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ヒロイン襲来したらしいよ

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「雨ね」

なかなか止みそうもない、シチュエーションにあった雨が校舎を叩きつける。2日足らずでヒロインがやられることなどあるだろうか。普通、2日と言ったら「あ!またアンタ!?」なんて言って甘酸っぱい恋が始まる予感っ!とかなってるはずなのに。いや~すまんね。少々派閥が大きすぎたかね。それにしてもシリルの研修生は中々にやるね。授業終わりに合格者を出すとかなんとか言ってたっけ。合格したらどうなるのと聞いたら主に同学年の生徒達の躾だそうだ。やめてほんと。今まで私がやっていた仕事を彼等にやらせますのでその分シーニュ様と長くいられます!と、にこやかに嬉しそうに笑った顔に負けてしまい、そうねと言った。反論するつもりではあったんだよ?

「ただいまぁぁぁぁぁ」

ドサっと床に寝転がると蹴飛ばしますよと言われた。やめて。私これでもご令嬢だから。身体中痣だらけになるから。しぶしぶ起き上がって楽チンな真っ黒いガウンに着替える。ふえー、楽だよー。ベッドにダイブして寝ようと思っていたその頃ガチャリとなんの断りもなしにドアが開く。

「誰!?」

「あれぇ、シーニュこんな昼間からベッドに入ってるなんて具合悪いの?」

その豚になるよ?という目をやめてください。私の豆腐メンタルが今にも崩壊しそうです。ぐぐぐと苦し紛れに目を反らすもニヤニヤと笑っているクソ兄貴の顔が見える。くぅぅぅぅう、なんでいるんだよ!お前は女遊びでもしてればいいんだよ!ったく。苦虫を噛んだような顔で睨みつけると愉快愉快とベッドに座り込んできた。

「どいてください。少し体調が優れないんです」

「へぇ、じゃあ俺が看病してあげようか?」

「悪くなります」

「相変わらず生意気だなぁ。俺がこんなに気にかけてあげてるのに」

「何様だよ」

「お兄様だよ?」

ちっ、こいつほんとなんのために来たんだよ。帰れよさっさと。シャルルと若干キャラが被りつつあるから大人しく引っ込んでてもらわないと困るんだよ。むすっと口をとんがらせてそっぽを向いているといきなり頭に手が乗っかる。なに、キモいんだけど。

「これでもさ、兄なんだよ」

「だから?」

「へこんでることぐらいわかるよね」

「へこんでないし」

「へえ、俺嘘つきは嫌いだよ?」

「バーカ」

ハハハとイケメンオーラ全開で笑う兄に少し赤面している自分が嫌だ。兄だ!これは兄だ!リアル兄妹愛なんてあってたまるもんか!そうだ!恋愛耐性スキルが極度に低くとも兄妹で愛などありえない!背中にスローガンを掲げるように心の中で手を大きく挙げる。私は、人形。フランス人形可愛い可愛いフランス……いや、日本人形か?でも日本人形って美しすぎるゆえに怖いっていうか、人間方の人形って怖いよね。わかる?

「可愛いなぁ、こんな婚約者が欲しいよ」

ボンッ

ずるくない!?なにこいつ!ホストですか
!?可愛いってどこが?実物のツンデレって厄介でこじらせててめっちゃ迷惑じゃない?私だったら絶対付き合いたくないね!さらに、引きこもりヤンデレの面影ありの私なんて付き合うならまだしも結婚を前提なら絶対無理でしょ。……………自分で言ってて少し悲しいけど…。はぁ、落ち込んだ。無理。顔を地に出したくない。布団を被るとしょうがないなぁという少し呆れたようなため息交じりの苦笑が聞こえる。どうせめんどくさいとでも思ってるんだ。まぁ自分でも自覚してるからいいけど。

「ほら、そんな事しないで出てきなよ。
いい土地を買ったんだ。ここから馬車で20分くらいのところにあってね、凄く綺麗なんだよ。早く準備してね」

「あ、ま、行かない………」

鼻歌を歌いながら扉を閉めて行ってしまった…。えぇー、行きたくなーーいーー。外に出たくない。辛いしんどい~

「ほら、お着替えになってください。わざわざ隣国の商談を断って来てくださったんですよ?」

「は、そうなの?」

「お嬢様のお友達がお手紙を送ったようです」

「なんて優秀な補佐官…!」

「ですから、早くお着替えになってください」

「あーい」

白くて紺色のラインの入った品のよろしい五分丈ドレスに、同じデザインの手袋に靴。頭は簡素にポニーテールにして、そこに厚めの生地のリボンを巻く。おぉ、可愛い。さらに、これもドレスとお揃いの柄の日傘を渡される。今日、雨ですが?と、外を見たらありえんぐらい晴れていた。なんだ通り雨か。うげ、通り雨の後の晴れってクソ暑いんだよねぇ………。しかし、ここまで来てくれた恩を仇で返すわけにはいかないし、申し訳ないのでドアを開けて準備ができましたと言う。

「うん、よく似合っているね。デザインが骨董品みたいで面白い」

「褒めてます?」

「褒めてるよ?」

兄妹仲悪くお散歩なんていうのもたまにはアリなのかもしれない。
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