちが!お肉安くしてもらったから!お礼を言いたくて!」

慌てふためく棗をどうどう、となだめながら、

「大丈夫、棗がいくら熟女マニアでも私はー」

「アリス!!」

棗の顔は真っ赤だった。

「ごめんなさい、棗があんまり可愛かったから・・・ふふっ」

「子供扱いしないでっていつも言ってるだろ!!」

「ごめんなさい」

額に柔らかい感触。

「ね?」

「う・・・」

これを誘惑と言うのだろう、と棗は思った。
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