狂い咲き

necropsy

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狂い咲き17

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「なに黙り込んでいるんだよ。もう一つ教えてやるよ。お前の被害妄想すべてが終わった後、お前を目の敵にしていた上司は、リストラされ、備品を隠していた連中は部署変えどころか、左遷もいいところだ。どこまで、お前にそうしてやるのかね。犯した挙句、弄ばれただけなのにな。なにを言っても、その被害妄想は直らないだろうがな」


「なにが、被害妄想よ!」


「お前は、被害者じゃなきゃ、気がすまないんだろう。こんなバカ女のなにがいいのかね」


「私は彼を絶対許さない」


「俺も許せとは言っていない。なんど言わせたらわかる」


「いい加減、その汚らしい手を離して!」


 新しい彼とのセックスは、確かに物足りない。


 恥ずかしいことをされて、嬉しいわけではない。だけど、新しい彼にしか見せられない淫らな姿でときに激しく責めても欲しい。


 男が話したとおり、新しい彼を悦ばせたかった。でも現実は売女呼ばわりされた。本当に悲しかった。男性遍歴を詰問される。


 淫乱と言われ、しばらく新しい彼は、私を遠ざけていた。


 このまま自然消滅になるのかと思ったら、いきなり連絡をしてきて、会うなり身体を求めてきた。


 そのときは、あまりの身勝手さに腹立たしい思いもあったが、別れたくない思いが、私を頷かせてしまった。


 それ以来、私は都合のいい女。




 甘く、ときに激しいセックスが彼にはあった。


 本当にすべてが満たされていた。


 思い出すほどに涙がでてくる。


 あの出来事がなければ、彼と別れるなんて、とても考えられないほどに、私は幸せに満ちていた。


「なに、白々しく泣いているんだよ。見境のない女が! 泣いて許されると思い込んでいる女ほど、腹立たしいことはないね」


 男の怒鳴り声が車内に響き渡る。


 私は泣いて許して貰おうなんて、思っていない。


 彼を思い出せば、思い出すほどに、胸が張り裂けそうなほどに苦しい。


 だからと言って、彼がしたことを許す気にはなれない。


 でも、彼を思い出すほどに、彼が好きで、堪らなく愛おしかった。できることなら、もう一度、あの逞しい腕に抱かれたいとさえ思う。
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