狂い咲き

狂い咲き66

　残業をする必要もないただの入力ロボット。



　事務員の求職は一番人気だ。



　クビを切ってもすぐに次がある。



　高い賃金の社員はいらないのだろう。



「お世話になりました」



　すべてがバカバカしい。私は後先考えず席を立つとそのままロッカー室に行った。



　こんなとき、あの男がいてくれたら。



　耳元で「あんな会社辞めて清々したわ！」そう怒鳴りつけたら「そりゃよかったな！！」と、さらに怒鳴り返してくれるだろう。



　彼とは違った好き。



　彼になにもかもを言いつけたら私の思うがままになったかも知れない。



　でも、本当にそれでいいのだろうか。



　私は地下鉄駅構内に入ると無料の求人雑誌を手にした。



　帰り際コンビニでさらに求人雑誌を手にする。



　眺めるほどに溜息しかでてこない。



　どれもこれも大学卒業ばかりなら経験者優遇。



　当たり前に思えていたコンビニに張られた求人も気がつくとない。



　高卒以上であっても大学卒業の履歴書と私の履歴書を横に並べられたら私なんて選考から軽々と落ちる。



　運よく入れた高校は偏差値が一番低い。



　そこの高校試験に合格しなければ私の学歴は中卒になるところだった。



　今さらになってもっと勉強しておけばよかった。



　自業自得。いい気になっていた私が誰になにを言われても無駄であっただろう。



　都合よく彼に甘えたくはない。



　もっと彼を知ってから次に進むべきだ。彼を逃げ道にしてはいけない。



　この年齢で再就職先に右往左往としている



　私の手取りは福利厚生を引かれ十六万円ちょっと。



　もうこれほどの給料なんて望めないかも知れない。ボーナスはなかったが寸志程度はあった。



　私は自宅であるマンションに着くと着替えその足で制服をクリーニングにだす。



　会社を飛び出したように辞めた私は返さずのままの社会保険証は制服と一緒に送ればいい。



　雇用保険の申請はその足で。



　今日づけで自主退社となっているだろうが、雇用保険は直ぐには貰えない。



　私は銀行に行くと記帳をする。



　口座にある残高と預貯金残高を眺めた。



　どれほど切り詰めても半年が限界。



　そのまま区役所に行くと私は国民保険証の手続きをしようとして驚いた。