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第一歩  初めての友達

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 私はいつも通り、クラスで朝一番に来ていた。家が近いのもあるが、家では読書に集中出来ないので早く行っている。
『今日は、昨日買った本の続きを読もっかな。』
そう思っていると、
「何読もうとしてるの?」
「…!」
「驚かなくてもいいじゃん。それに隣の席なんだし、少しくらい話さない?」
「分かりました。」
「で、その本は?」
「昨日買った小説です。」
「へぇ~読書家だよな。神崎さんって」
「いえ、大した事では…」
「そんなことないよ。周りでちゃんと本読んでるのって神崎さんぐらいだよ。俺もあまり小説とか読まんしな。」
伊吹さんは、よく周りの人を見てるのを、話しながら実感した。そう感じていると、
「将来は小説家になりなよ。」
「え?」
「だって、そんなに本が好きならなったらいいんじゃないか?好きな事が仕事なら、人生ツライことがあっても凄く幸せなことじゃん。」
伊吹さんは、そう言いながら笑った。私は、そんな伊吹さんを見ることができずうつ向いて、
「わ、私には無理ですよ。なんの目標や夢も持たず生きてきたんですから。」
「そうか…なら、これが最初の夢だな。」
「い、いや、勝手に決められても…」
「諦める権利は夢を追いかける人に与えられた特権だ。追いかけない人に諦める権利はない。」
「何です?その言葉?」
「俺の好きな言葉だよ。夢は追いかけてからでも遅くない。そう言いたかったんだ。」
そう言葉を残して、教室を出ていった。私は、読もうと思っていた本を読み始めた。

         九時
「では、答え合わせをします。」
私は、答え合わせをしながら、伊吹さんの言葉が頭から離れなかった。
『私なんかが小説家になれるのだろうか?私には才能なんて無いのに…』
すると隣の席から、
「なぁ、この問題解けた?」
と伊吹さんが小声で聞いてきた。なので私は、
「それは、2番だよ。」
「そっかありがとな。」
伊吹さんは、前に向き直り、授業に集中していた。私も考えていたことを一度忘れ、授業に集中した。
『まぁ、聞かなくても大丈夫だよね。』

         昼休み
 私は昼ご飯を食べ終え、図書室に行った。
『初めて来たけど、意外と人いるんだな。』
そう思いながら、空いてる席に座った。
 私は、本を読みながら、隣りにいた女性を見ていた。チラ見程度なので、気付かれなかった。
『この人、なにか書いてるのかな?作文?』
つい見入っていたので、
「あの~さっきから見ちょるけど、何か用?」
茶髪のショートカットで肌白の女性が聞いてきた。私は、
「すみません。あの、その何書いちょるのかなって」
「あなたには関係ないでしょう。」
「そうですよね…」
私が下を向くと、
「あんた何年?」
「一年の神崎言葉です。」
「私は二年の古木黄泉よ。貴方本は好き?」
「はい」
「私も好きよ。本の世界って色々とあっていいじゃない?時には、人間の汚い部分も見えれば、綺麗な部分も見えてくる。それに、出来ないことも出来たりしててさ」
「そうですね。私もそう思います。」
「私にも、出来るかやってみてたんだ。」
「え?」
「本を書いちょったんだ。」
古木さんは、頭を掻きながら、照れくさそうに言った。私は、そんな古木さんを見て、
「あの、ぜひ読ませてくれませんか?古木さんの小説」
「でも、大した作品じゃないよ。」
「それでも読みたいです。」
「感想と指摘頼むよ。」
そう言って、書いていた原稿用紙を受け取った。

         放課後
