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狂い咲き61
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思わず頷くばかりだ。
ただ冬場は、あまりに忙しくて、こんな風に「お喋りできないけどね」と店主は笑う。
「またいらしてくださいね」
私が彼をもっと受け入れようとしたら、どんなことが起こるのだろう。
背徳的な愛欲に溺れる。
叫べば叫ぶほどに、私はすべてのしがらみから解放されていった。
男性の優越感を満たすだけの女にだけはなり下がりたくない。
都合のいい女なんてもっと嫌だ。
どんな道も二人よりそって歩く。
デザートをくちにしながら私は思う。今まで深く考えなかったが、ひとは老いていくものだ。
私はあと数年で三十歳になる。
三十歳になるとは四十歳にもなる。
いつまでも若々しい気持ちは必要だが、当たり前の黒髪さえ白髪になる。皴だって増える。
互いに年齢を重ねていくとは老いを重ねていくことだ。
外見にとらわれない彼を見ていると、私が車椅子のお祖母ちゃんになっても彼は、寄り添い続けてくれるかも知れない。
外見に振り回されていたちっぽけな自分がどこか恥ずかしい。
それが若気の至りなのかも知れない。
真夏になると裸にも等しい水着のような格好で歩いていた。
その姿に注意してくれるひともいた。
そのひとに「ババァ!」と平然と言い返していたが、私だってもうおばさんだ。
いつまでも若い気でいられるのは二十代半ばまでだ。
平然と年配のひとに「年増のババァ」とバカにしている若い子を見ていると、嫌でもあなたも、おばさんになるのよと思う。
年齢を重ねるとは、そういうことなのだろう。
同じことを順繰りに思う。
歴史は史実をなぞると言うが、まさに年齢がそうなのかも知れない。
私がそうであったように、今、いい気になっている子に、なにを言っても無駄。
年増のババァは素直に「引っ込んでますよ」と笑うばかりだ。
食事が終わり、彼と数店の店を覗き歩く。
これといって欲しいものはない。
帰り際、なにげに手にしたオルゴールの音色に私は思わず耳を澄ます。
耳馴染みのない曲だが、どこか和む音色に彼がプレゼントしてくれた。
アンティークを思わせるオルゴールを手に私は久々に自宅に帰る。
ただ冬場は、あまりに忙しくて、こんな風に「お喋りできないけどね」と店主は笑う。
「またいらしてくださいね」
私が彼をもっと受け入れようとしたら、どんなことが起こるのだろう。
背徳的な愛欲に溺れる。
叫べば叫ぶほどに、私はすべてのしがらみから解放されていった。
男性の優越感を満たすだけの女にだけはなり下がりたくない。
都合のいい女なんてもっと嫌だ。
どんな道も二人よりそって歩く。
デザートをくちにしながら私は思う。今まで深く考えなかったが、ひとは老いていくものだ。
私はあと数年で三十歳になる。
三十歳になるとは四十歳にもなる。
いつまでも若々しい気持ちは必要だが、当たり前の黒髪さえ白髪になる。皴だって増える。
互いに年齢を重ねていくとは老いを重ねていくことだ。
外見にとらわれない彼を見ていると、私が車椅子のお祖母ちゃんになっても彼は、寄り添い続けてくれるかも知れない。
外見に振り回されていたちっぽけな自分がどこか恥ずかしい。
それが若気の至りなのかも知れない。
真夏になると裸にも等しい水着のような格好で歩いていた。
その姿に注意してくれるひともいた。
そのひとに「ババァ!」と平然と言い返していたが、私だってもうおばさんだ。
いつまでも若い気でいられるのは二十代半ばまでだ。
平然と年配のひとに「年増のババァ」とバカにしている若い子を見ていると、嫌でもあなたも、おばさんになるのよと思う。
年齢を重ねるとは、そういうことなのだろう。
同じことを順繰りに思う。
歴史は史実をなぞると言うが、まさに年齢がそうなのかも知れない。
私がそうであったように、今、いい気になっている子に、なにを言っても無駄。
年増のババァは素直に「引っ込んでますよ」と笑うばかりだ。
食事が終わり、彼と数店の店を覗き歩く。
これといって欲しいものはない。
帰り際、なにげに手にしたオルゴールの音色に私は思わず耳を澄ます。
耳馴染みのない曲だが、どこか和む音色に彼がプレゼントしてくれた。
アンティークを思わせるオルゴールを手に私は久々に自宅に帰る。
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