受け継ぎし想い~彼と彼女の光の剣閃

ときしさ

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第4章 覚醒~受け継ぎし想い

第23話 戦いの火蓋

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想いが通じ合ったのもつかの間、幸せな時が過ぎ去るのは早く、陽は傾き西の空は茜色に染まり始める。初々しい二人の間に会話はなく、過ぎ去る時を惜しむように自然と歩みは遅くなる。歩を進めるたびにお互いの手の甲がかすかに触れ、都度二人は物言いたげにしながらも視線は宙をさまよいうつむき加減になる。そのやり取りが幾度繰り返されたのかを尋ねるのはいささか野暮というものだろう。

「な、何て言うか、その・・・手、繋ごうか?」

仮にも俺は勇者だ。それも彼女だけのだ。ならば、この状況を打破するのも己が務め。緊張から来る震えを押し殺し、その渾身の一撃を打ち放つ。互いに視線が絡み合い出方を伺うが切り出したのは俺の方、後は待つのみだ。

「カズヤ君・・・、顔、赤いよ?」
「夕陽のせいだろ。それで、どうかな?」

話を逸らそうとする問いかけに、お約束の台詞で切り返す。ここまで来ると後には引けない。求める答えは別の言葉だ。

「・・・いいよ。」

その言葉に心の底で拳を握りしめ、幸せを叫び通す。もっとも現実の俺はいたって冷静に振る舞うのだが、考えていることはバレバレなのだろう。彼女の顔にもそう書いている。まあ、この一連のやり取りで緊張がほぐれ、あっさりと手を繋ぐことができた。あれだけ焦らしながらも覚悟が決まれば案外、こんなものなのかもしれない。俺達だけかもしれないが、目的を果たせた以上はどうでもいい。誰が何と言おうが嬉しいのだから。

「でも、エッチなのはダメなんだからね・・・。」
「わかった。手を繋ぐのはいいんだな?」

コクリとしたところを見ると肯定なのだろう。今後のためにも地雷を踏まない程度にどこまで問題ないのか尋ねることにしよう。

「腕を組むのは?」
「時々なら・・・いい、よ。」
「お互い、嬉しい時や悲しい時にそっと抱き寄せるのは?」
「いい・・・、と思う。」
「き・・・きき、キスは?」
「だ、誰も見ていない時なら、大事な時なら・・・、いい、よ。」
「なら、問題ないな。安心した。俺は大丈夫だ。」
「へ?それでいいの?」
「他に何かあるのか?」

それだけできるならば満足だ。彼女が何を考えているかはわからないが、俺は十分だ。最後に何か呟いてそっぽを向いたのが気になるが嬉しそうなので問題ないはずだ。
今の俺、いや俺達は幸せなのだろう。願わくば明日もっと、その次の日は更にもっとそうなりたい。

――が、幸せの時間はここまでのようだ。招かれざる客のお出ましだ。今日の俺は機嫌がいいが、無粋な奴に手心を加えるつもりはない。むしろその逆、邪魔した以上は徹底的に叩きつぶす。徹底的にな!

「リア、今日はここまでみたいだな。」

俺の言葉に無言で合図をし臨戦態勢へと思考を切り替える。
周囲に人がまばらにいるというのに仕掛けてくるつもりなのだろう。忍び寄る悪意は徐々に距離を詰めてくる。二人で負の気配を感じる方向、その何もないはずの空間を一瞥した瞬間に辺りは暗くなり、人どころか何もない荒野に切り替わる。

「結界?」
「そうみたいらしい。それも俺を出し抜いた。こういった対象を隔離する手の結界は相手の方が数段上のようだ・・・な!」

何もない空間を蹴り上げると、二足歩行の蜥蜴の姿をした緑色の何かの顎を捕え宙に浮かせる。軸足をそのままに回転し、遠心力を加えた回し蹴りで明後日の方向に蹴り飛ばす。固い金属がぶつかり合うような音がすると、もう一人の赤い客人をあぶり出すのに成功する。

「もしかして・・・リザードマン?二体もなんて、そんな・・・。」
「少し違う。もっと性質タチが悪い。」

頭上に怪しく煌めく、漆黒の水晶を睨みつけ彼女の視線を向かわせる。未だ状況を掴めぬ彼女に明確な警鐘を鳴らしてくれたのは、契約したばかりのパートナーだ。

リアマスター、早く“精霊闘衣”を!更にもう一段階上を起動させます。』
「えっ、緋凰ヒオウ?“精霊闘衣”は『まだ早い』って話していたのに、その上をするの?」
『いいから早く!殺されますよ!死にたいのですか!?』
「俺が時間を稼ぐ。来い! 月輪げつりん連月れんげつ!」

左手に柄だけの剣、右手に刀を掴み彼女の前を駆け、前面に出る。二匹とも得物は曲刀に円形の楯。過去に対戦した魔物と同じに見えるが、気になる点がいくつかある。出し惜しみはできない。

左右の剣をX字に重ね手前の緑のトカゲに斬りかかる。案の定、楯を構えた。それでいい。楯ごと吹き飛ばす!

