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弐
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――己の血を引き継いだ息子たちが鳥居の影から除いているとも知らず、尾神綴は抱き寄せた躰を、更に押し開いた。
泣きじゃくる玉藻の頬を掴み、口吸いする。舌を探り当て、激しく吸った。綴が口内を激しく嬲ることに、くぐもった声を上げながら、耳をぴくぴく震わせた。
膝を掴んで大きく開かせると、尻尾が飛び出てくる。白銀の毛に覆われた耳と尻尾が、彼が人ではないと示していた。
彼は狐であった。尾神家は古より、狐を氏神としてきたのだった。
――初代尾神家の当主には、母の違う妹がいた。その妹は、当主の父が、狐と交わったことにより生まれたと伝えられている。珠の様な美貌の妹であったという。
そこで禁忌が起きた。母の違う兄妹は魅かれあい、愛し合う。そしてまた、子を成した。
二代にわたり、あやかしと交わった父と息子であるが、時の権力者に目をつけられ、母子もろとも献上せよと命じられたのだ。
父と息子は、己の妻と子を守るため、生き神として、三人を奉ったのだ。
今よりも、神の存在は人々の救いであった時代だ。生き神といえど、流石に手は出せない。
そしてそのまま、息子が神主となり、『尾神』と名乗ったのだ。
玉藻は、狐のその末裔である。ただ、生まれつき妖狐というべき能力を備えていたのか、老いることなく、もう100年程の寿命を得ている。女狐ではなかったことも、あったのかもしれない。
綴が玉藻と邂逅したのは、二十の頃であった。
その日、母に『蔵の中の狐を退治して欲しい』と頼まれたのだ。
母屋の庭にある蔵の存在を綴も無論知っている。そこが主しか入れないことも。
狐の退治など、母屋の家人にでもさせれば良いのにとあしらっていたが、あまりにも必死な様子に、仕方なく重い腰を上げる。しかし、蔵に入るにしても、父の不在でなければならないという母の言葉に、首を傾げたものだ。
恐らくは母は玉藻の存在を知っているようだった。
愛する夫を誑かす、美貌の妖狐に嫉妬していたのだ。妖狐を息子である綴に殺させようと思っていたのだろう。
父が不在の折に蔵の鉤を手に入れた母は、綴に蔵に行くように急かした。鍬を持たせて…。
鍬を手に蔵の鉤を開け、蔵の中にはいった綴は、中の光景に驚愕した。朱い鳥居が浮かび上がり、立派な社もある。蔵の中に、社があるとは…立ち竦んでいる綴の耳に、ちりんと鈴の音が届く。
『溜(たまり)?』
ちりんと鈴音の鳴り、父の名を呼ぶ存在に綴は顔を上げる。そこにいたのは、見たこともない美しいモノだった。
白銀の髪と金色の双眸を持つ、人の形をしたモノ。赤い袴姿のその出で立ちは犯してはならないもののように感じた。
『溜…では、ないようですね』
どこか安堵した貌で微笑んだモノは、玉藻と名乗った。狐を退治せよと母に言われたのに、そこにいたのは美貌の主だ。
だが、耳と尻尾、そして髪と眼の色が、異形であると告げていた。
狐とは、妖狐のことであったか。しかも、社があるとすれば、この妖狐は氏神が具現化したものでないか。
尾神家の発生を思い起こした綴は、己が手を下しても良い相手ではないと見抜いたのだった。
――玉藻は当主・尾神溜によって蔵の中に軟禁されていたのだった。
生き神でありながら、不遇な玉藻に同情する気持ちは湧いたが、父は好色な人物で、玉藻の美貌をほっておけなかったのだろう。
父が夜な夜な蔵に通っていることは、母屋の奉公人は全て知っているようだった。
時代当主である綴には意図的に隠されていたのだろう。なぜならば、綴が玉藻に魅かれるのを溜が危惧したためであった。
確かにそうだ。出会ってから、ずっと恋い焦がれていた。甘い匂い、甘い躰だ…。欲しくて、欲しくて仕方なかった。
