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転生したった

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「く、くる?」

「いえ、まだかと」

現在階段の上にてメイドに掃除をしているふりしてもらいながら玄関を監視してもらっております。あいつにはさいっこうの笑顔で媚びへつらわないと絶対についてきてくれない上に各家庭に1匹はいる黒光りしたあの虫を見るような目で見られるのだ。それだけは勘弁してくれ。いくらぼっち耐性が強くてもあいつを見るような目で見られたことはそうそうない。

「お嬢様!」

「えぇ」

「シーニュ?」

来たか

「お兄様!!お久しぶりです!!」

まるで子犬がご主人様を出迎えるような勢いで無理やり尻尾をブンブン振って魔王様に抱きつく。

「ははは、相変わらずだなぁ」

「そうですか?わたくし的には少し大人になったと思うのですが、どうですか?」

「うーん、抜け目が多いところなんかは変わらないよね」

何それ。なに、その意味深なワード。やめて。どこ見ていってるの。ちらっと上目遣いをしながら魔王を見ると私の方など微塵も見ず、その目は階段に釘付けになっていた。おぉうまいごっと。助けてーーーーー

「お、お兄様!今日のおやつはシャルロットですわよ!とっても美味しいから一緒に食べませんこと?」

「そうなの?それじゃあいただこうかな。シーニュの部屋で」

に、二階のね………

「えー、わたくしは広い食堂で食べたいですわ!」

「いいけど、それじゃあ僕は昼食からいただこうかな。なんせ食べてないものでね。
シーニュも、一緒に食べるよね?」

うんうん、食べるよー。食べるけどさー、コック?シェフ?その目は何かな?まるで腕によりをかけて作ります!という熱意が見られるよ?やめて?私が嫌いな言葉第10位ぐらいに熱意って言葉あるの忘れないで?と、目で語りかけても盲目になりつつある彼らには伝わらない。

「えぇ。でもわたくしはお腹いっぱいですのでお茶だけで充分ですわ」

「なら、シーニュの部屋でいいんじゃない?」

「…………」

「…………」

2人の間に沈黙が続く。そして、兄がニヤッと笑う。

「うぉぉぉぉぉぉ敗けタァァァォォォ」

「ふっ、この僕に勝とうなんて随分いい根性してるね。さて、シーニュは何をしてくれるのかな?」

ささやかな微笑を崩さずにジリジリと歩み寄って、プレッシャーをかける。これだ。敢えて自分から要求は言わず、相手に言わせようとするこの感じ。きぃぃぃ許すまじ!しかしここでまた反抗してもさらにメンタルを傷つけられるだけなので適当に「お兄様の望むことを」と言う。

「じゃあ、1日奴隷街に言って売られてきてよ。大丈夫、僕が買ってあげるから。1ヶ月の契約で」

「あら、ごめんなさい。わたくし今目の前に悪魔が見えるんですの。目が悪いようですからこれでは市場にも出させてもらえないわ」

「なに?喧嘩売ってるの?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「はぁ、しょうがないから今日1日僕の執務をやれば許してあげるよ。ただし、下手な真似したらただじゃおかないからね?わかった?」

「はい、」

こうして、後日私はリア充の中にたった1人最弱装備で向かったのでした。うっうっう、お父様に言いつけてやる

その頃の使用人一同

「兄貴コエェェェェェェェ」

「けど、2人して豪邸に立ってると絵になるゥゥゥゥゥゥゥ」

「えーうーえーうーうるっさいんだよ!」

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