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第6章 そして~明日へ
最終話 第6章 完 彼と彼女の始まる明日
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「終わったね・・・」
「ああ、終わった・・・うぐっ!」
八星竜凰輪を解いた瞬間、反動により思わず体がふらついてしまった。地面に倒れそうになるところを辛うじてリアに支えられ、やっとの思いで立っている。
「カズヤ・・・、頑張ったからね」
「リアもな。それに・・・」
俺とリアはこの白い世界にいたもう一人のリアへと目を向ける。
「君は・・・この後、どうするんだ?」
「そうね。もう、特にすることもないだろうし、あなた達をここで見守っているわ」
「そっか・・・」
苦笑交じりに微笑むと彼女はこの場に留まる意思を口にする。それ以外の選択肢が思いつかない俺は多少思うところがあるものの、自分を納得させることにした。
もちろん、そう割りきれない者もいる。
「待って!一緒に行かない、の?」
「無理よ・・・」
リアの言葉に目を伏せて悲しそうにそっと漏らす。彼女だって他に道があるのならそうしたいはずだ。だが、それができないからこの選択を選んだ。
リア・・・、君は何を考えている?
「だったら・・・、わたしと一つになりましょう。“セレナ”と“リア”は一つになれた。あなただって出来るはず」
「なっ!」
その手があったか!確かにそれなら可能ではある。
だが、その選択――それをしてしまうと君は・・・だが、リアが決めたことならばその決断を尊重し、助けるように動くのも俺の務めだ。
「止めておきなさい。一つになれば私自身の体験したことはもちろん、私がこれまで見てきた多くの世界の“リア”の不幸を知ることになる。それだけじゃない!自分が実際に体験したかのように思えるようになるの・・・そうなると、きっとあなたは耐えられない!」
それが、俺の懸念だった。しかし、改めて考えてみるとやはり彼女は“リア”だ。いつも一人背負いこんでしまう。たとえそれが別の自分であっても背負わせようとはしない。不器用で心優しい女性なんだ。
「見て、私の髪・・・」
魔法が解かれ黄金の髪はひどく黒ずんだ色へと変わる。それはまるで・・・
「これ、血で染められたの。私自身の血はもちろん他の・・・大勢の人の・・・血でっ!あいつらに毎日!洗っても綺麗に落ちはしない。ここでは時間の流れが中途半端に止まるから伸びて戻ることもない。これでもほんの一端、もっと酷い記憶はいくらでもある。それを一人で受け止めるなんて・・・、こんなの背負えるわけないよ・・・」
最後に涙腺を決壊させて語られた事実。これはほんの一端に過ぎない、と口にした通り、より悲惨な記憶を思い出したのだろう。表情から血の気が引き、肌が震えている。俺は・・・いや、俺達は・・・
「もういいの」
俺とリアで彼女を抱きしめていた。震える肩を抱き、髪を撫で背中をさすった。血塗られた髪を触られることを一瞬、嫌がったようにも見えたが構わなかった。そんなこと気にもならなかった。少しずつ、ゆっくりとだが落ち着きを取り戻していくのがわかる。
「なあ、リア一人ではなく、俺にも背負わせてくれないか?気休めにしかならないかもしれないが、怖い思いをするのなら今みたいに落ち着くまで一緒にいることはできる。手を握って、抱きしめて、落ち着くまで側にいることはできる。なんなら、夢にまで乗り込んで怖い記憶を叩き斬る!それでどうかな?」
彼女の顔を覗き込むと本心が分かる。俺達と一緒に行きたいと語っている。
「一緒に行きましょう・・・ね?」
「うっうう・・・」
決まったな。リアがこの白の世界の彼女を抱きしめ額と額を合わせると眩い光が辺りを立ち込めた。そこまで見届けたところで、俺はこれまでの激戦の反動により意識を手放してしまうのであった。
☆★☆
あの戦いが終わってから、二週間程が経過した。
俺とリアもヒノシン達の後に続く形で、元いた闘技場の戻ってきたらしい。俺はその後、丸一日程眠っていたそうだ。
あれから、特に誰かに襲撃されるということは起きてはいない。学園生活を過ごしながら時々、ナオヒトさん達と封鎖大陸を探索に出かけていたりする。ちなみに今日の休日も一緒に向かう予定だ。
