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温もり
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山小屋の前で焚き火をしていると岩場の方でこちらを見つめる者が一人。短い黒い髪にギョロっとした目。気になって手招きしてみると、恐る恐る出てきたのはひょろっとした小柄な少年だった。
焚き火の中にトングを突っ込み、アルミでくるんださつまいもを転がすと、少年は近寄ってきてぐぅと腹を鳴らした。
「お兄ちゃん、それなぁに」
「焼き芋だよ、食べるか?」
「いいの……?」
「いいとも、待ってな、今良い具合のやつを探すから」
トングでどれにしようか選びながら一つ取り出して軍手をした手でアルミを剥く。半分に割ってしっかり中まで火が通っているか確認してから、ふぅふぅと息を吹きかけてから少年に渡した。
湯気が出て旨そうだ。
少年がごくりと唾を飲んだのがわかった。しかし一向に受け取らないため「遠慮してるのか?」と聞くと少年は小さな声で言った。
「食べてもぶたない?」
「ぶつわけないだろう、お前をぶって俺に何の得があるんだ」
わはは!と笑うと少年はおずおずと焼き芋を受け取った。
「あちちっ」
「気を付けてな」
「うん、ありがとう」
ちゃんとお礼の言える良い子じゃないか。それなのにどうして捨てたのやら。
この山には時々子どもを捨てる親が来る。理由は様々だが一番多いのが口減らしだ。
あちっあちっと言いながら芋を頬張る少年に「名前は?」と尋ねる。
「ハルタ」
「そうか、ハルタか。俺はアキラ。ハルタ、君はもっとちゃんと食べた方がいい」
「……でも食べ物は貴重だから、僕なんかが食べちゃいけないんだ」
突然泣き出したハルタは汚れた服の袖で涙を拭うと「焼き芋、ありがとうございました」とお辞儀をして立ち去ろうとする。俺は咄嗟にその手をとって言った。
「どこへ行く?」
「村に戻る……それしかない……」
「俺が食べさせてやる」
「え……?」
「嘘じゃない、見ての通り俺は一人だからハルタさえ良ければ一緒に暮らさないか?」
一度捨てられた子どもが村に戻ってもまた辛い思いをするだけだ。
「でも、僕は……」
「ハルタ、血が繋がってなくても家族になれるんだ」
そう言うとハルタは泣き崩れた。
細い体を抱き締めると弱々しい力で俺の服を掴んだ。
そうして俺とハルタが家族になり十年がたとうとしていた。
あれからハルタは十八になり、体もぐんぐんと成長し俺よりもでかくなった。性格もあんな過去があったというのに穏やかで優しい子に育った。親代わりとしては言うことなしである。これさえなければ……。
「アキラ、好き、大好き……っ」
盛ったハルタに抱き締められる。腰に当たる熱くて硬いものに気が付き俺は恥ずかしさで顔を覆った。どうしてこんなことに……。
「アキラ、セックスしよ」
「っ……」
「嫌?気持ちいいこと嫌い?」
「……好き」
親代わりであり、兄であり、時には友人でもあった少年と体を繋げる仲になってしまった。そこに愛はある。あるのだがどうしても恥ずかしくて素直になれない。
三十にもなる俺を可愛い、好き、愛してると抱き締めるハルタに、今日も俺は幸せを噛み締めるのであった。
焚き火の中にトングを突っ込み、アルミでくるんださつまいもを転がすと、少年は近寄ってきてぐぅと腹を鳴らした。
「お兄ちゃん、それなぁに」
「焼き芋だよ、食べるか?」
「いいの……?」
「いいとも、待ってな、今良い具合のやつを探すから」
トングでどれにしようか選びながら一つ取り出して軍手をした手でアルミを剥く。半分に割ってしっかり中まで火が通っているか確認してから、ふぅふぅと息を吹きかけてから少年に渡した。
湯気が出て旨そうだ。
少年がごくりと唾を飲んだのがわかった。しかし一向に受け取らないため「遠慮してるのか?」と聞くと少年は小さな声で言った。
「食べてもぶたない?」
「ぶつわけないだろう、お前をぶって俺に何の得があるんだ」
わはは!と笑うと少年はおずおずと焼き芋を受け取った。
「あちちっ」
「気を付けてな」
「うん、ありがとう」
ちゃんとお礼の言える良い子じゃないか。それなのにどうして捨てたのやら。
この山には時々子どもを捨てる親が来る。理由は様々だが一番多いのが口減らしだ。
あちっあちっと言いながら芋を頬張る少年に「名前は?」と尋ねる。
「ハルタ」
「そうか、ハルタか。俺はアキラ。ハルタ、君はもっとちゃんと食べた方がいい」
「……でも食べ物は貴重だから、僕なんかが食べちゃいけないんだ」
突然泣き出したハルタは汚れた服の袖で涙を拭うと「焼き芋、ありがとうございました」とお辞儀をして立ち去ろうとする。俺は咄嗟にその手をとって言った。
「どこへ行く?」
「村に戻る……それしかない……」
「俺が食べさせてやる」
「え……?」
「嘘じゃない、見ての通り俺は一人だからハルタさえ良ければ一緒に暮らさないか?」
一度捨てられた子どもが村に戻ってもまた辛い思いをするだけだ。
「でも、僕は……」
「ハルタ、血が繋がってなくても家族になれるんだ」
そう言うとハルタは泣き崩れた。
細い体を抱き締めると弱々しい力で俺の服を掴んだ。
そうして俺とハルタが家族になり十年がたとうとしていた。
あれからハルタは十八になり、体もぐんぐんと成長し俺よりもでかくなった。性格もあんな過去があったというのに穏やかで優しい子に育った。親代わりとしては言うことなしである。これさえなければ……。
「アキラ、好き、大好き……っ」
盛ったハルタに抱き締められる。腰に当たる熱くて硬いものに気が付き俺は恥ずかしさで顔を覆った。どうしてこんなことに……。
「アキラ、セックスしよ」
「っ……」
「嫌?気持ちいいこと嫌い?」
「……好き」
親代わりであり、兄であり、時には友人でもあった少年と体を繋げる仲になってしまった。そこに愛はある。あるのだがどうしても恥ずかしくて素直になれない。
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