上 下
5 / 21

デパートにて

しおりを挟む
「お嬢様、秋冬物のプレタポルテショーがあったようですよ」

「ということは、もう店舗にあるかしら?」

「えぇ、こちらにスタイルブックも届いておりますし、そうではないでしょうか」

「そう。なら行きましょうか」

1人で買い物に行ったところで到底持ちきれる量にはならないので始めから私はメイドを連れるようにしている。わざわざ電話するの面倒だもん。早速シルクのガウンからワンピースに着替えて出発。今日はママは京都に紫陽花探し。パパは琵琶湖付近で会食があるらしいから、家には子供達だけ。あ、でもお兄様はサバゲーでパートナーとちょっとした話し合いがあるって言ってたっけ。じゃあお姉様だけか。

「小町お姉様ぁ?一緒にお買い物行きませんか?」

ドアの外から呼びかけてもダメなようなので………

「雪だるま作る?」

あ、間違えた。許可を取らずにづかづかと部屋の中へ入るとこれまたドーリーな姿のお人形が…。あ、お姉様か。そう、お姉様はロリータがご趣味なのだ。本物の人形のように美しく、たまに同じ人間ということが不思議に思えるぐらいだ。今日もお姉様はロリータモードに入っているらしく、一言も喋らない。こちらに目も向けず1人で優雅にお人形を抱いてお茶を飲んでいる。

「………では、わたくし行ってまいります」

「妾も行く」

妾!凄いですね。徹底してますね。と伝えたら当たり前じゃ。だと。流石にこの喋り方する人と一緒に外でたくないなとほんの一瞬思ってしまった。まぁこれも個性か。
小町お姉様は絶対にセグウェイなどには乗らないので渋々門まで歩いて行きリムジンに乗ってデパートへ向かった。

「まぁ!真澄様!よくぞお越しくださいました。こちらへどうぞ」

そう言って案内されるのはデパート深部にある1つの個室。御用達セレブしか入れないサロンがあるのよ。普段は人が少ないけど今の季節、ファッションの入れ替わりの時期には案外混雑したりする。それでも10人20人余裕で入れるような空間なのでそこまで圧迫感はないかな。小町お姉様用のシャンパンと私用にリンゴのジュレ入りサイダーが出された。うむ、美味である
チビチビと飲みながら専属のスタイリストさんとこれもいいあれもいいとどんどん購入して行くと気づけば両手に袋が溜まるほどになっていた。

「良い買い物をしたな」

「小町お姉様は買わなくて良いのですか?」

「妾はヨーロッパの仕立て屋でしか頼まぬ」

そうなんです。小町お姉様は絶対に一点物、つまりオーダーメイド服しか着ないんです。しかもその服なんと私が3着買うのと同じ程の値段がするからこれまたびっくり。でも、それぐらい相談に相談を重ねて作っているんだって。でも貴方飛行機代もあるんだからね?まぁそんなことでとやかくいうほど我が家はお金に困ってないのでいいのか。ちなみに今日は水色と白で統一しているらしい。梅雨らしくて素敵ね。

「あら」

「お主は」

「なんでこういつもいつもお前に鉢合わせる!つきまとうなストーカー」

「はぁ、ストーカーって………この時期ならば会っても当然でしょう。寧ろ毎度のようにケチをつけてくる貴方の方がストーカーよりよっぽど面倒よ」

「なんっ!?」

と、堪忍袋の尾が切れたかのように怒りそうになった後すぐに余裕を取り戻したような笑みでシャンパンを片手にした。お前は貰えないのかという顔で見てくる。そうだった、君とは一度も一緒に買い物をしに来たことがなかったね。それじゃあ知らないのもしょうがないか。哀れ哀れ。そして、もらえなくて当然ということもわからないのかね?だって後ろには紙袋を抱えたメイドが3人だよ?買い物終わってるに決まってるでしょうよ。これだから馬鹿は嫌いだ。

「あらいやだ。彼、立ち飲みしていらっしゃるわ。すぐにサロンへ連れてってあげてちょうだい。私も行くわ」

「は?サロン?お前、寝ぼけているのか?」

「逆に、サロンを知らないんですの?」

そのたわいない行動が時に自分を苦しめるのだ。恥を知れ愚弄
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。  しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。

香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」 姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。 「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」 けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?

悪役令嬢に転生して主人公のメイン攻略キャラである王太子殿下に婚約破棄されましたので、張り切って推しキャラ攻略いたしますわ

奏音 美都
恋愛
私、アンソワーヌは婚約者であったドリュー子爵の爵士であるフィオナンテ様がソフィア嬢に心奪われて婚約破棄され、傷心…… いいえ、これでようやく推しキャラのアルモンド様を攻略することができますわ!

処理中です...