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討伐編
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しおりを挟む――ガルシアの傷は負傷した時よりもひどいものになった。流石にグミを提供され傷は瞬く間に消えたが、同行している医者からはしばらく安静を指示された。渋々と、大人しくベッドで横たわっていた。
そのガルシアはテントの外の騒がしさに耳を傾ける。シルバーウルフの討伐が順調に進んでいることに加え、若いホワイトドラゴンとはいえレアで良質な資源が手に入ったのだ。お陰でお祭り騒ぎだ。
結果的には、みなで討伐したことにはなるが、逆鱗を貫いたガルシアに対する人々の視線は敬愛が含まれるようになった。
「ガル、どうしたんだ、笑って」
口元に笑みがこぼれていたせいで、テント内に入ってきたルーシェが不審げに見下ろしていた。
「いや、なんでもない。ついな」
北に来て、こんなに気分がいいのは初めてかもしれない。それに何というか、吹っ切れたのだ。腸で溶岩のように渦巻いている嫉妬心は抑えようがないが、それでも何とか宥める術を覚えようと思った。
ルーシェは不審な顔をしながらも、カップを渡す。そこに入ってるのはホットワインだ。シナモンの匂いがするホットワインをガルシアがゆっくりと口に含んでいると、ベッド端に腰掛けたルーシェが視線を向けた。
「――改めて、ありがとう、ガル。シュリも他のこともたちも…。ガルがいなかったら、きっとあの子たちはホワイトドラゴンの犠牲になっていた」
「俺は当然のことをしただけだ。俺にとっても、シュリは大切な我が子だし、他の子どもたちだって、大切な国民だぞ」
「わかってるよ。うん、わかってる。でも、どうしても言いたかったんだ」
久しぶりに、心が通じ合ったような気分だった。
「だから、ガルシア、ご褒美を上げる」
静かに立ち上がり、外套を脱いだルーシェは白いレースの夜着を纏っていた。
プラチナブロンドの髪と白い肌が相まって、ひどく幻想的だった。
「――これ、意外と着心地いいんだよな。王城のベッドじゃ、お前がすぐに隙間に手を入れようとしてくるから、絶対に着ないけど」
透け感があるため、ルーシェの体の線が透けている。華奢ではないのに、しなやかで、弾力のある肌にごくりとガルシアが唾をのむ。
確かに、こんなに恰好でベッドにいたら、ガルシアは襲い掛かっているだろう。それぐらい、そそるものがあった。
ガルシアが手を伸ばす。ルーシェも手を重ね合わせて、再びベッドの端に腰掛ける。自分よりも大きな掌を自分の頬に寄せて、淡く笑う。
「俺の伴侶がこんなに強くてかっこいいだなんて…。世界中に知らしめてやりたい」
「それは俺の台詞だ。俺の伴侶が、こんなにも美しく、しかも強いなんて…」
ルーシェが討伐隊を見事率いていた。作戦を立てる頭脳も、人望もあり流石は辺境伯の息子だと絶賛されていた。
どちらともなく顔を近づけ、口づける。ちゅっちゅっとリップ音を鳴らして軽い口づけを交わしながらも、気持ちが高ぶってくる。
腕を伸ばして隙間がないほど体を引っ付かせれば、そこから熱が生まれた。
ベッドに横たわったガルシアの上にルーシェも倒れ込んでくる。
「今日は俺がしてあげるから」
股間をやんわり撫でながら、ルーシェが微笑む。それだけで滾ってしまうガルシアの物を握り込み、ルーシェはますます笑みを浮かべた。
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