狂い咲き

necropsy

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狂い咲き59

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 スキー場が普段畑に利用されているとは思わなかった。生花が色とりどりの艶やかさとなって、美しい。私が辺りをきょきょろしていると彼が運転席から下りた。彼が助手席のドアを開けてくれる。


 助手席から下りるとスキー場にあるリフトが遠くに見える。


 爽やかな風が新緑を運んでくれる。


 春風に包まれた風景に思わず目をやった。


 初夏を思わせる陽気が、ここではまだ春なのだと思う。


 彼が歩き出そうとしている。


 私は彼と腕を組んだ。


 季節外れなせいか閉まっている店も多い。


 このまま、まっすぐ歩けばリフト乗り場があるかも知れない。


 銀色にそまったゲレンとまた違った風景が、どこか異国情緒を思わせる佇まいとなって軒を連ねている。


 丸太を積み重ねたような山小屋の前で彼は足を止めた。


 店内に入ると、思ったよりひとがいる。行きかう流れにツーリングを楽しむ複数のグループもあった。


 広い駐車場にはカラフルな大型バイクが何台か止まっていた。


 彼は常連客の一人なのだろう。


 店主が気さくに声をかける。


 案内されるがまま私は彼と向かい合い窓際に座った。


 この風景に風車があれば、私の頭の中のイメージがオランダになる。


 メニューを店主自ら運んでくれる。


 季節外れの今は常連客ばかりなのだろう。


 彼はメニューがもう決まっているのか、メニューを見ることはない。


 店主は私がメニューを考えている間、彼に「女性を連れて来られるのははじめてですね」と話しかけている。彼が照れた笑みを見せた。


 私は店主に勧められるがままを選ぶ。


 男性が常連の店に連れて行くのは、本命の裏返し。自分の世界観があることが多い男性が自らのテリトリーに女性を入れることは少ない。


 私が彼をじっと見ると「本当だよ」とばかりの顔をする。


「ふーん」


 私の意地の悪い笑みに彼は「困ったな」とした笑みをむける。


 思ったよりひとはいるが、店主一人でどうにかなりそうなほどの来客数。


 クチコミで、ここのお店の人気が広がっている。そんな雰囲気がある。


 店主が、そのひとにあわせた観光スポットを説明したりと忙しく動いている。
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