「二刀閃光剣・壱の型、“双・新月”」

速さを攻撃に加えた重く鋭い一撃を受け、空気を震わす衝撃音が鳴り響くが、吹き飛ばせない。足を地につけ踏ん張りを利かせたまま、衝撃によりズルズルと押されるも体勢を崩すまでには至らない。赤い方が最後に後ろから支え踏みとどまった。
『その程度か?』と言わんばかりに笑みを漏らし、爬虫類特有の長い舌をチョロチョロと出している。

かの竜魔王を吹き飛ばしたことのある技とは言え、精霊の力を纏わぬ身ではこれが限界。使わない理由は、リアと同じだ。彼もまたやむを得ないとは言え、ミスをした格好となる。

☆★☆

リアマスター、彼はまだ大丈夫です。集中して下さい。“精霊闘衣”、それからその上の初回起動には通常より時間を要します。彼が持ちこたえている内に早く!』
「ええ・・・でも、どうしてカズヤ君は“精霊闘衣”を使わないの?」
『彼の戦力となる契約精霊は全て休眠状態です。唯一、動ける“土”の精霊、クレスは契約したばかり。互いの交流が浅い以上、闘衣の形が不安定で定着していません。使わないのではなく、使えないのです。ほら、装着、始まりますよ。』

「でも、それなら緋凰ヒオウだって・・・。」
『私は別です。格が違いますから。それよりほら、装着、来ましたよ。』

「ちょっ、ちょっと何これぇぇぇぇぇ!」
『それでも予想よりかなりマシです!それにその上に彼から頂いた鎧があります。」
「そんなこと言っても、これ“レオタード”?しかも胸元がパックリ開いて、背中も出ているよ~。」
『我慢なさい。半裸より随分マトモでしょう。成長している証拠です。その分、スカートつけますから、ほら!それに上の段階を起動するのに、闘衣に回す力は極力抑えなければならないの。彼を助けられるのは、あなただけ。いい加減、覚悟を決めなさい!』
翼をビシッと指を指すように向け覚悟を促す緋凰ヒオウ

カズヤが精霊闘衣を纏うことができない――全力を出せない以上、この状況を打破するにはリアの活躍が不可欠だ。緋凰ヒオウの叱咤激励に己が使命に気付かされ意志が固まる。彼女の決意に呼応するように落ち着いた輝きを発する光が彼女を包み込む。光がもたらすのは彼と彼女の想いにより誕生した聖なる鎧。
勇者に勝利をもたらす女神が今ここに降臨しようとしていた。


☆★☆

「防いだ程度でいい気になるなよ爬虫類!まだ俺の読みの範疇だ。」

左の剣を構えると、その場から動かず刃を振り下ろす。

「閃光剣・弐の型、飛剣“三日月”!」

鋭い振りから生み出されるその一撃は三日月状の光の斬撃と形を変え、仇成す者へと飛来――いや、まだ終わらない。

「六連、“重ね三日月”!」

左右の剣を交互に振い、更に五つ、合計六つの斬撃を飛ばし、一点に重ねる。一つとなった瞬間、ドリルのように高速回転。ギュィィィィィィーン!と金属を削り取る轟音ととともに土煙を巻き上げながら二体がかりのその楯を打ち砕く。楯のみだけでは飽き足らず、武器や鎧をも削り取ろうと今も尚、唸りを上げ続けている。
身を守るものはなくなった。重ねるのは飛び交う斬撃・・・・・・だけではない。敵が防御に専念し、動きを止めた。身を守る楯も打ち砕いた。視界も潰した。この機は逃さない。
瞬間、今出せる最速のスピードで接近し斬撃の回転軸に押し込むように左の剣で“刺突”、その衝撃により光の刃は鋭く歪み更なる猛回転を生み出すと情け容赦なく緑と赤を削りに入る。武器も鎧も破壊し固い鱗まで貫かんとする。カズヤを止められる者など、どこにもいない。

「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

主の叫びとともに剣が応え輝くと、エネルギーが一点に集中。高密度に凝縮された力は耐えかねると外へ向けて爆発。緑と赤の獣は受け止めきれずに後方へ吹き飛ばされ、落雷を思わせるような轟音とともに爆発。楯と剣、そして魔物の鎧だった破片がパラパラと降り出す。

「さぁ、正体を見せてもらぞ!」

これだけの猛攻撃を重ねながら、カズヤの瞳は『これからが本番』と物語る。これで勝ったなどとは万に一つも考えていない。

煙の向こうで二体の影がゆらりと起き上がる。

戦いの火蓋は切って落とされた。



























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ストーリー展開が三章以降、駆け足気味になります。お読みいただいている方が一人でもいらっしゃる以上、途中で投げ出さずに完結まで書きあげたいと思います。いつもお読みいただいている方、始めて読まれた方も本当にありがとうございます。
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