拒絶者の行く世界

蒼華 スー

文字の大きさ
上 下
62 / 69
魔妖学園

深瀬 翠side

しおりを挟む
─深瀬    翠side─

    コンコンコンッ





    俺は白崎と、天狗の次期長である天束あめのづか    鈴葉すずはが友人関係にある事を確認した直後に、その事を報告する為、理事長室へと急いだ。
    昨日の会議で白崎に少しでも動きがあったり、何かあったらすぐさま報告する事が決まっていたので、余計に。



    理事長室の扉を叩き、声を待った。




    「どうぞ。」
    「失礼します。」




    そう言って入り、すぐさま彼らの事を報告した。




    「ふむ。なるほどな………。
    となると、一番気になるのは、彼女が我々の存在を知っているのか否かだが………。」
    「後、気になる事がもう一つ、今朝から白崎の頭に、化け猫らしき妖怪が憑いていました。本人は特に、気持ち悪さ等はないとの事らしいです。」
    「ん?化け猫………まぁ、報告いい、分かった。
    ところで、今朝感じたあの巨大な妖力の正体は分かったか?」
    「はい。一応は。」
    「なんだった?」
    「白崎の頭に憑いている化け猫との事です。学園に着いてからは妖力を抑えているようで、確証は得られていませんが、十中八九そうだと私自身も言えます。」
    「ほう?何故だ?」
    「あそこ迄綺麗に妖力を隠せる存在は、私が見てきた中でも初めてです。恐らく、私より何倍も生きています。
    そして、妖力の扱いも………報告しにくいのですが、理事長よりも上だと思います。」
    「ふむ……………。お前がそう言うなら、そうなのだろうな。
    だが、不味いことになったぞ………。私より強い妖怪が、この学園にいるとなると………。」
    「はい。もしこの学園で暴れられても、止めれる者は居ないかと………。」
    「ふー。厄介な事になったな………。」




    理事長は少し長いため息を着いた後、ふと思い出したように話し始めた。




    「そう言えば、レストランからの報告に化け猫と一緒に食事をしている新任教師がいたという話があったはずだが………。おっ!あった。
    ふむ………。この報告によると、白崎は見える人間の様だな。」
    「という事は、白崎は我々の存在を知っているという事になりますね。」
    「いや、そうとは言いきれないね。」
    「………どういうことですか?」
    「私が思うに三つの可能性がある。
    一つ目、白崎は、見える人間で我々の存在を知っている。
    二つ目、白崎は、力の強い妖怪等しか見えず、見えているという自覚が無い。
    三つ目、白崎は、あの化け猫しか見えない。」
    「一つ目と二つ目は、分かりますが、三つ目は一体どういうことですか?」
    「つまり、あの化け猫が故意に白崎にだけは見える様にしているということだ。まぁ、それだったら、理由は分からんが………。」
    「なるほど………。分かりました。引き続き、何かあったら報告をします。」
    「うん。頼んだよ。」



    そう言われたので、退室しようとしたが、ふと、思い出した事があった。





    「はい。あっ、後もう一つ報告が………。」
    「ん?なんだ?」
    「白崎は普通の人より、霊力が多いみたいです。そこまでなら報告する程ではないと思います。
    しかし、明らかに白崎の霊力には何か違和感を感じました。」
    「……………どんな違和感だ?」
    「霊力を知らない普通の人と、霊力の流れが明らかに違いました。
    白崎の霊力は普通の人より、何倍も滑らかでサラサラとしていました。多分、白崎は霊力について知っているのだと思います。」
    「ほう。」
    「さらに、何かを隠しているような、抑えているような感じがありました。
    霊力とは違う何か、もしくは霊力も含めた何かを………。」
    「ふむ……………。
    となると、白崎は我々を知っている可能性が高いな。」
    「そうですね。そして、霊力の扱いにも長けていると思います。
    そんじょそこらの、陰陽師や退魔師より霊力の流れが何倍も綺麗でしたので。」
    「ふむ。……………白崎を準備が整い次第、ここへ呼ぶ様にするか。」
    「はい。分かりました。失礼しました。」




    そう言い、私は理事長を出た。








    ……………白崎    氷華、君は一体何者なんだ?
    何をしに、この学園に来たんだ?姉を驚かせたくて来たと言っていたが、それだけなのか?
    もっと重大な理由があるのではないのか?











    そう答えが見つからない問が、俺の頭に埋め尽くされていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

処理中です...