父が亡くなり、ようやく手に入れた。葬儀が行われるその時に、こうして玉藻を抱いている。
いつか、実を滅ぼす。それが分かっていても、この腕に欲しかったのだ。玉藻を深く貫きながら、ふと昔のことが蘇ってきた。
あれは蔵の中で玉藻と邂逅した、数か月後のことであった。度々、父が屋敷に不在の際は、玉藻と逢瀬を重ねていた。
最初は、綴を警戒していた玉藻であったが、菓子や書物を持って行くと笑顔を見せるようになっていた。
綴が蔵に出入りしていることを、恐らく父の告げた者がいたのだろう。
父に呼び出されたのであった。
――玉藻の痩身は、まるで光り輝くようであった。白い額には、薄らと汗を滴らせていた。綴が居座っているのは、本殿の遊び場だ。
綴がこの場にいるのは、決して望んでのことではない。ただ、見せつけられるために、ここに置いておかれているのだ。
「は、あ…」
頭上で括られた玉藻の腕は震えている。白髪交じりの男の顔に跨り、腰を掴まれた状態だった。
肉厚の掌が内股を擦り上げ、更に足を広げさせ、腰を落とされる。尻の孔には、鼈甲と思われる琥珀色の張型が埋め込まれていた。
「う、く…」
肩に胸に、背に、白銀の髪が張り付いている。腰を掴まれたまま、玉を強く吸われ、歯で柔らかく食まれた。
「あ、ん、あ…」
ビクビクと震え、陰茎から液を滴らせる。その液さえも、男の口内に吸われ、搾り取られる。
肉厚の舌で、ねっとりと舐められて、清められた。
力の抜けた玉藻の腰を退かせ、尾神溜は懐を探りだし、細い金棒を取り出した。首を垂れて喘いでいた玉藻はそれが何であるか気づき、身を竦ませる。
「そ、れは…いや…嫌です…。どうか、赦して…」
玉藻の必死な哀願を見てとり、溜は金棒を舌で舐め上げた。
「なんぞ、恥ずかしがることがある。弄られるのは好きであろう?」
その金棒を手にしたまま、空いた手で玉藻の陰茎を掴む。美しいモノは、そこも美しいのか。淡い色に色づいた鈴口を、金棒の先で弄る。
「いや…いやぁ…!」
腰を引こうとするのを腕で抱き寄せられ、溜が玉藻の股間に顔を埋め、鈴口をちろりと舐めた。時より指の腹で鈴口を押し、解すように撫ぜる。
そして、金棒の先を垂直にし、挿した。
「きゃ、ぁあ」
キャンと獣に似た悲鳴を上げ、玉藻は身を強張らせた。躰をのけ反らせる。
その躰を逃がさないようにし、溜は鈴口を嬲った。
鈴口に差し込まれた金棒が、奥に進んでいくごとに、玉藻は頬に涙を伝わせる。金棒が深く差し込まれていった。
「よしよし、痛かったのか」
「うっ、く…」
「仕方なかろう?わしはお前が可愛くてならんのだから」
胡坐をかいた膝の上に玉藻を座らせた溜は、そのまま彼の躰を抱き寄せて、甘やかす。玉藻の髪や目元に口づけて、痛みを逃してやる。今までの手荒さとは正反対の、労わるような優しい手つきだった。
すると、徐々に玉藻から恍惚とした表情が表れた。痛みで潤んだ瞳がとろりと蕩けてゆく。
手首を括っていた紐が解かれると、細い腕が直ぐに首に縋り付いてくる。男の堅い腹に、金棒の刺さった陰茎を擦りつけ乍ら…。
「た、まり…溜…」
腰を揺らしながら強請ってくる玉藻に満足した溜は、白い尻を撫でながら、視線を流した。
溜が流した視線の先には、息子である綴が座っている。
「玉藻は美しかろう、倅よ」
父の言葉に、綴は伏せた目が、吊り上がるのを感じた。ひざの上で握った拳が徐々に強くなるのを感じながらも、父を睨みつけるのが止まらない。
「お前が、わしの目を盗んで玉藻の元へ通っていると知ってな。一度、こやつがほんに可愛らしい姿を見せてやろうと思ってたのだ」
玉藻は、溜に縋り付き、口吸いを強請っている。溜は玉藻の髪を掴み、乱雑に引き倒した。床に倒した玉藻の上半身に伸し掛かり、雄身を朱い唇に押し当てた。
「しかしな、まだやらぬ。わしが死ぬまでは、こいつはわしのものだ」
「うくっ」
