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討伐編

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 ――ゆっくりと食事を終え、馬車に乗って、さあ出発となったところでガルシアがシュリアーノに問いかけた。
「シュリ、馬に乗りたくはないか?」
「おうまさん!?のりたい…!いいの?とうちゃん」
「もちろん。――ヴァンディア」
「はっ」
 ヴァンディアは此度の同行している武官たちのまとめ役である。SSS級狩人ということもありルーシェとシュリアーノの護衛の責任者なのだ。長年王城に努めており、王弟ジェラルドの友人でもあった。
「シュリを少し頼む。俺は、我が伴侶と話があるゆえ…」
「はっ。シュリアーノ様をお預かりいたします」
 馬車に乗ったガルシアがばたんと扉を閉める。途端に濃厚な雰囲気となる。向かいに座りあうが、ガルシアの体躯をもってしても膝がくっつきあうことはなかった。
 まもなく、馬車が走りだす。ルーシェは窓のカーテンを開き、外の様子をうかがうと、シュリアーノがヴァンディアの馬に乗せられているところだった。白い頬が興奮気味に桃色に染まり、とても愛らしい。
「それで、なんで、ここにいるんだ?」
 ルーシェはガルシアに向き直る。臣下である狩人たち手前、問い詰めることが憚られたが、ふたりきりならば良いだろう。
「お前たちがいない夜はどうにも寂しくて…仕事を前倒しして、1か月の休みをもぎ取ってきた」
「それは…」
 ガルシアが次期皇帝として、日々勤しんでいるのは十分にわかっている。だが、付き合わされる文官はたまったものではないだろうか。
「大丈夫だ。いざとなれば、父上もいるのだから」
「それはそうだろうけど」
 皇帝陛下も今頃呆気にとられているのではないか。
「いいんだ。父上だってたまに、同じことをしてるんだから。父上の仕事を担っていたせいで休みを取れなかったのは事実だ。
 ――それより、ルー。この馬車の乗り心地はどうだった?」
「え、ああ。最高だよ。揺れも少ないし、クッションも厚くて座り心地が良いし」
 別の話題をいきなり振られ、ルーシェは戸惑いながらも返す。
「そうか。それは良かった」
 眩しい笑顔を見せるガルシアであったが、その手が伸び、自分の手首を捕らえたところで、はっとルーシェは気づいた。
 紫紺の双眸が欲の色に染まっている。
「ルー、おいで」
 いくら上等な馬車と言っても揺れはある。立ち上がるのさえ危ないのだが、ガルシアはかまわずルーシェの手を引き自分の膝に乗せた。
「シュリもいないし、ふたりの時間を楽しもうか?」
 耳に低く囁かれる声に、ぴくりとルーシェは震える。ガルシアの大きな手が、ルーシェの下肢に向かいやんわりと撫でる。
 不埒な手はボトムズの中に忍び込み、茎を掌でさすり上げる。
「んん…!ガル、だめ…。クロエとキロエに気づかれる…!」
 この馬車の御者を担ってくれているのはハンナ姉妹だった。ガルシアとルーシェと同世代であるふたりに気づかれてしまう。
 かぷりと形の良い耳を噛んだガルシアは、深く口づけた。
「俺の前で、シュリ以外の名前を出すなんて…よっぽど、お仕置きされたいんだな」
 低いくせにとろりと甘い声にルーシェも気分が高められる。
 結婚して以降、どうも閨はガルシアが優勢だ。もともとは、皇帝陛下の息子であるガルシアが、旅の途中で胤を撒き散らさないため、相棒を兼ねてルーシェが選ばれたのだ。そこから二人で旅をしている間に、自然とそういう仲になったが、最初の頃はルーシェの方がリードしていた気がする。
 疲れていると言ったら配慮はしてくれるものの、王城の生活では未だに二日もおかず抱かれている。
 肉厚な舌でねっとりと上顎をなめられて、ルーシェの力が抜けた。
 シャツにもガルシアの手が及び、裾からわき腹が弄られ、臍も弄られる。ルーシェの息遣いが徐々に荒くなり、右手と左手で一気に快感の泉を探られる。
「いつもみたいに舐めてやれなくて済まない」
「ん…くっ」
 ガルシアの指が強引にルーシェの口の中に差し込まれる。舌を指先で掴まれてしまうと、自然と唾液が溢れてしまう。
 唾液が口からあふれてしまうほど指で蹂躙され、ルーシャは息苦しさに涙があふれてしまった。
「本当はいつもみたいにやめて解してやりたいが、今日はお前の唾液で解そう」
 指先にルーシェの唾液を纏わせたガルシアは尻の間合いを探る。ボトムズの中に忍び込んでくる太い指によって、孔が割り開かれた。
「んん、あ!」
 久しぶりに割かれると、どうしても痛みが走ってしまう。中指を第一関節まで差し入れられ、抜き差しされるとたまらずにルーシェも目の前の逞しい肩に縋り付く。
 ボトムズと下着がはぎとられ、向かい合わせの状態で深く犯された。
「あん、あ、あ…」
 ガルシアの腰にまたがったまま揺さぶられ、紅潮した顔を見られたくなくて、右手の甲で顔を隠すが、すぐにはぎとられる。
「ルーだめだ。隠してしまったら。お前の顔が見たい」
 取られた掌に口づけを落とされ、ルーシェは目元を歪める。熱くてもう、体が蕩けて仕方ないのに、ガルシアは隠すのさえ許してくれないのだ。
「ルー、ルーシェ。俺の最愛の伴侶」
 ガルシアに愛されて、身も心もぐずぐずに溶かされて…。自分はこのためだけに生まれてきたのではないかと思わされる。ガルシアのためだけに生かされているのではないかと…。
 それが今のルーシェを苦しめているとは、ガルシアは思わないだろう。胸に迫る思いを抑え込み、ただルーシェは揺さぶられていた。

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