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狂い咲き22
しおりを挟む「俺の言ったことだけは忘れるなよ。あるがまま。自分に嘘だけは絶対につくな。ま、この世界で生きている以上、どんな綺麗ごとを言っても嘘にしか感じられないだろうがな」
争いのない日々は穏やかだ。裏を返せば陰湿で、生まれ持った家柄や性別に縛られて、とても窮屈だと感じる。
しがらみのない、桃源郷な世界などない。
私は大きく深呼吸をした。
男のお陰で、心の整理はついた。
もう彼は、隠していた素顔をこれから隠すことはしないだろう。
助手席の男の声が聞こえる。
私は、もう一度、大きく息を吸い込み、吐き出した。
ワゴン車がペンションに着こうとしている。
「俺の言ったことだけは、絶対に忘れるなよ」と言うと、助手席に乗っていた男がワゴン車から降りた。
「行くぜ」
ワゴン車のドアが開かれると、男は、私を肩に担ぎ、歩き出していく。
今だけの気持ちを言えば、自らの足で歩いていけそうだ。
でも、されるがままでいいのだろう。
男がどこに向かおうとしているのか知っている。
私を三日間閉じ込め、苦しめ続けた室内に設置されている鉄格子の中だ。
私は思わず目を閉じた。
やはり、ペンション内に入ると、昨日の出来事のように、あの三日間を思い出してしまう。
男は鉄格子の中にあるマットレスに私を静かに横たわらせると、私はそっと目を開けた。
鉄格子の中にある、リクライニングチェアに彼が腰掛けているのが見えた。
彼が私に歩みよって来る。
マットレスに横たわった私の顔を覗き込む彼の眼差しは、出会った頃の優しい瞳のままだ。彼を見つめ返す私の瞳に懐かしさと忌々しい思いがある。
私の顔を見ると彼の表情が一瞬にして、一年前の彼以上に、鋭い、それこそ血も凍るような目で男を睨みつけた。
「殴らないで」
私は慌てて声を荒げた。
彼は私の口元にできた傷に目を一瞬にして変えたのがわかる。
今にも男に殴りかからんばかりの彼を制することができるだろうか。
「お願い、殴らないであげて」
「玲子」
立ち上がった彼は私の言葉に動きを止めた。
「いいんだぜ、俺は別に殴られても」
彼の凄まじい気迫とも言える狂気を前にしても男は平然としている。
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