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第三十章 最終章② 最終試練編

第97話‐2 エロスとプシュケ

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地球で伝承されている「ギリシャ神話」においての、愛の神エロスと人間の娘プシュケの恋物語。

そのあらすじはこうだった。

類まれな美しさを持つ人間の娘プシュケは、美の女神アフロディーテにその美しさを疎まれ、愛の神エロスに命令してエロスの矢を使わせようとするが、エロスはプシュケに恋をしてしまう。

そしてプシュケは、父により辺境の場所に送り込まれるが、姿を見せない主は彼女を手厚く迎え、姿を見せないまま2人は夫婦となった。
姉の入れ知恵により相手は怪物だと思い込んでいたプシュケだが、ある夜夫の姿を見て、誰よりも美しい少年ーーエロスだと知る。

だがエロスの正体は気付かれてはいけなかったのでエロスはいなくなってしまう。

再会を望んだプシュケは、アフロディーテから与えられた試練を乗り越え、神々の助けも受けながら試練をクリアする。

そしてエロスとプシュケは結ばれ、プシュケは神と同じく不老不死を与えられて、2人は永遠に幸せに暮らすのだったーー



「この物語を使って僕たちなりにパフォーマンスするんだね」

美少年達はその夜、寮のリビングに集まっていた。


「神話らしい話だけど、この物語をそのまま使うだけではエロス様を感動させることは難しいだろうね」
エースのガニュメデスは腕を組んで考え込んでいる。


「何だかこの話のプシュケって…少し僕達みたいだな」

ナルキッソスがぽつりと呟いた言葉に、他の3人は一斉に反応した。



「えっ?どういうこと?」
「このプシュケって奴も、苦労したり試練を与えられたりするけど、好きな相手や神々に助けられながら乗り越えるんだろ。僕達もそういう所あるよな」
「あ……確かにそうだね」

最後の試練が残されてはいるものの、当初掲げていた願望も達成でき、恋愛禁止令も解除でき、そしてここまで成長できたのは自分達だけの力では到底叶わなかっただろう。


アポロンを始めとして多くの神々やファン達の協力や助けがあったからこそ実現できたことだった。
そう考えるとこの物語は自分達の軌跡を表しているとも言えなくはないのかもしれない。


「じゃあ僕達はこの物語を自分達の経験と重ね合わせて表現すればいいってことなのかな?」
ヒュアキントスの言葉にガニュメデスが頷く。

「そうだね。自分達の想いを乗せないと、エロス様に認めてもらえないんじゃないかな」
「よし、それなら早速練習しようぜ!」
「うん、頑張ろう!みんなで力を合わせればきっとうまくいくよ」
「ああ、そうだな」

こうして彼らはエロスを納得させるために、ギリシャ神話を題材にしたパフォーマンスの練習を始めることにした。
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