 私は、家に急いで帰って、古木さんから受け取った小説を読み始めた。『愛の花』と最初に書かれていた。
 読みながら、どうしてか涙が溢れてきた。この作品が素晴らしいだけなのか、それ以外にもあるのか、分からなかった。
『すごい。こんなにも感情移入したのは初めてだ。それに、言葉だけでないなにかに心を奪われたような感覚は』
この古木さんの書いた小説は、花言葉のとおりに話が進んでいて、改めてその花の意味を知ることのできる作品だ。
『王道のバラではなく、彼岸花を選んでいることで、尚の事ストーリー性が出てきている。でも、私はこの展開に納得できない。』
私は、最後の場面に納得がいかなかった。主人公の愛した人が結核によって、最期を迎える。そして主人公は悲しみ、その後主人公はその人以外を愛することなく最期を誰に看取られることなく迎える。
『こんな最後、私もこの主人公も納得いかないよ。』
そう思いながら、小説をしまった。
 夢中になっていたのか、夜の九時になっていた。私は、風呂に入りに行った。すると、
「何か夢中になれるものでもあったの?」
と母さんから唐突に言われた。なので、
「どうしてそう思うの?」
「何十回も呼んだけど、反応がなかったからね。」
私は、そこまで集中していたのは珍しかったらしい。
母さんは、
「何かに集中するのはいいけど、ちゃんと反応してね。」
そう言って、リビングに行った。
 私はお風呂に入りながら、古木さんの書いた小説について考えていた。
『タイトル通りに話を進めるならあれでいいと思えけど…王道な進め方を外しても書けれると思うんだよな』
ふと私の頭にこんな考えが浮かんだ。
『確か、主人公と恋人の年齢って同じだったよな。なら、年齢を離してみたら、死も共にできるんじゃないか。って私なんかが意見できるわけ無いか…』
その考えを振り払って、お風呂から上がった。

          次の日
 私は、いつもより少し遅く家を出た。伊吹さんと話をしたいと思ったからだ。
『あっ、伊吹さんだ。』
私は、伊吹さんが来たのを見計らって、
「お、お、おはよう、伊吹さん」
「おはよう、神崎さん珍しいね。神崎さんから声を掛けてくるなんて」
「じ、実は!」
私は、声を裏返しながら話した。
「ヘェ~、そう思ったんだね。神崎さん」
「は、はひ!」
「さっきから声裏返ってるよ。」
「私…から声をかけたのは!初めてで…」
「そっか~神崎さんはどうしたいの?」
「え?」
「これは俺の問題じゃない。君が初めて思ったことなんでしょ?なら、君の考えで行動したらいいんじゃないかな。」
「…!」
私は伊吹さんの言葉で、気付かされた。この問題は、伊吹さんには全く関係のないことだ。それを言われるまで気付くことができないなんて、
『大馬鹿だった。』
私は伊吹さんを見て、
「伊吹さん、ありがとうございます。おかげで、決断できました。それに、迷う必要なんかな無かったのに、迷ってしまってたんです。」
「そうか、なら良かった。」
「じゃあ、また教室で」
「うん」
そう言い、私は教室に向かった。
「ーーーー」
「ん?」
伊吹さんがなにか言っていたようだが、何も聴き取れなかったので、
『気のせいかな?』
と思い、何も気にせず歩いていった。

神崎さんが振り向いたのを見計らって、
「いつの間にか、裏声じゃなくなってるよ。」
と聴き取れないぐらいの小さい声で言った。そして、
『声をかけられた~嬉しいな~』
神崎さんの成長がみれたことか、話掛けられたことがか分からなかった。でも、
『神崎さんが少し明るくなっているのは分かったよ。』
そう思っていると、後ろから隣のクラスの片井が、
「はよ~加恵流、なんかいいことでもあったな~」
ニヤニヤしながら言ってきた。
「あったよ。」
「へぇ~、良かったな。」
「何だよ。その反応」
そう話しながら、教室に向かった。

