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第十九章 トリックスター編
第58話‐2 ゼウスの狙い
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「ゼウス様、一体どういうことですか?グループに残るようにと、ヘルメス様から伝令を受けましたが…」
携帯端末でゼウスと連絡を取っていたガニュメデスは疑問を投げかけていた。
すると電話の向こうでゼウスは答えた。
どうやら、ヘルメスは事前にゼウスから指示を受けていたらしい。
記者会見を中止させるようにと。
彼はその指令を利用し、美少年達のユニット対決を記者達に発表するパフォーマンスに変えたのだった。
「貴方は、僕に試練を与えたはずです。運営者であることを彼らに明かし、グループを脱退することが試練なのでは…」
「ん?んーー、それがのぅ、済まんが事情が変わったのじゃ」
「え?」
ゼウスは一呼吸置き、言葉を続けた。
「実はエロスから警告を受けてのぉ。エロスはアポロンと勝負することになったそうじゃな、それもお前達がエロスを認めさせれば勝ちという過酷な条件でな」
「ええ。ですが…」
「エロスから、余計な手を回さないようにと通告を受けてな。さすがの儂も、エロスには逆らえんからのう」
それはそうだ。エロスは天界最上位の神格を持つ存在なのだから・・・。
「そ、そんな…!」
「だがな、ガニュメデス。この試練を課したのは、お前の本心に気付かせるためじゃったんじゃぞ」
ガニュメデスはハッとしたような表情をした。
「お前は性愛を感じないだけでなく、愛そのものを知らない。エロスがお前に興味を持つのもそのためだろう。だが、お前は仲間のために悪者になってまで、守ろうとした。わかるか?ガニュメデス」
「え…?」
唐突に何を言い出すのかと困惑するガニュメデスだったが、構わずゼウスは言った。
「それが『愛』という感情なんじゃよ。愛は自分に力を与えてくれるんじゃ。自分のためだけに生きていては本来の力を出すことはできん。他者のためという気持ちこそが、本当の力を生み出すのじゃ」
まるで我が子の成長を喜ぶ親のように慈愛に満ちた声だった。
その声はガニュメデスの心に響いたようだ。
確かに自分は、優等生で何でもこなすことができた。
自分は優れていると思っていたし、周りからも一目置かれていたと思う。
だが誰かと分かり合うこともなく、張り合う相手もいなかった。
いつかアドニスに見抜かれたように、本当は孤独で、いつも冷めていた。
そんな自分が初めて知った感情は、彼らを守りたいという思いだった。
これは今まで経験したことのない感覚だった。
「愛…。これが『愛』という感情なんですね……」
ガニュメデスは初めて自覚した。
そうか、だから僕は彼らを守りたかったのか、と。
ゼウスはそれを見抜いていたのだ。
(お前は完璧超人とも称されているが、愛そうとしない『弱さ』があった。愛することは己の弱さと向き合うことでもあるからな)
そしてゼウスは言う。
「彼らを陰ながら助けることも愛だが、彼ら自身で乗り越えなくては彼らの為にはならん。エロスを認めさせるのは至難の業じゃろう」
そう、だからこそ彼は敢えて試練を与えたのだ。
彼の真の力は、彼自身が成長しなければ発揮できないのだから。
「お前にできることは、彼らと共に戦い抜くこと。仲間を信じて戦うことができれば、必ず勝てるはずじゃ」
そう言ってゼウスは電話を切った。
通話を終えた後、ガニュメデスは思った。
(僕の負けだ……)
ガニュメデスは覚悟を決めるのだった。
必ず4人でエロスを認めさせてみせるとーーー
第60話に続く・・・
携帯端末でゼウスと連絡を取っていたガニュメデスは疑問を投げかけていた。
すると電話の向こうでゼウスは答えた。
どうやら、ヘルメスは事前にゼウスから指示を受けていたらしい。
記者会見を中止させるようにと。
彼はその指令を利用し、美少年達のユニット対決を記者達に発表するパフォーマンスに変えたのだった。
「貴方は、僕に試練を与えたはずです。運営者であることを彼らに明かし、グループを脱退することが試練なのでは…」
「ん?んーー、それがのぅ、済まんが事情が変わったのじゃ」
「え?」
ゼウスは一呼吸置き、言葉を続けた。
「実はエロスから警告を受けてのぉ。エロスはアポロンと勝負することになったそうじゃな、それもお前達がエロスを認めさせれば勝ちという過酷な条件でな」
「ええ。ですが…」
「エロスから、余計な手を回さないようにと通告を受けてな。さすがの儂も、エロスには逆らえんからのう」
それはそうだ。エロスは天界最上位の神格を持つ存在なのだから・・・。
「そ、そんな…!」
「だがな、ガニュメデス。この試練を課したのは、お前の本心に気付かせるためじゃったんじゃぞ」
ガニュメデスはハッとしたような表情をした。
「お前は性愛を感じないだけでなく、愛そのものを知らない。エロスがお前に興味を持つのもそのためだろう。だが、お前は仲間のために悪者になってまで、守ろうとした。わかるか?ガニュメデス」
「え…?」
唐突に何を言い出すのかと困惑するガニュメデスだったが、構わずゼウスは言った。
「それが『愛』という感情なんじゃよ。愛は自分に力を与えてくれるんじゃ。自分のためだけに生きていては本来の力を出すことはできん。他者のためという気持ちこそが、本当の力を生み出すのじゃ」
まるで我が子の成長を喜ぶ親のように慈愛に満ちた声だった。
その声はガニュメデスの心に響いたようだ。
確かに自分は、優等生で何でもこなすことができた。
自分は優れていると思っていたし、周りからも一目置かれていたと思う。
だが誰かと分かり合うこともなく、張り合う相手もいなかった。
いつかアドニスに見抜かれたように、本当は孤独で、いつも冷めていた。
そんな自分が初めて知った感情は、彼らを守りたいという思いだった。
これは今まで経験したことのない感覚だった。
「愛…。これが『愛』という感情なんですね……」
ガニュメデスは初めて自覚した。
そうか、だから僕は彼らを守りたかったのか、と。
ゼウスはそれを見抜いていたのだ。
(お前は完璧超人とも称されているが、愛そうとしない『弱さ』があった。愛することは己の弱さと向き合うことでもあるからな)
そしてゼウスは言う。
「彼らを陰ながら助けることも愛だが、彼ら自身で乗り越えなくては彼らの為にはならん。エロスを認めさせるのは至難の業じゃろう」
そう、だからこそ彼は敢えて試練を与えたのだ。
彼の真の力は、彼自身が成長しなければ発揮できないのだから。
「お前にできることは、彼らと共に戦い抜くこと。仲間を信じて戦うことができれば、必ず勝てるはずじゃ」
そう言ってゼウスは電話を切った。
通話を終えた後、ガニュメデスは思った。
(僕の負けだ……)
ガニュメデスは覚悟を決めるのだった。
必ず4人でエロスを認めさせてみせるとーーー
第60話に続く・・・
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