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第5章 学園騒乱
第36話 それぞれの陰謀と取引
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「クソッ!クソ!クソ!クソッーーーーー!」
「何なんだアイツ!あり得ねぇぞ!あんなの!」
「おい!どうにかなんねえのかよ!」
情報端末に向かい、癇癪を起しながら揉めているのはカズヤ達と勝負することになっている例の三人組だ。
カワムラ、という名の丸刈りの少年はキーボードとマウスを必死に操作し、その様子を髪を染めたピアスの少年とパーマの少年が作業を覗き込んでいる格好だ。
「確か!確か、ここのサイトから入れたはずなんだ。クソッ!何で見つからないんだ!」
丸刈りの少年が必死に探しているのは“あの方”と連絡を取るためのサイト。だが、それは見つかることなく、焦りと絶望感から表情はみるみる内に青ざめていく。
「お前!嘘ついたんじゃねえよな!このままだと俺達が恥を掻くんだぜ!」
「あの“キヤ”が叩きのめされたの見ただろ!コネで装備を整えるだけじゃ足りねえって!」
ピアスの少年とパーマの少年は目を血走らせながら、不満の全てを丸刈りの少年にぶつけ続け、今にも掴みかかろうかという勢いだ。
「うるせえぞ!お前ら!俺にばっかやらせねえでお前らも少しは頭つかえよ!」
「お前の方がうるせえよ!大体お前が喋り過ぎたからこうなったんだ!」
『フフフフ、随分お困りのようだねぇ。』
迷走する彼らに囁く声が、三人の脳裏にだけ届いた。
「おい、どこからだ・・・この声」
「いや、画面から・・・だ」
いつしか情報端末の画面が黒い霧がかかったように変化している。
『力が欲しいかい?ククク』
三人は固唾を飲みながらも全員頷き肯定の意を示すと辺りは暗闇に包まれた。
先程まで、丸刈りの少年の自室だったはずなのに今は上も下も分からないような異空間に浮いている。事態を飲み込めない三人はうろたえ出し恐怖の感情を隠しきれない。どうにかしたくても何もすることは出来ない。ただ、空間に浮くだけしか彼らには許されなかった。
「そんなに怯えなくてもいいじゃないか。ねぇ?」
女の声が聞こえたのに気付き三人が振り向くと、そこには緑の髪をした女が妖艶な笑みを浮かべていた。全てを見通し惑わすかのような眼光、柔らかな肌と唇、そして男を虜にする女としての体つき。その姿が視界に入ると同時に、甘い香りが立ち込め憐れな少年達は女の魅了に心奪われ虜に成り果てる。
「力が欲しいんだろう?なら・・・こっちにおいで・・・フフフ」
「「「はい・・・」」」
「フフフ、役に立ってもらうよ・・・存分に・・・」
翌日、約束の勝負の前日にあたる日、彼らは揃って学園に顔を出すことはなかった。
☆★☆
「カズヤ・・・一体どういう状況なのかな?」
「リアも了承してくれたじゃないか」
一方、裏で陰謀が渦巻いていることなど露知らず、トキノの家ではリアがカズヤに呆れながら状況の説明を求めていた。
今現在の二人の様子は、リアがカズヤを膝枕しながら耳かきを行っている。カズヤは随分気持ちよさそうに目を細め満足げだが、リアの方は満更でもない気分に呆れが混じり合い何とも複雑な心境である。
「これはミウへの報酬なんだ。今朝話しただろ。今日、随分頑張ってくれたし、少し怖い目にも会ったから望みを叶えてやりたくてな」
背景としてはカズヤとミウの間で極秘に行われた取引が元となっている。
ミウがカズヤの“水”の契約精霊として学園での生活を全うできた場合、報酬を用意する約束のことである。
その報酬というのが今の状況だ。カズヤには“雷”の精霊であるコウ、リアにはミウが憑依しカズヤとリアを通して膝枕と耳かきを体感しているのである。
