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狂い咲き45
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彼は困惑した表情をしつつサラダを作ろうと思ったのだろう。最後はレタスを入れてざくっとまぜるとダイニングテーブルの上に皿に盛り並べた。
あと一品。
居直った彼は私を無視してなにかを作ろうとしている。
私は「チャーハンだけでいいよ」と笑った。
思った以上に彼の手料理は美味しい。食べ終わると彼が黙々と皿を洗う。手伝おうとする私に「玲子はなにもしなくていい」そう言うと皿を洗い。キッチンを綺麗に片付けた。
「玲子は黙って、俺の傍にいればいい」
女の仕事だとばかりに家事を押しつける男性は個人的に好きではない。料理ができないのもあるけど。いつも夕食は、会社帰りに立ち寄るスーパーの半額弁当の争奪戦で勝ち取った戦利品とも呼べるお弁当が私のいつもの夕食だ。
学生の頃、自分がそんなことをするなんて夢にも思いもしていなかった。そんなひとをどこか哀れな目で見ていた。でも今では百円売り場でコスメを買ったりインスタントを買う。
あの男と話した車内の会話は一つ。私を大きく成長させていた。
彼が入浴の準備を始めている。
私は彼に言われるがまま脱衣場に行った。ガウンを脱ぎ、バスローブを脱ぐとそこには痛々しい裸体が洗面台の鏡に映しだされていた。
乳白色に変色した湯船から、ほのかな甘い香りと消毒液の匂いが微かに香る。
私は湯おけで湯を汲み取るとゆっくり身体を流す。子供の頃、転んで擦り剥いた傷口の痛みとよく似ている。
私はそっと湯船の中に入った。
入浴剤に入っている消毒液が私の傷口をオキシドールで消毒したような痛みとなって伝わる。
じょじょに痛みを感じなくなると、また、身体を沈める。
彼は私の全身にできた傷跡をどう見るのだろう。
私はようやく傷口が傷まなくなったところで「ふぅ」と軽く息を吐き出す。
足を伸ばせる浴槽は浮遊感があってとても気持ちがいい。
うっかりすると、そのまま浴槽に凭れた身体が滑るように沈んでしまう。
私は身体が温まると、髪と顔を洗う。身体はとても痛くて洗えない。一番汚れるところだけを洗い、また、湯船に入った。
彼が浴室のドアをノックした。
「どう?」
あと一品。
居直った彼は私を無視してなにかを作ろうとしている。
私は「チャーハンだけでいいよ」と笑った。
思った以上に彼の手料理は美味しい。食べ終わると彼が黙々と皿を洗う。手伝おうとする私に「玲子はなにもしなくていい」そう言うと皿を洗い。キッチンを綺麗に片付けた。
「玲子は黙って、俺の傍にいればいい」
女の仕事だとばかりに家事を押しつける男性は個人的に好きではない。料理ができないのもあるけど。いつも夕食は、会社帰りに立ち寄るスーパーの半額弁当の争奪戦で勝ち取った戦利品とも呼べるお弁当が私のいつもの夕食だ。
学生の頃、自分がそんなことをするなんて夢にも思いもしていなかった。そんなひとをどこか哀れな目で見ていた。でも今では百円売り場でコスメを買ったりインスタントを買う。
あの男と話した車内の会話は一つ。私を大きく成長させていた。
彼が入浴の準備を始めている。
私は彼に言われるがまま脱衣場に行った。ガウンを脱ぎ、バスローブを脱ぐとそこには痛々しい裸体が洗面台の鏡に映しだされていた。
乳白色に変色した湯船から、ほのかな甘い香りと消毒液の匂いが微かに香る。
私は湯おけで湯を汲み取るとゆっくり身体を流す。子供の頃、転んで擦り剥いた傷口の痛みとよく似ている。
私はそっと湯船の中に入った。
入浴剤に入っている消毒液が私の傷口をオキシドールで消毒したような痛みとなって伝わる。
じょじょに痛みを感じなくなると、また、身体を沈める。
彼は私の全身にできた傷跡をどう見るのだろう。
私はようやく傷口が傷まなくなったところで「ふぅ」と軽く息を吐き出す。
足を伸ばせる浴槽は浮遊感があってとても気持ちがいい。
うっかりすると、そのまま浴槽に凭れた身体が滑るように沈んでしまう。
私は身体が温まると、髪と顔を洗う。身体はとても痛くて洗えない。一番汚れるところだけを洗い、また、湯船に入った。
彼が浴室のドアをノックした。
「どう?」
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