狂い咲き

necropsy

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狂い咲き55

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 私は軽く溜息をつくとバスローブを羽織った。


 目覚めのシャワーと言いたいが、全身にできた傷跡がシャワーの水圧に堪えられそうにない。


 ドアを開けると彼がいない。


 買い物にでも行ったのかも知れない。


 私は浴槽に湯を入れる。


 意味もなく湯がたまっていく浴槽を見ながら私はその場を動けないでいた。


 不安に繋げとめられた両足と不安に足を止める私の背中を押すなにかを感じる。


 浴槽に湯がたまると私は立ち上がった。


 バスローブを脱ぎ、そっと湯船に身体を沈めていく。


 目覚めにしては刺激過ぎる痛みに顔を歪ませながら、ようやく湯船に身体を沈めることができた。


 浮力に任せ。子供のように足をバタバタしているとドアをノックする音がする。


「おかえり」


 組織としての彼の顔を知らないが日常の彼が女に頭が上がらないのが、どこか面白い。


 彼のことだからふんぞり返ったり横柄な態度はないとは思うが、あの男が見たらなんと言うだろうか。


 クスクス笑いながら私はまた、足をバタつかせた。


 身体が温まったところで私は湯船をでると着替えた。


 朝食のいい匂いがする。


 以外と彼はマメなんだなと思う。


 あまり深く考えたことはなかった。


 着替えてキッチンに行くと彼が朝食を用意してくれていた。


 食事が終わったら連れていきたい店があると彼は言う。その店に行った足で「帰ろう」と彼が言った。


 私も帰ることを言い出さなくてはいけないと思っていた。


 名産牛ではないが、グルメで有名なステーキ店があると彼は私に教えてくれた。


 このペンションがある一帯は避暑地にもいいが、スキーを楽しむ行楽地だそうだ。


 昼食を意識してか、あっさりとした朝食。食べたりない感じはするが、彼は私が食べ終わるとコーヒーをさらに注いでくれた。


 コーヒを啜りながら彼がキッチンを片付け歩いている。


 彼はよく動く。


 なにもしなくていいのは楽でいい。


 家事一つ満足にできない私は、自分の部屋の掃除は散らかさないでいるが基本だ。


 休みの日になると掃除機をかけるが、浴室などは水垢だらけ。
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