精霊の状態でも互いに触れることは出来るが、人としての細かい感覚まで感じることはできない。傍目からはカズヤとリアがイチャついているように見えてはいるが、実際にはコウはミウに膝枕と耳かきをしてもらっている感覚を体感し、同様に ミウもコウにしているように感じている。
カズヤとリアは意識はあるものの自分達がしている感覚は薄くなっている。
「今度は二人きりじゃないとイヤだからね。バカ」
そんなリアの声が漏れた。
「あの~、ラブラブな所申し訳ないですけど、私も泊めてもらっていいんですか?」
遠慮がちに手を上げながら質問してきたのはナナクサさんだ。申し訳なさげな彼女の様子に気づき、母さんは「気にしないで」と声をかけている。
例の三人組対策でナナクサさんには何か護身用の道具を用意する予定でいたが、それを知った母さんが「落ち着くまで泊って行きなさい」と話したことで今の状況に至る。
ナナクサさんは現在、学園生活を送るために一人暮らしの身、大事を取ってということになる。通常であれば年頃の男がいる家にとなるかもしれないが、この家にはリアと妹のヒカリもいる。我が家のパワーバランスは女性の方が上なので心配不要と母さんは豪語している。情けないぞ我が父よ・・・俺もだけど。
この際だからはっきりさせておくが、ナナクサさんのいる、いないに関わらず俺は定番のラッキースケベなイベントを起こしたことは無い。
幸か不幸かわからないが、クジなんかでは当たりを引きやすい俺もその手の運は全くない。きっと、俺にかかっている状態異常の『呪い』のせいかもしれない。
『特定の女性以外と恋愛関係が築けない』といった効果だったはずだが、他にも隠された副次効果があるような気がしてならない。
愛されているな、俺。
ここだけの話だが、ナナクサさんに道具を作る必要が無くなった分、母さんから「私に何か作って」と最後に言われている。しかも、誕生日プレゼントは別に用意すること、と遠回しにお達しがあった。
気を許せない状況であるにも関わらず、我が家は至って平常運転である。
そうして学園生活の初日を終えたのだった。
「何なんだアイツ!あり得ねぇぞ!あんなの!」
「おい!どうにかなんねえのかよ!」
情報端末に向かい、癇癪を起しながら揉めているのはカズヤ達と勝負することになっている例の三人組だ。
カワムラ、という名の丸刈りの少年はキーボードとマウスを必死に操作し、その様子を髪を染めたピアスの少年とパーマの少年が作業を覗き込んでいる格好だ。
「確か!確か、ここのサイトから入れたはずなんだ。クソッ!何で見つからないんだ!」
丸刈りの少年が必死に探しているのは“あの方”と連絡を取るためのサイト。だが、それは見つかることなく、焦りと絶望感から表情はみるみる内に青ざめていく。
「お前!嘘ついたんじゃねえよな!このままだと俺達が恥を掻くんだぜ!」
「あの“キヤ”が叩きのめされたの見ただろ!コネで装備を整えるだけじゃ足りねえって!」
ピアスの少年とパーマの少年は目を血走らせながら、不満の全てを丸刈りの少年にぶつけ続け、今にも掴みかかろうかという勢いだ。
「うるせえぞ!お前ら!俺にばっかやらせねえでお前らも少しは頭つかえよ!」
「お前の方がうるせえよ!大体お前が喋り過ぎたからこうなったんだ!」
『フフフフ、随分お困りのようだねぇ。』
迷走する彼らに囁く声が、三人の脳裏にだけ届いた。
「おい、どこからだ・・・この声」
「いや、画面から・・・だ」
いつしか情報端末の画面が黒い霧がかかったように変化している。
『力が欲しいかい?ククク』
三人は固唾を飲みながらも全員頷き肯定の意を示すと辺りは暗闇に包まれた。
先程まで、丸刈りの少年の自室だったはずなのに今は上も下も分からないような異空間に浮いている。事態を飲み込めない三人はうろたえ出し恐怖の感情を隠しきれない。どうにかしたくても何もすることは出来ない。ただ、空間に浮くだけしか彼らには許されなかった。