そうそう、もう一つ大きなニュースがある。昨日、リアの父親、セイイチロウさんと『娘さんを俺に下さい』的な儀式を行った。
『たかだか子供二人に後れはとらん。同時で来い!』と話していたので、最初に俺が戦い八星竜凰闘衣を使って完膚なきまでに圧勝(リアとアリスさんの指示)、その後、ヒノシンが休む間もなく戦ってこれまた圧勝。
アリスさんは『“同時に来い“と言ったんだから休憩なしの連戦でも良いでしょ?』とゴリ押しをした。その後、セイイチロウさんはアリスさんへどこかへ引きずられていってしまった。リアの話だと“お仕置き”ということらしい。
これにて回想終了、そろそろ現実を受け入れよう。
「リア、また俺の布団に潜り込んでいる・・・」
早速、ぶっ飛んだ台詞を口にしているが十八禁なことは何も起きてはいない。これは白の世界の彼女と一つになった影響でもある。
リアが言うには、一人で寝ていると不意に他の世界の自分が体験したつらい過去を夢に見るとのことだ。そういう時に、俺と一緒にいて過ごすと一つずつではあるが、つらい記憶が嬉しい経験により塗りつぶされていくらしい。
俺のすぐ横で眠る彼女の目元には薄らと涙の流れた跡があるが、その話を裏付けるように今は穏やかな表情で可愛らしく眠りについている。
俺自身が彼女に言った通り、実際に夢の中に乗り込んで怖い記憶と戦う術を現在、仲間の精霊達と開発中だ。もう少しだけ辛抱して欲しい。
それにしても俺はそれまで理性を保てるのだろうか。幸せそうなリアの頬をつつきながらそんなことを考えた。
☆★☆
「それで、カズヤ君・・・、本当にこの封鎖大陸に“世界樹”なんて伝説上の存在が本当にある、と言うのかい?」
探索エリアに入るなり、ナオヒトさんが開口一番に話し出した。
「ええ、絶対ではないですが、ここが俺の知る場所なら間違いないですね。普段は結界が張られていて入れませんが、俺の契約精霊“命”のラシルがいれば入れてもらえるはずです」
今日の目標は世界樹に到達することだった。そこも封鎖結界の範囲内だったから恐らくあるだろう。できれば一度、ラシルに故郷へ連れて行ってやりたい、と思っていたところだったので、俺から提案したのだ。
「そういえば兄さん、ヒノモト先輩はどうしたんですか」
「ルカとデートみたいよ。ヒカリちゃん」
あ~、なるほど、っと手を叩き納得する。
「それじゃあ、そろそろ行こうか!リア!」
「ええ!」
俺はリアの手を取り駆け出した。ナオヒトさんとヒカリが文句を言いたげだが気にしなかった。
一つの戦いが終わったかもしれないが、俺達の未来はまだ続く。それに・・・いや今はやめておこう。ただ、一つ言えることは、これから先にどんなことがあろうとも彼女となら乗り越えられる。
つらい時も嬉しい時も共に過ごし今を、そして明日を生きていく。
そう、まだまだ始まったばかりなんだ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これで一度、物語は一つの完結となります。
まだ、登場していないキャラ(ヒロインの残り二人の姉妹)や語られなかったエピソードもありますが、どこかでまた描ければと考えております。
初挑戦で時間移動ものは少しハードでしたので、もう少し経験を積んでから彼らの物語を描いていたいと思います。
読みにくく感じられた方もいらっしゃるかと思いますが、最後までお読みいただいてありがとうございました。
「ああ、終わった・・・うぐっ!」
八星竜凰輪を解いた瞬間、反動により思わず体がふらついてしまった。地面に倒れそうになるところを辛うじてリアに支えられ、やっとの思いで立っている。
「カズヤ・・・、頑張ったからね」
「リアもな。それに・・・」
俺とリアはこの白い世界にいたもう一人のリアへと目を向ける。
「君は・・・この後、どうするんだ?」
「そうね。もう、特にすることもないだろうし、あなた達をここで見守っているわ」
「そっか・・・」
苦笑交じりに微笑むと彼女はこの場に留まる意思を口にする。それ以外の選択肢が思いつかない俺は多少思うところがあるものの、自分を納得させることにした。
もちろん、そう割りきれない者もいる。
「待って!一緒に行かない、の?」
「無理よ・・・」
リアの言葉に目を伏せて悲しそうにそっと漏らす。彼女だって他に道があるのならそうしたいはずだ。だが、それができないからこの選択を選んだ。
リア・・・、君は何を考えている?