         昼休み
 私は、古木さんの小説を持って図書館に向かった。図書館に着くと、古木さんがいたので、
「小説読みました。」
「そう、どうだった?」
古木さんは、少し緊張しながら聞いてきたので、
「最っ高に良かったです。主人公と恋人の掛け合いやさり気なく呟いた一言一言がすごく胸に刺されました。」
「で?特に好きな一言とかあった?」
「そうですね。『あなた一人だけを愛して死ねて良かった。』と恋人が最期に残した言葉が好きですね。」
古木さんは、口に手を当てて涙目になり、
「ここまで褒められたの…嬉しいな」
と言った。私は、そんな古木さんに申し訳ない気持ちになりながら、
「でも、一つだけ納得できなかったところがあります。」
「どこ?教えて」
躊躇いながら、勇気を振り絞って言った。
「やっぱり、主人公の最期に誰にも看取られることなく終わるなんて、納得がいきません。」
「そっか、でもそしたらどうしたらいいかな?私にはあの最期しか思い付かなくて…」
「う~ん、其処なんですが、主人公と恋人の年齢を離したらどうでしょうか?」
「どうして? 」
「歳を離したら、恋人と主人公も二人一緒に死も共にできる場面が作れると思って…」
私がそう言ったら、古木さんは少し考えてから、
「そうだね。ありがとう、これでもっといい作品にできるよ。」
「それは良かったです。」
「ねぇ」
「はい」
「連絡先教えて」
「は…はい」
そう言い、私と古木さんは携帯を出して、連絡先を交換した。そして、
「今週の日曜にさ、アネモネっていうカフェに行かない?ぶちオススメなんだ。」
「いいですよ。」
そう言ったら、チャイムが鳴った。
「じゃあまた」
「はい」
そう言って、私と古木さんは自分たちの教室に向かった。その途中に、
『そういえば、家族以外と出掛けるのって初めてかも、楽しみ』
と少し浮かれていた。すると、
「随分と嬉しそうだね。」
「わっ!驚きました。伊吹さん」
「そっか、そっか」
「伊吹さん、本当にありがとうございます。」
「俺は、大したことしてないよ。ほら、教室に行こ」
伊吹さんは、頭を掻きながらそう言った。

        日曜日
 今日は、古木さんと出掛ける日だ。私は、自室にある服を出しては直してを繰り返していた。
『どんな服装がいいのかな?』
悩んだ挙げ句、ジーンズと白黒のパーカーを着て、髪を整えてから行った。
 私は、腕時計を見て、
『早く着き過ぎちゃった。』
いつもの癖で、集合時間の一時間前に来てしまった。それに、店もまだ準備中であった。しかし、私より前には、ゆうに二十人はいるだろう行列だった。
『こんな人気店だったなんて、思いもしなかった。』
そう思っていると、
「お待たせ、ていうか早くない?」
「そうですね。でも、古木さんも集合時間より早くないですか?」
「ここ人気だから、早く行って席取ろうと思ってたんだけど…ほとんど同じタイミングだったみたいね。」
そうして、古木さんと合流して、雑談しながら開店時間まで待っていた。
 一時間位話していると、店から二十代のメガネを掛けた茶髪の女性が、
「お待たせしました。どうぞ中へ」
と笑顔で手招いた。
 私と古木さんは、テラス席に座った。そして、
「こちらがメニューになります。お決まりになりましたら、お声掛けください。」
と一礼をして、店員さんが下がった。古木さんはメニュー表を取り、
「どれにする?どれも美味しいよ。」
「ん~悩みますね。」
「わかる。母さんと初めて来た時もそうだったな。」
「へぇ~」
と言い、メニューを一通り目を通した。すると私は、あるメニューに目を引かれた。
『アネモネの紅茶?』
その飲み物はオススメのメニューの中にあったので、
「じゃあ、これにします。」
「おぉ、なかなか冒険者だね~」