玉藻が苦しそうに呻く。口に無理やり咥えさせられたものを拒もうとしても、強引に顔を掴まれて押し込まれてしまう。
「旨いであろう、玉藻」
腰を前後させて、玉藻の口内を犯す。眉根を寄せて苦しげな表情をしていた玉藻であるが、喉まで犯されてしまうことに、徐々に快感を感じ始める。
徐々に表情が緩み、顏が高潮していく。
「うっ…」
父が低く呻く。口の中には、白濁した液が注ぎ込まれたのだろう。口の端から飲み切れなかったものが伝っている。
金の瞳からは、涙が零れ落ちた。男を切なく見つめながら、恍惚の表情を浮かべている。
加虐を与えられているのに、なぜ、そんな目で見つめるのか。
その時感じたのは、紛れもない嫉妬であった。誰にも、何にも執着することのない綴が初めて感じたその感情は、彼を支配していったのだった。
「綴?」
――過去の記憶に囚われていた男は、名を呼ばれ、はっと覚醒する。
「どうしました?」
玉藻が美しい眉を潜め、綴を見上げていた。蹂躙している筈なのに、玉藻の顔が綴を案じていた。
完全に玉藻に囚われている。瞳の色が、とろりとした黄金色に、綴は囚われていた。
凄絶な色気に惑わされ、擡げる感情に身を任せようとしていたが、その時、小気味良い音が耳に届く。
すっと視線を送ると、蔵の入り口から、ふたつの小さな背が駆けていくのが見えた。
綴はちっと舌打ちをする。小さな影が誰だか、気付いたからだ。
「綴」
玉藻は気付かなかったようだ。手を差し伸べて、強請るように綴の首に縋り付く。
ふたりの腹の間に挟まれた玉藻の陰茎は、人とは少々形が違い、毛もない。薄紅に色づくそれから、先走りの液が漏れている。
脚を担ぎ上げた綴は、ぐっぐとさらに腰を進めた。
内壁が奥に誘い込むように煽動し、腰を引こうとするとさらに締め付ける。
「つづり…つづり…」
媚びた声に、綴も玉藻に深く口づける。瞼を薄く開けながら、舌を激しく絡めあう。四肢も絡まってゆく。
止まらなかった。
ようやく手に入れた玉藻に溺れてゆくのを感じながら、しかし、湧き上がる悦びと劣情に成す術がなかった。
泣きじゃくる玉藻の頬を掴み、口吸いする。舌を探り当て、激しく吸った。綴が口内を激しく嬲ることに、くぐもった声を上げながら、耳をぴくぴく震わせた。
膝を掴んで大きく開かせると、尻尾が飛び出てくる。白銀の毛に覆われた耳と尻尾が、彼が人ではないと示していた。
彼は狐であった。尾神家は古より、狐を氏神としてきたのだった。
――初代尾神家の当主には、母の違う妹がいた。その妹は、当主の父が、狐と交わったことにより生まれたと伝えられている。珠の様な美貌の妹であったという。
そこで禁忌が起きた。母の違う兄妹は魅かれあい、愛し合う。そしてまた、子を成した。
二代にわたり、あやかしと交わった父と息子であるが、時の権力者に目をつけられ、母子もろとも献上せよと命じられたのだ。
父と息子は、己の妻と子を守るため、生き神として、三人を奉ったのだ。
今よりも、神の存在は人々の救いであった時代だ。生き神といえど、流石に手は出せない。
そしてそのまま、息子が神主となり、『尾神』と名乗ったのだ。
玉藻は、狐のその末裔である。ただ、生まれつき妖狐というべき能力を備えていたのか、老いることなく、もう100年程の寿命を得ている。女狐ではなかったことも、あったのかもしれない。
綴が玉藻と邂逅したのは、二十の頃であった。
その日、母に『蔵の中の狐を退治して欲しい』と頼まれたのだ。
母屋の庭にある蔵の存在を綴も無論知っている。そこが主しか入れないことも。
狐の退治など、母屋の家人にでもさせれば良いのにとあしらっていたが、あまりにも必死な様子に、仕方なく重い腰を上げる。しかし、蔵に入るにしても、父の不在でなければならないという母の言葉に、首を傾げたものだ。
恐らくは母は玉藻の存在を知っているようだった。
