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月白凛
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私には、好きな人がいる。
likeでも、loveでも表せない。さらに深い愛だ。でも、強いて言えばLoveに近い。彼女は見るに耐えぬ程美しい。全身から放たれる憂鬱な雰囲気。しかし、話して見ると柔らかな物腰をしており、話すたびにどこか心の中の糸を結ばれるような気持ちになる。心の芯の部分を掴んで離さない。人を惹きつける能力とでも言おうか。そんな、不思議な彼女と初めて会ったのは図書室だった。
放課後の図書室の出来事だ。下校中の生徒がちらほらと確認でき、部活が始まった頃。ちょうどテスト期間だし、図書委員の特権を使って図書室にテスト勉強をしに行った。すると、学園の華とも言われる真澄花蓮が立っていたのだ。なんとも言えぬ暗い顔をして絵本を読んでいた。彼女は窓から突き刺さるように照りつける猛烈な 西日までをも虜にし、支配下に置いているようだった。美しい。絵本を読み終えたのかパタンと閉じて太陽の照りつける方向に向かってとても素敵な笑顔を向けた。まるで見守るかのような慈愛のこもった笑みだ。その笑みを作ったまま、またもや絵本を開き、破いた。見開き1ページをびりびりと、執念深く。まるで、感情のないドールのようだった。美しすぎるが故に怖い。その光景はどこかおぞましかった。超えてはいけないところを平然と超えているような気がした。そして、こちらに目を向けて………
「ごめんなさいね、弁償するわ」
こう言った。恥じることもなく、ただ何を考えているのか全くわからない静かな微笑を作って言った。
「はい………お願いします」
普段から私は無表情だし何に対しても動じることなんてない。生まれつきの性格のようだ。父とそっくりな性格をしていると乳母に嫌な顔をされたこともしばしば。そんな私でも動揺した。全身が震えそうになった。言い換えられぬ恐怖と好奇心、そして……美しさを感じた。彼女を知りたいと思った。きっと私は彼女みたいにはなれない。そして超えられない。だからこそ近くにいたい。彼女を知りたい。彼女に慕われたい。一目惚れだ。
毎日求婚するように彼女に取り入った。醜いと思った。でもそんなことをするに値する人間だ。彼女に気に入られて、彼女の隣を陣取って今以上に彼女を知るんだ。
「月白さん、だったかしら?」
「はい」
「もしよろしかったらお友達になってくださる?」
「え!?」
「どう?」
「もも、も、もちろんです!よろしくお願いいたします」
「よかった。では、これを差し上げるわ。ピンキーリング。お揃いなの」
私が諦めかけた時に彼女が声をかけて私を掴んだ。柔らかく掴んでいるのに、絶対に離れない。私も突き放そうとしない。彼女の目は確信を持っていた。絶対に私を虜にできると。それをわかっていながら私は彼女の虜になった。悔しい。けど、嬉しい。全身が高揚感に包まれた。最高の気分だった。
「凛さん?」
「あ、すみません」
今でもたまに思い出す。出会いの時を。運命の赤い糸ではない。黒い糸だ。醜さの中に信じるべき道がある。美しさがある。彼女がそれを教えてくれた。
likeでも、loveでも表せない。さらに深い愛だ。でも、強いて言えばLoveに近い。彼女は見るに耐えぬ程美しい。全身から放たれる憂鬱な雰囲気。しかし、話して見ると柔らかな物腰をしており、話すたびにどこか心の中の糸を結ばれるような気持ちになる。心の芯の部分を掴んで離さない。人を惹きつける能力とでも言おうか。そんな、不思議な彼女と初めて会ったのは図書室だった。
放課後の図書室の出来事だ。下校中の生徒がちらほらと確認でき、部活が始まった頃。ちょうどテスト期間だし、図書委員の特権を使って図書室にテスト勉強をしに行った。すると、学園の華とも言われる真澄花蓮が立っていたのだ。なんとも言えぬ暗い顔をして絵本を読んでいた。彼女は窓から突き刺さるように照りつける猛烈な 西日までをも虜にし、支配下に置いているようだった。美しい。絵本を読み終えたのかパタンと閉じて太陽の照りつける方向に向かってとても素敵な笑顔を向けた。まるで見守るかのような慈愛のこもった笑みだ。その笑みを作ったまま、またもや絵本を開き、破いた。見開き1ページをびりびりと、執念深く。まるで、感情のないドールのようだった。美しすぎるが故に怖い。その光景はどこかおぞましかった。超えてはいけないところを平然と超えているような気がした。そして、こちらに目を向けて………
「ごめんなさいね、弁償するわ」
こう言った。恥じることもなく、ただ何を考えているのか全くわからない静かな微笑を作って言った。
「はい………お願いします」
普段から私は無表情だし何に対しても動じることなんてない。生まれつきの性格のようだ。父とそっくりな性格をしていると乳母に嫌な顔をされたこともしばしば。そんな私でも動揺した。全身が震えそうになった。言い換えられぬ恐怖と好奇心、そして……美しさを感じた。彼女を知りたいと思った。きっと私は彼女みたいにはなれない。そして超えられない。だからこそ近くにいたい。彼女を知りたい。彼女に慕われたい。一目惚れだ。
毎日求婚するように彼女に取り入った。醜いと思った。でもそんなことをするに値する人間だ。彼女に気に入られて、彼女の隣を陣取って今以上に彼女を知るんだ。
「月白さん、だったかしら?」
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「もしよろしかったらお友達になってくださる?」
「え!?」
「どう?」
「もも、も、もちろんです!よろしくお願いいたします」
「よかった。では、これを差し上げるわ。ピンキーリング。お揃いなの」
私が諦めかけた時に彼女が声をかけて私を掴んだ。柔らかく掴んでいるのに、絶対に離れない。私も突き放そうとしない。彼女の目は確信を持っていた。絶対に私を虜にできると。それをわかっていながら私は彼女の虜になった。悔しい。けど、嬉しい。全身が高揚感に包まれた。最高の気分だった。
「凛さん?」
「あ、すみません」
今でもたまに思い出す。出会いの時を。運命の赤い糸ではない。黒い糸だ。醜さの中に信じるべき道がある。美しさがある。彼女がそれを教えてくれた。
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