と言いながら、古木さんが店員さんを呼んだ。
「アネモネの紅茶と三種類のベリージンジャーエールをください。」
「畏まりました。では、ご注文を繰り返させていただきます。アネモネの紅茶と三種類のベリージンジャーエール以上で宜しかったでしょうか?」
「はい、お願いします。」
「では、少々お待ち下さい。」
店員さんは、一礼をして厨房へ行った。私は、
「そういえば、どうして小説を書こうと思ったんです?」
と質問をした。古木さんは、目を閉じて、
「そうだね。本が好きだから、本と一緒に人生を歩めたら素敵だな~と思ったから、書き始めたんだ。」
「そうなんですね…」
「言葉ちゃんは?何かしたい事とかないの?」
「私は…特に目標も夢も無かったです。」
「無かった?」
「はい」
「今は何かしたいことがあるんだね。」
「はい、ある人が『好きな事が仕事なら、人生ツラくても凄く幸せなことじゃん。』って教えてくれたんです。」
「それでやりたいことって?」
私は、深呼吸をして、
「小説家になりたいです。」
「そっ、ならライバルになるね。」
と古木さんは、嬉しそうに言った。それと同じタイミングで、
「お待たせしました。アネモネの紅茶と三種類のベリージンジャーエールです。ではごゆっくり」
そう言いながら店員さんは、丁寧に置いてから下がっていった。私は、一口アネモネの紅茶を飲んだ。
「すごく美味しいですね。」
「そっか~良かった。アネモネの紅茶って好き嫌いが分かれるんだよ。あっ、勿論私も好きだよ。」
「そうなんですね。でも、アネモネの紅茶って聞いたことないですけど…」
「あぁ、それは…」
「それは、家特製の紅茶だからよ。」
「え?」
私は、後ろから透き通るような声が聞こえたので、振り返ってみた。すると、長身の艷やかな黒髪の女性が立っていた。
「特製の紅茶なんですか?」
とその女性に尋ねた。女性は笑顔で、
「そうですよ。だいぶ苦労しましたけど、最高な味わいにできましたよ。」
「どれ位かかったんですか?」
「四年位かかりました。」
「そんなに!」
「はい」
「どうして、そこまでしされたんですか?」
女性は、顔を赤らめて、
「だって、家の旦那がプロポーズの時にくれた花ですから。」
とモジモジしながら答えた。その姿を見て、
『こういうキリッとした大人が、モジモジして顔を赤らめてるのって…超ギャップ萌えそして可愛すぎる。』
と心の中で思った。女性は、ハッとして、
「ケーキとかも美味しいので、是非とも楽しんでください。では、ごゆっくり」
そう言って下がっていった。古木さんは、
「店長さん、可愛いでしょ?」
「はい、あんなお嫁さんがいたら、旦那さんも幸せでしょうね~」
「若く見えるけど、店長さん46歳だよ。」
「えっ…てっきり28歳くらいかと…」
「わかる。本人から聞いた時もビックリしちゃったよ。」
古木さんは、ウキウキしながら話した。私も、いつの間にかテンションが上がっていた。
 一時間位経過した頃、私と古木さんは、お互いにケーキを注文した。そして、今後の小説についても、
「そうだね。小説を書くからには、自分だけのジャンルを見つけたいよね。」
「ん~、どのジャンルから手をかけましょうかね~」
と幸せな時間を過ごしていた。すると、
「あれ~黄泉じゃん、またくだらない小説を書いてんの?」
と男のあざ笑う声が聞こえた。古木さんは、下を向いて嫌な顔をしていた。男は、
「オマエ、中学の頃から変わらず、叶わない夢を追いかけて、本当にわからず屋だな。お前に才能なんて、これっぽっちもないじゃん。」
古木さんは、何も言い返さなかった。そして男は、
「やめちまえよ。な~?こんなもん捨てちまってさ」
と男は、古木さんの小説を取り、破こうとした。私は、我慢の限界で、
「い、いい加減にしてください!」