愛する夫を誑かす、美貌の妖狐に嫉妬していたのだ。妖狐を息子である綴に殺させようと思っていたのだろう。
父が不在の折に蔵の鉤を手に入れた母は、綴に蔵に行くように急かした。鍬を持たせて…。
鍬を手に蔵の鉤を開け、蔵の中にはいった綴は、中の光景に驚愕した。朱い鳥居が浮かび上がり、立派な社もある。蔵の中に、社があるとは…立ち竦んでいる綴の耳に、ちりんと鈴の音が届く。
『溜(たまり)?』
ちりんと鈴音の鳴り、父の名を呼ぶ存在に綴は顔を上げる。そこにいたのは、見たこともない美しいモノだった。
白銀の髪と金色の双眸を持つ、人の形をしたモノ。赤い袴姿のその出で立ちは犯してはならないもののように感じた。
『溜…では、ないようですね』
どこか安堵した貌で微笑んだモノは、玉藻と名乗った。狐を退治せよと母に言われたのに、そこにいたのは美貌の主だ。
だが、耳と尻尾、そして髪と眼の色が、異形であると告げていた。
狐とは、妖狐のことであったか。しかも、社があるとすれば、この妖狐は氏神が具現化したものでないか。
尾神家の発生を思い起こした綴は、己が手を下しても良い相手ではないと見抜いたのだった。
――玉藻は当主・尾神溜によって蔵の中に軟禁されていたのだった。
生き神でありながら、不遇な玉藻に同情する気持ちは湧いたが、父は好色な人物で、玉藻の美貌をほっておけなかったのだろう。
父が夜な夜な蔵に通っていることは、母屋の奉公人は全て知っているようだった。
時代当主である綴には意図的に隠されていたのだろう。なぜならば、綴が玉藻に魅かれるのを溜が危惧したためであった。
確かにそうだ。出会ってから、ずっと恋い焦がれていた。甘い匂い、甘い躰だ…。欲しくて、欲しくて仕方なかった。
父が亡くなり、ようやく手に入れた。葬儀が行われるその時に、こうして玉藻を抱いている。
いつか、実を滅ぼす。それが分かっていても、この腕に欲しかったのだ。玉藻を深く貫きながら、ふと昔のことが蘇ってきた。
あれは蔵の中で玉藻と邂逅した、数か月後のことであった。度々、父が屋敷に不在の際は、玉藻と逢瀬を重ねていた。
最初は、綴を警戒していた玉藻であったが、菓子や書物を持って行くと笑顔を見せるようになっていた。
綴が蔵に出入りしていることを、恐らく父の告げた者がいたのだろう。
父に呼び出されたのであった。
――玉藻の痩身は、まるで光り輝くようであった。白い額には、薄らと汗を滴らせていた。綴が居座っているのは、本殿の遊び場だ。
綴がこの場にいるのは、決して望んでのことではない。ただ、見せつけられるために、ここに置いておかれているのだ。
「は、あ…」
頭上で括られた玉藻の腕は震えている。白髪交じりの男の顔に跨り、腰を掴まれた状態だった。
肉厚の掌が内股を擦り上げ、更に足を広げさせ、腰を落とされる。尻の孔には、鼈甲と思われる琥珀色の張型が埋め込まれていた。
「う、く…」
肩に胸に、背に、白銀の髪が張り付いている。腰を掴まれたまま、玉を強く吸われ、歯で柔らかく食まれた。
「あ、ん、あ…」
ビクビクと震え、陰茎から液を滴らせる。その液さえも、男の口内に吸われ、搾り取られる。
肉厚の舌で、ねっとりと舐められて、清められた。
力の抜けた玉藻の腰を退かせ、尾神溜は懐を探りだし、細い金棒を取り出した。首を垂れて喘いでいた玉藻はそれが何であるか気づき、身を竦ませる。
「そ、れは…いや…嫌です…。どうか、赦して…」
玉藻の必死な哀願を見てとり、溜は金棒を舌で舐め上げた。
「なんぞ、恥ずかしがることがある。弄られるのは好きであろう?」
その金棒を手にしたまま、空いた手で玉藻の陰茎を掴む。美しいモノは、そこも美しいのか。淡い色に色づいた鈴口を、金棒の先で弄る。
「いや…いやぁ…!」
腰を引こうとするのを腕で抱き寄せられ、溜が玉藻の股間に顔を埋め、鈴口をちろりと舐めた。時より指の腹で鈴口を押し、解すように撫ぜる。
そして、金棒の先を垂直にし、挿した。
