拒絶者の行く世界

蒼華 スー

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空からやって来た!

空からやって来た!*1*

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    私達は茶を終え、草原には、羅泉が大きな猫になり、私が羅泉にダイブしモフモフしているという何時もの光景が出来ていた。



    ピクッ



    ん?なんか来る?



    「ねぇ、羅泉?」
    『あぁ。なにか来るな。ヒョウは隠れてろ。』
    「……………どこに?」



    辺りを見回すが辺りは草原で隠れられそうな場所が見つからない。



    『……………出来るだけ離れるな。』
    「うん。分かった。」



    私は、先程感じた気配を何処から感じるか探った。



    ん?これって?



    「ねぇ、羅泉。私の気配察知力って変なのかな?なんか、気配が空から来るんだけど……………。」
    『いや、間違い無いみたいだぞ。』



    私は恐る恐る上を見上げると、何やら黒い物体とそれよりも少し大きい黒い物体がぶつかり合っていた。
    目を凝らして見てみると、黒い羽が生えた子供と青年が争っているのが分かる。



    私は、彼等から発せられる巨大な妖力に少し心細くなり、羅泉のモフモフに抱きついた。



    いや、まて、気をしっかり持て私。生まれて初めて強い妖怪同士の戦いを見て、驚くのは分かる。恐怖もあるだろう。
    だが、恐怖に飲み込まれるな。私は多分あの争いに巻き込まれたら、いくら霊力が強かろうがまだ修行したての六歳なので、羅泉の足を引っ張る事になるだろう。それは嫌だ。せめて、動けるようにしておかなければ。



    私は、恐怖で動けなくなる事を”拒絶”する。



    そう呟いた瞬間、恐怖は感じてはいるが、何時もの調子で体を動かせるようになった。



    これでよし。



    私は羅泉のモフモフを離して、空を見上げながら残っている御札を取り出した。



    『……………大丈夫だ。どうやらあれは修行らしい。』
    「は?修行?」
    『あぁ、烏天狗はあれくらいの年齢になると、他の妖怪に負けない為に修行を始めるのだ。』
    「そうなんだ。」



    私は、ホッとして御札を一枚だけ残してしまった。



    全部しまう訳ないよ?だって修行とは言っても人を襲わないとは限らないからね。油断大敵です。



    ドカッ



    ん?なんかすごい音がしたぞ?



    音のした方、空を見上げると、先程の子天狗が降ってきていた。青年の方は、子天狗が落ちていくのを見て焦ったように追いかけるが、どうやら子天狗が地面に落下する方が早そうである。



    ……………はい!?



    「ねぇ、羅泉。これってやばくない?あの子天狗、このままだと危険だよね?」
    『あぁ、このまま落下したら間違い無く、あの子天狗はただでは済まないだろうな。だが生憎俺は、跳べはしても、飛べはしない。飛ぶ術を知らんからな。』



    おうっ!それじゃあ、あの子天狗を助けられないと言っているのかな?やばい!流石に目の前でスプラッタは見たくない!!!!!
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