「はぁ?」
「その小説は、古木さんが死にものぐるいで書いてる小説なんです。」
「言葉ちゃん…」
「そ、それに、夢を追いかけて何が悪いんですか!」
「はぁ~だからよ。こいつに才能がな~」
「関係ないでしょう!やりもしないで何でもかんでも決めつけて、結局何にもしない貴方のほうがよっぽどちっぽけです!」
「テメェ、言わせておけば!」
と私を叩こうとした。すると、私に届くことはなかった。寸前のところで、伊吹さんが止めてくれてたからだ。
「テメェこそ何してんだよ。俺の大事な友達に」
いつもの伊吹さんとは違い、凄く怒っているのが分かった。そして手を離して、
「二度とこの二人に関わるなよ。次は、口が開けられないくらいボコす!わかったな?」
「ッチ!覚えとけ!」
と男は去っていった。伊吹さんは、いつもの表情に戻り、
「怪我とかしなかった?」
「はい、ありがとうございます。伊吹さん」
「良いよ。それより神崎さん」
「はい」
「あんなに人の為に怒れるんだね。」
「そうですね。少し前の私には、できなかった事ですね。」
「進歩したね。神崎さん」
「伊吹さんのおかげです。」
そう言うと、後ろから、
「加恵流~女の子守って格好良かったね。」
と先程の店長さんが来た。伊吹さんは、
「茶化さないでくれよ。母さん」
と頭を掻きながら言った。私は、キョトンとして、
「えっ親子だったんですか?」
「うん、加恵流の母親の楓です。」
「あ、あ、あのか、加恵流君のクラスメイトの神崎言葉です。」
「ウッフフ、加恵流から聞いてた通り、いやそれ以上に可愛い子ね。」
と言いながら、楓さんは私を抱きしめて、頭を撫で始めた。私は、動揺しながら、
「か、か、か、楓さん」
と呼んだが、
「はぁ~、こんな子がいたら、毎日のように撫でたいな~」
と楓さんは、自分だけの世界に入っていた。私は顔から蒸気を発し始めた。すると、
「母さん、そろそろ厨房へ戻らないと」
「はぁ~仕方ないな~」
と名残惜しそうに、私を離して、
「言葉ちゃん、また撫で撫でさせてね。」
「…!」
と楓さんは残して厨房へ戻った。私は、顔を赤らめたので、顔を覆い隠した。伊吹さんが、
「ゴメンな。あんな親で」
「い、いえちょっと恥ずかしかったですけど、嫌じゃないので」
「それならいいけど、嫌ならキツく言っとくからな。」
と言って、店の中に戻っていった。
 私は、喫茶店から出てすぐに別れた。帰り際に、
「ありがとう、私のために怒ってくれて」
と言って一礼し、そのまま逆方向に帰っていった。私は、今日のことを振り返っていた。
『今日は、濃い一日だったな~』
今日は、人生初を何個も体験をした。友達を作る、友達と出掛ける、友達のために怒るとか一度も経験したことがなかった。それだけでも新鮮だった。今日1番印象深かったのは、伊吹さんが怒った表情だ。あれだけ怖い顔を学校では見たことがなかった。
『やっぱり、普段から優しい人が怒るのが一番怖いんだな~』
と改めて思った。すると、
「神崎さん」
と後ろから、聞き覚えのある声がしたので振り返った。そこには、汗をかいた伊吹さんがいた。
「ど、どうしたんですか、汗びっしょりじゃないですか。」
「神崎さんに渡したいものがあったから。」
「渡したいもの?」
というと伊吹さんは、手に持っていた袋を渡してきた。中身を見ると万年筆と原稿用紙が入っていた。
「これは?」
「小説家に必要なものだろ。頑張れよ」
とガッツポーズをして言った。そして、背を向けて走っていった。私は、
「あの、ありがとうございます。」
と一礼をして、
『誰にも描けない、私だけの世界を書いてみせる。これをくれた伊吹さんのために』
そう思った。
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