夜霧の怪談短編集

第四話 連鎖する怨念～真相

はい、先程のお話で登場した坊主は私のことです。

……真実を伝えたら彼がショックを受けることがわかっていて、なぜ話したか、ですか？ 彼には、知る権利がありましたから。

藤原さんとご子息の命を奪い、魂を取り込んでしまうほどに渦巻いている恨みの念……　その元凶のご子孫である彼が今後も無事でいられるとお思いですか？
そう、あのまま黙っていれば次の被害者は彼になるはずだったんですよ。
当然でしょう？

ですが、彼は自分の手で藤原さん一族、そのご先祖を供養したいと本気で思い、日常を捨てて寺の門を叩いた。
寺で修行している限り彼は御仏に守られますし、彼のその一途な思いはいずれ藤原さん一族を救うでしょう。

私がそこまで教えてしまうのでもダメでした。
自分の命惜しさで寺に入門したとて、その先に身につける知識などなんの意味もありません。
心からの懺悔、思いやり。その気持ちがなければ。

彼は自分で正しい道を選び、歩み始めることができたのです。
それも、知る権利があり、選択する権利があったからこそですよ。