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今日も今日とて
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人魚の名はルイスといった。
彼はとても美しい容姿をしており、時々人間に見つかっては拐われそうになっていた。だけど人間と話すことが好きだったルイスは今日も今日とて海面に顔を出して、通りかかる船を待っていた。最近仲良くなったある男を待っているのである。
「おーい!ルイスー!」
穏やかな海をかき分けて海賊船が現れる。海賊船といっても三人ほどしか乗れない小さな船である。その船にたった一人、海賊と名乗り海をさすらう男がいた。
ルイスは腕をあげて大きく振り返すと、船長のイワンに船の上に引き上げてもらった。
「ありがとう、イワン」
腰まである髪を軽くしぼる。
「いいってことよ、それより遅くなって悪かったな、ちょっと前の島で足止め食らってよ」
「足止め?今度は何したの?」
クスクス笑う青年の人魚にイワンは強面の目尻に皺を作って笑った。
男はルイスに恋をしていた。
地上に興味があるルイスのために、面白い話を見つけては聞かせて、時には小説の中の話を聞かせたりもした。ルイスと出会うまでは本なんて読んだこともなかった。
「俺はそのとき言ってやったんだ!お前に食わせる飯はねえってな」
「ふふ、イワンはそのお店のスタッフじゃないのにね」
「ああ、でも俺が山賊を追っ払わなかったらその店の奴らが怪我してたかもしれない」
「すごいね!イワン!やっぱりその体の大きさは伊達じゃないんだ!」
すごい!と誉められたイワンは満更でもない。浅黒い肌で分かりづらいが顔は赤くなっている。
ルイスはキラキラした瞳でイワンを見つめているが、内心は不安で仕方がなかった。この関係がいつか終わると思うと怖かったのだ。泣いてしまう日もあるくらいだった。
「ねえイワン、歳を重ねても僕はずっと君とこうして話をしていたいよ」
「ん?どうしたんだ急に」
「ううん、何でもない。ねえ次はいつ会えるの?」
「その事なんだがなルイス、俺は海賊をやめようと思ってるんだ」
「え……やめる?」
ルイスの心は驚きと悲しみで包まれた。
海賊をやめたら今までのように海に出る回数も減るだろう。いやもしかしたらもう海には出ないのかもしれない。ルイスは一人、ぐるぐる考えていた。どうして急に、なんで、どうして。ルイスは混乱して涙が溢れた。そしてとうとう自分の気持ちを告白した。
「うぅ、イワン、僕……イワンが好き」
「ほ、本当か!?」
一方、泣きながら好き好き言う思い人を前に、イワンは天にも昇る気持ちで言った。
「俺は君を愛してる!」
「……ほんと?」
「ああ!本当だとも!だから海賊をやめて海辺に家を買ったんだ!君がいつでも好きなときに来れるように」
「っ!!」
イワンに抱き締められたルイスは嬉しくて涙が止まらなかった。
「これからはずっと一緒だ」
「うんっ」
穏やかな海が二人を祝福するように輝いていた。
彼はとても美しい容姿をしており、時々人間に見つかっては拐われそうになっていた。だけど人間と話すことが好きだったルイスは今日も今日とて海面に顔を出して、通りかかる船を待っていた。最近仲良くなったある男を待っているのである。
「おーい!ルイスー!」
穏やかな海をかき分けて海賊船が現れる。海賊船といっても三人ほどしか乗れない小さな船である。その船にたった一人、海賊と名乗り海をさすらう男がいた。
ルイスは腕をあげて大きく振り返すと、船長のイワンに船の上に引き上げてもらった。
「ありがとう、イワン」
腰まである髪を軽くしぼる。
「いいってことよ、それより遅くなって悪かったな、ちょっと前の島で足止め食らってよ」
「足止め?今度は何したの?」
クスクス笑う青年の人魚にイワンは強面の目尻に皺を作って笑った。
男はルイスに恋をしていた。
地上に興味があるルイスのために、面白い話を見つけては聞かせて、時には小説の中の話を聞かせたりもした。ルイスと出会うまでは本なんて読んだこともなかった。
「俺はそのとき言ってやったんだ!お前に食わせる飯はねえってな」
「ふふ、イワンはそのお店のスタッフじゃないのにね」
「ああ、でも俺が山賊を追っ払わなかったらその店の奴らが怪我してたかもしれない」
「すごいね!イワン!やっぱりその体の大きさは伊達じゃないんだ!」
すごい!と誉められたイワンは満更でもない。浅黒い肌で分かりづらいが顔は赤くなっている。
ルイスはキラキラした瞳でイワンを見つめているが、内心は不安で仕方がなかった。この関係がいつか終わると思うと怖かったのだ。泣いてしまう日もあるくらいだった。
「ねえイワン、歳を重ねても僕はずっと君とこうして話をしていたいよ」
「ん?どうしたんだ急に」
「ううん、何でもない。ねえ次はいつ会えるの?」
「その事なんだがなルイス、俺は海賊をやめようと思ってるんだ」
「え……やめる?」
ルイスの心は驚きと悲しみで包まれた。
海賊をやめたら今までのように海に出る回数も減るだろう。いやもしかしたらもう海には出ないのかもしれない。ルイスは一人、ぐるぐる考えていた。どうして急に、なんで、どうして。ルイスは混乱して涙が溢れた。そしてとうとう自分の気持ちを告白した。
「うぅ、イワン、僕……イワンが好き」
「ほ、本当か!?」
一方、泣きながら好き好き言う思い人を前に、イワンは天にも昇る気持ちで言った。
「俺は君を愛してる!」
「……ほんと?」
「ああ!本当だとも!だから海賊をやめて海辺に家を買ったんだ!君がいつでも好きなときに来れるように」
「っ!!」
イワンに抱き締められたルイスは嬉しくて涙が止まらなかった。
「これからはずっと一緒だ」
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