あおのしじま

白亜依炉

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ご褒美ちょうだい!~放課後イタズラ編③~

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――「じゃあ、イっちゃいなよ。ちゃんと受けとめてあげるから」



「ドアも窓も先にちゃーんと閉めておいてやったからさ」
「はぁ?! テメェなに考、…あっ、ぅん、んんっ」
「静寂が悪いんだからな。おれ、せーっかくテスト終わりの予定考えてたのに」
「んなの知らな、ぁ、やめ、触んなぁ…っ」

 慣れた手つきでベルトのバックルを外して、するっと下着の中に手が入って来て、既に濡れてたソコがくちくちと音を立てる。反対側の手は相変わらず乳首を弄ってて、俺はもう喘ぎが外に響かないように、大きくならないようにすることで頭がいっぱいだ。補習なんて頭に残ってない。ただ、ここが学校で、座ってる席が自分の席で、目の前に置かれた教材に精液が飛んだらマズいことだけはギリギリ理性が書き留めていた。

 でも、俺がどんだけ喘ぎを堪えたところで蒼乃は容赦ない。俺のもんを握った手の強さも、擦る速度も、触り方も、どれも俺をイカせる為にしてるって丸分かりだ。ぐちぐちくちゅくちゅくちくち、どんだけ水音が鳴っても手を緩めない。だらだらと染み出てくる汁を塗りつけて、追い詰めるように握り込む。快楽に従順な身体は蒼乃に従って腰を振る。嫌だって思うのに揺れる腰はどうしようもなくて、高まっていく射精感もまたどうしようもない。気持ちぃ、だめだ、これ、気持ち良くて、頭まっしろで…。

「ん、ぁ、ぁっ、あお、あおのぉ…!」
「きもちぃ? きもちーよなぁ。ほら、もっとシたげるから……」

 ―― イケよ。

 熱を孕んだ吐息と音が耳を犯す。追い詰め方を心得ている指先がくしゅくしゅと先走りを泡立てながら上下する。久しぶりの快感に目の前がチカチカして、女みてぇな聞くに堪えない声が出る。自分で口を塞げなくなったことに気付いた蒼乃が乳首を弄るのを止めて俺の顎を掴んだ。そのまま後方から身を乗り出してきた薄い唇に口を塞がれる。
 ……あ、キスされた。そういえば、キスも久しぶりだ。

「ん、んんっ、んふ、んぅ、んんっ……っ~~~~~~!!!!!!!」

 急速に上り詰めされられた真白な階段の上、明滅する世界の中で欲を吐き出す。数回びくびくと体が震えて、酸欠の頭はどこかスッキリとしたまま呆然と壁掛け時計を見上げていた。あぁ、よかった。まだ昼だ。一回やっただけなんだから当たり前な筈なのに、イった余韻でボケた頭は事実をありがたそうに受け入れた。

「うっは、どろどろ。溜まってんねぇ」
「……お前……マジであとで殺す…」
「ごめんて。駅前のラーメン奢るから許ちてっ」

 自分のポケットから取り出したティッシュで蒼乃が白濁を拭っていく。喧嘩慣れしたあの骨ばった指に絡みついて糸をひいた白がいかがわしくて、イったばっかなのにナカがくぅっと勝手に締まる。……違う。イカされたから、触れられてないから、キモチイイコトを思い出して、足りなくて……。

「…………蒼乃ぉ、」
「んー? あ、ちょいじっとしてて。まだちゃんと体拭けてない」
「………………帰ったら、腰立たなくなるくらい抱いて。足んない」

 ぽとり。

 蒼乃の手からティッシュが落ちて、きゅっと縮こまった瞳孔が俺を見る。それから、たっぷりと数十秒。息をするのも忘れたようにこっちを凝視していた目が動いて、落としたティッシュを拾って、代わりをまた出して、汚れたままだった股間やら太ももを拭われて、そのまま何事も無かったようにズボンのチャックを締められた。ベルトは自分でやれってことらしい。

「あの、さぁ……しじまぁ…」

 俺がベルトを締めて身なりを整え直した後。どこか躊躇いがちに、けれど、なにかを期待するようにまたあの甘えた声を蒼乃が出した。さっきまでの強引さなんて忘れました、みてぇなツラで机の端に両腕と頭を乗せて俺を見上げる。よーく知ってる。蒼乃が甘えてくる時のやつ。

「今回の勝負、おれが勝ったじゃん?」
「そーだな」
「おれさぁ……静寂としたいことあってさ」

 親の機嫌を窺う子どもよろしく俺を見上げていた蒼乃の目に、また鋭さが宿る。隠しきれない『欲』がチラついていて、コイツも我慢の限界だったことにようやく気付かされた。今すぐにでも捕食したい。喰らいつきたい。そんな恐ろしい言葉が醸し出す空気に混ざり込んでいる。
 ……そして、それはあながち間違いじゃなかったってすぐに理解させられた。

「おれさぁ……学校えっちしてみたいんよな」
「……………………は?」

 なんて言った? 学校えっち? 今やらされたくね?

「今みたいなのじゃなくってさ。ちゃんと、最後まで……がっこでスんの」

 三階の空き教室なら誰も来ないから。工事の点検は上層階からしていくって言ってたから。もうあの場所は見終わった後だろうから。空き教室は基本的に鍵かかってないから入れるから。多少声が出ちゃってもあんな場所、滅多に人も通らないから。色んな理由をとってつけて、今度は玩具をねだる子どものように蒼乃は俺を見つめる。要求の内容はそんなガキみてぇな可愛らしさ、欠片もねぇが。

 今にして思えば、テスト勉強をしている時から蒼乃は「なんで?」って疑問符がいくつも浮かぶほどにやる気十分だった。そりゃ確かに勝負はしてたけど。傍目から見ても不思議なくらい明確な目的意識を持って、計画的に、出来る限りの最善を尽くしていた。……その理由がこれか。学校で…セックス……。予想外の話におもわず片手で頭を押さえた。

「…………マジ?」
「マジ」
「頭イカれた?」
「バカみたいに性欲に負けてる自覚はあるけど正常」

 夏の眩さがよく似合う新緑の瞳が俺を映す。
 けど、今その目に塗りたくられた色はそんな爽やかな色じゃなくて。



「頑張ってストレート勝ちしたご褒美。……くれるよね?」



 毒々しいまでの色欲と捕食者の色だった。
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