「きゃ、ぁあ」
キャンと獣に似た悲鳴を上げ、玉藻は身を強張らせた。躰をのけ反らせる。
その躰を逃がさないようにし、溜は鈴口を嬲った。
鈴口に差し込まれた金棒が、奥に進んでいくごとに、玉藻は頬に涙を伝わせる。金棒が深く差し込まれていった。
「よしよし、痛かったのか」
「うっ、く…」
「仕方なかろう?わしはお前が可愛くてならんのだから」
胡坐をかいた膝の上に玉藻を座らせた溜は、そのまま彼の躰を抱き寄せて、甘やかす。玉藻の髪や目元に口づけて、痛みを逃してやる。今までの手荒さとは正反対の、労わるような優しい手つきだった。
すると、徐々に玉藻から恍惚とした表情が表れた。痛みで潤んだ瞳がとろりと蕩けてゆく。
手首を括っていた紐が解かれると、細い腕が直ぐに首に縋り付いてくる。男の堅い腹に、金棒の刺さった陰茎を擦りつけ乍ら…。
「た、まり…溜…」
腰を揺らしながら強請ってくる玉藻に満足した溜は、白い尻を撫でながら、視線を流した。
溜が流した視線の先には、息子である綴が座っている。
「玉藻は美しかろう、倅よ」
父の言葉に、綴は伏せた目が、吊り上がるのを感じた。ひざの上で握った拳が徐々に強くなるのを感じながらも、父を睨みつけるのが止まらない。
「お前が、わしの目を盗んで玉藻の元へ通っていると知ってな。一度、こやつがほんに可愛らしい姿を見せてやろうと思ってたのだ」
玉藻は、溜に縋り付き、口吸いを強請っている。溜は玉藻の髪を掴み、乱雑に引き倒した。床に倒した玉藻の上半身に伸し掛かり、雄身を朱い唇に押し当てた。
「しかしな、まだやらぬ。わしが死ぬまでは、こいつはわしのものだ」
「うくっ」
玉藻が苦しそうに呻く。口に無理やり咥えさせられたものを拒もうとしても、強引に顔を掴まれて押し込まれてしまう。
「旨いであろう、玉藻」
腰を前後させて、玉藻の口内を犯す。眉根を寄せて苦しげな表情をしていた玉藻であるが、喉まで犯されてしまうことに、徐々に快感を感じ始める。
徐々に表情が緩み、顏が高潮していく。
「うっ…」
父が低く呻く。口の中には、白濁した液が注ぎ込まれたのだろう。口の端から飲み切れなかったものが伝っている。
金の瞳からは、涙が零れ落ちた。男を切なく見つめながら、恍惚の表情を浮かべている。
加虐を与えられているのに、なぜ、そんな目で見つめるのか。
その時感じたのは、紛れもない嫉妬であった。誰にも、何にも執着することのない綴が初めて感じたその感情は、彼を支配していったのだった。
「綴?」
――過去の記憶に囚われていた男は、名を呼ばれ、はっと覚醒する。
「どうしました?」
玉藻が美しい眉を潜め、綴を見上げていた。蹂躙している筈なのに、玉藻の顔が綴を案じていた。
完全に玉藻に囚われている。瞳の色が、とろりとした黄金色に、綴は囚われていた。
凄絶な色気に惑わされ、擡げる感情に身を任せようとしていたが、その時、小気味良い音が耳に届く。
すっと視線を送ると、蔵の入り口から、ふたつの小さな背が駆けていくのが見えた。
綴はちっと舌打ちをする。小さな影が誰だか、気付いたからだ。
「綴」
玉藻は気付かなかったようだ。手を差し伸べて、強請るように綴の首に縋り付く。
ふたりの腹の間に挟まれた玉藻の陰茎は、人とは少々形が違い、毛もない。薄紅に色づくそれから、先走りの液が漏れている。
脚を担ぎ上げた綴は、ぐっぐとさらに腰を進めた。
内壁が奥に誘い込むように煽動し、腰を引こうとするとさらに締め付ける。
「つづり…つづり…」
媚びた声に、綴も玉藻に深く口づける。瞼を薄く開けながら、舌を激しく絡めあう。四肢も絡まってゆく。
止まらなかった。
ようやく手に入れた玉藻に溺れてゆくのを感じながら、しかし、湧き上がる悦びと劣情に成す術がなかった。
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