「そんなに怯えなくてもいいじゃないか。ねぇ?」
女の声が聞こえたのに気付き三人が振り向くと、そこには緑の髪をした女が妖艶な笑みを浮かべていた。全てを見通し惑わすかのような眼光、柔らかな肌と唇、そして男を虜にする女としての体つき。その姿が視界に入ると同時に、甘い香りが立ち込め憐れな少年達は女の魅了に心奪われ虜に成り果てる。
「力が欲しいんだろう?なら・・・こっちにおいで・・・フフフ」
「「「はい・・・」」」
「フフフ、役に立ってもらうよ・・・存分に・・・」
翌日、約束の勝負の前日にあたる日、彼らは揃って学園に顔を出すことはなかった。
☆★☆
「カズヤ・・・一体どういう状況なのかな?」
「リアも了承してくれたじゃないか」
一方、裏で陰謀が渦巻いていることなど露知らず、トキノの家ではリアがカズヤに呆れながら状況の説明を求めていた。
今現在の二人の様子は、リアがカズヤを膝枕しながら耳かきを行っている。カズヤは随分気持ちよさそうに目を細め満足げだが、リアの方は満更でもない気分に呆れが混じり合い何とも複雑な心境である。
「これはミウへの報酬なんだ。今朝話しただろ。今日、随分頑張ってくれたし、少し怖い目にも会ったから望みを叶えてやりたくてな」
背景としてはカズヤとミウの間で極秘に行われた取引が元となっている。
ミウがカズヤの“水”の契約精霊として学園での生活を全うできた場合、報酬を用意する約束のことである。
その報酬というのが今の状況だ。カズヤには“雷”の精霊であるコウ、リアにはミウが憑依しカズヤとリアを通して膝枕と耳かきを体感しているのである。
精霊の状態でも互いに触れることは出来るが、人としての細かい感覚まで感じることはできない。傍目からはカズヤとリアがイチャついているように見えてはいるが、実際にはコウはミウに膝枕と耳かきをしてもらっている感覚を体感し、同様に ミウもコウにしているように感じている。
カズヤとリアは意識はあるものの自分達がしている感覚は薄くなっている。
「今度は二人きりじゃないとイヤだからね。バカ」
そんなリアの声が漏れた。
「あの~、ラブラブな所申し訳ないですけど、私も泊めてもらっていいんですか?」
遠慮がちに手を上げながら質問してきたのはナナクサさんだ。申し訳なさげな彼女の様子に気づき、母さんは「気にしないで」と声をかけている。
例の三人組対策でナナクサさんには何か護身用の道具を用意する予定でいたが、それを知った母さんが「落ち着くまで泊って行きなさい」と話したことで今の状況に至る。
ナナクサさんは現在、学園生活を送るために一人暮らしの身、大事を取ってということになる。通常であれば年頃の男がいる家にとなるかもしれないが、この家にはリアと妹のヒカリもいる。我が家のパワーバランスは女性の方が上なので心配不要と母さんは豪語している。情けないぞ我が父よ・・・俺もだけど。
この際だからはっきりさせておくが、ナナクサさんのいる、いないに関わらず俺は定番のラッキースケベなイベントを起こしたことは無い。
幸か不幸かわからないが、クジなんかでは当たりを引きやすい俺もその手の運は全くない。きっと、俺にかかっている状態異常の『呪い』のせいかもしれない。
『特定の女性以外と恋愛関係が築けない』といった効果だったはずだが、他にも隠された副次効果があるような気がしてならない。
愛されているな、俺。
ここだけの話だが、ナナクサさんに道具を作る必要が無くなった分、母さんから「私に何か作って」と最後に言われている。しかも、誕生日プレゼントは別に用意すること、と遠回しにお達しがあった。
気を許せない状況であるにも関わらず、我が家は至って平常運転である。
そうして学園生活の初日を終えたのだった。
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