「だったら・・・、わたしと一つになりましょう。“セレナ”と“リア”は一つになれた。あなただって出来るはず」
「なっ!」
その手があったか!確かにそれなら可能ではある。
だが、その選択――それをしてしまうと君は・・・だが、リアが決めたことならばその決断を尊重し、助けるように動くのも俺の務めだ。
「止めておきなさい。一つになれば私自身の体験したことはもちろん、私がこれまで見てきた多くの世界の“リア”の不幸を知ることになる。それだけじゃない!自分が実際に体験したかのように思えるようになるの・・・そうなると、きっとあなたは耐えられない!」
それが、俺の懸念だった。しかし、改めて考えてみるとやはり彼女は“リア”だ。いつも一人背負いこんでしまう。たとえそれが別の自分であっても背負わせようとはしない。不器用で心優しい女性なんだ。
「見て、私の髪・・・」
魔法が解かれ黄金の髪はひどく黒ずんだ色へと変わる。それはまるで・・・
「これ、血で染められたの。私自身の血はもちろん他の・・・大勢の人の・・・血でっ!あいつらに毎日!洗っても綺麗に落ちはしない。ここでは時間の流れが中途半端に止まるから伸びて戻ることもない。これでもほんの一端、もっと酷い記憶はいくらでもある。それを一人で受け止めるなんて・・・、こんなの背負えるわけないよ・・・」
最後に涙腺を決壊させて語られた事実。これはほんの一端に過ぎない、と口にした通り、より悲惨な記憶を思い出したのだろう。表情から血の気が引き、肌が震えている。俺は・・・いや、俺達は・・・
「もういいの」
俺とリアで彼女を抱きしめていた。震える肩を抱き、髪を撫で背中をさすった。血塗られた髪を触られることを一瞬、嫌がったようにも見えたが構わなかった。そんなこと気にもならなかった。少しずつ、ゆっくりとだが落ち着きを取り戻していくのがわかる。
「なあ、リア一人ではなく、俺にも背負わせてくれないか?気休めにしかならないかもしれないが、怖い思いをするのなら今みたいに落ち着くまで一緒にいることはできる。手を握って、抱きしめて、落ち着くまで側にいることはできる。なんなら、夢にまで乗り込んで怖い記憶を叩き斬る!それでどうかな?」
彼女の顔を覗き込むと本心が分かる。俺達と一緒に行きたいと語っている。
「一緒に行きましょう・・・ね?」
「うっうう・・・」
決まったな。リアがこの白の世界の彼女を抱きしめ額と額を合わせると眩い光が辺りを立ち込めた。そこまで見届けたところで、俺はこれまでの激戦の反動により意識を手放してしまうのであった。
☆★☆
あの戦いが終わってから、二週間程が経過した。
俺とリアもヒノシン達の後に続く形で、元いた闘技場の戻ってきたらしい。俺はその後、丸一日程眠っていたそうだ。
あれから、特に誰かに襲撃されるということは起きてはいない。学園生活を過ごしながら時々、ナオヒトさん達と封鎖大陸を探索に出かけていたりする。ちなみに今日の休日も一緒に向かう予定だ。
そうそう、もう一つ大きなニュースがある。昨日、リアの父親、セイイチロウさんと『娘さんを俺に下さい』的な儀式を行った。
『たかだか子供二人に後れはとらん。同時で来い!』と話していたので、最初に俺が戦い八星竜凰闘衣を使って完膚なきまでに圧勝(リアとアリスさんの指示)、その後、ヒノシンが休む間もなく戦ってこれまた圧勝。
アリスさんは『“同時に来い“と言ったんだから休憩なしの連戦でも良いでしょ?』とゴリ押しをした。その後、セイイチロウさんはアリスさんへどこかへ引きずられていってしまった。リアの話だと“お仕置き”ということらしい。
これにて回想終了、そろそろ現実を受け入れよう。
「リア、また俺の布団に潜り込んでいる・・・」
早速、ぶっ飛んだ台詞を口にしているが十八禁なことは何も起きてはいない。これは白の世界の彼女と一つになった影響でもある。
リアが言うには、一人で寝ていると不意に他の世界の自分が体験したつらい過去を夢に見るとのことだ。そういう時に、俺と一緒にいて過ごすと一つずつではあるが、つらい記憶が嬉しい経験により塗りつぶされていくらしい。
俺のすぐ横で眠る彼女の目元には薄らと涙の流れた跡があるが、その話を裏付けるように今は穏やかな表情で可愛らしく眠りについている。
俺自身が彼女に言った通り、実際に夢の中に乗り込んで怖い記憶と戦う術を現在、仲間の精霊達と開発中だ。もう少しだけ辛抱して欲しい。
それにしても俺はそれまで理性を保てるのだろうか。幸せそうなリアの頬をつつきながらそんなことを考えた。
☆★☆
「それで、カズヤ君・・・、本当にこの封鎖大陸に“世界樹”なんて伝説上の存在が本当にある、と言うのかい?」
探索エリアに入るなり、ナオヒトさんが開口一番に話し出した。
「ええ、絶対ではないですが、ここが俺の知る場所なら間違いないですね。普段は結界が張られていて入れませんが、俺の契約精霊“命”のラシルがいれば入れてもらえるはずです」
今日の目標は世界樹に到達することだった。そこも封鎖結界の範囲内だったから恐らくあるだろう。できれば一度、ラシルに故郷へ連れて行ってやりたい、と思っていたところだったので、俺から提案したのだ。
「そういえば兄さん、ヒノモト先輩はどうしたんですか」
「ルカとデートみたいよ。ヒカリちゃん」
あ~、なるほど、っと手を叩き納得する。
「それじゃあ、そろそろ行こうか!リア!」
「ええ!」
俺はリアの手を取り駆け出した。ナオヒトさんとヒカリが文句を言いたげだが気にしなかった。
一つの戦いが終わったかもしれないが、俺達の未来はまだ続く。それに・・・いや今はやめておこう。ただ、一つ言えることは、これから先にどんなことがあろうとも彼女となら乗り越えられる。
つらい時も嬉しい時も共に過ごし今を、そして明日を生きていく。
そう、まだまだ始まったばかりなんだ・・・
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これで一度、物語は一つの完結となります。
まだ、登場していないキャラ(ヒロインの残り二人の姉妹)や語られなかったエピソードもありますが、どこかでまた描ければと考えております。
初挑戦で時間移動ものは少しハードでしたので、もう少し経験を積んでから彼らの物語を描いていたいと思います。
読みにくく感じられた方もいらっしゃるかと思いますが、最後までお読みいただいてありがとうございました。
応援ありがとうございます!
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