16 / 31
討伐編
3
しおりを挟む
――王城を出て8日後、そろそろ北の大地が近くなってきた。今の季節は晩夏だ。朝夕は涼しくなり、秋の花が水辺などに咲き誇っていた。
「ルーシェ様。シュリアーノ様。そろそろ休憩しましょうか?」
馬車の外から声を掛けられ、ルーシェは返事を返す。早朝に宿を出て、日も高くなっている。
3歳のシュリアーノを伴った旅ということもあり、進行はゆっくりだ。お忍びということもあり馬車の外見は質素だが、中はかなり上等なつくりと言っていい。
「かあちゃん、お魚がいるよ」
川の中の輝きを見て、シュリアーノが指をさす。
「あ、本当だ。じゃあ、ここでピクニックでもするか」
「はっ、では用意を」
「俺がするよ。みんなは馬を休ませてやってくれ」
「ありがとうございます」
王都からついてきてくれたのは、SSS級狩人ヴァンディア・グランダーと、S級狩人のクロエ・ハンナとキロエ・ハンナ姉妹、A級狩人のケーシー・ミケルセンといずれも王城に努める武官としては精鋭だ。いずれも北の大地に興味を持ってくれた狩人たちで、北の魔獣討伐にも参加予定だった。ルーシェが王城に住んでいる間、ひそかに交友を深めてきたのだ。
狩人たちが自分たちの馬をそれぞれ休ませている間、ルーシェも用意をしていく。
見通しの良い場所なので見張りは立てず、大きな布を引いた上に、バゲットやハム、チーズ、オリーブ漬けの便の入った籠を置き、各々が挟んで食べている。
湯も沸かし、珈琲も配られた。
「かあちゃん、おいしいね」
「おいしいね。――やっぱりこういうのは、王城じゃできないから、いいよなあ」
王城では好き嫌いをすることの多いシュリアーノも、旅に出るとよく食べている。苦手な肉も狩人たちと一緒に食事をすることで少しずつ食べる量が増え、食べ物だけでなく各々の街の特産品にも興味を持っている。
「かあちゃん、これ何?」
「自分で触ってごらん」
北の大地に辿り着く間、こういった自由があるのが何よりもうれしい。実際に見て触れて、シュリアーノにいろんなことを教えてやれる。
ガルシアの伴侶になることは納得したものの、王城での暮らしはやはりルーシェには窮屈だった。
ヴァンディアとキロエの会話が聞こえてくる。
「はやり南のサラマンダーははやり最強では?」
「西のワイバーン後に出てきた千年樹もなかなかではありせんか?」
みな王城に努める前は、狩人として旅をしていた経験もあり、話題ははやり魔獣のことになる。
クロエも興味深げにきいてくる。
「ルーシェ様は、どんな魔獣を駆ったことがおありですか?」
まだ19歳で、一番年の若いケーシーが訪ねてくる。ケーシーは北の大地に来るのが初めてということもあり、とても楽しみにしているのだ。
「そうだな~。俺は極東の島の魔獣は小さいけど独特で面白かったなあ。『ヨウカイ』っていう面白い生き物もいたなあ」
あれは、20歳のなったばかりの頃だった。極東の島々は独自の文化で、魔獣も独特なのだ。通称『ヨウカイ』と呼ばれる魔獣が厄介で、二人で悪戦苦闘品がら旅をしていた。
「シュリもいきたい!」
「ああ、もう少し大きくなったらな」
今回の北の帰省で、シュリアーノを狩人としてデビューさせるつもりだった。シュリアーノが狩人として生きていくかはわからないが、自由に世界を見て欲しいという親心があるからだ。残念ながら、もう一人の親であるガルシアは、シュリアーノが少しでも危ないことをしようとするのをとめる。この前など、ルーシェの見守る中で木登りをさせていたのだが、執務室からガルシアがすっ飛んできたのだ。
「ルーシェ様。シュリアーノ様。そろそろ休憩しましょうか?」
馬車の外から声を掛けられ、ルーシェは返事を返す。早朝に宿を出て、日も高くなっている。
3歳のシュリアーノを伴った旅ということもあり、進行はゆっくりだ。お忍びということもあり馬車の外見は質素だが、中はかなり上等なつくりと言っていい。
「かあちゃん、お魚がいるよ」
川の中の輝きを見て、シュリアーノが指をさす。
「あ、本当だ。じゃあ、ここでピクニックでもするか」
「はっ、では用意を」
「俺がするよ。みんなは馬を休ませてやってくれ」
「ありがとうございます」
王都からついてきてくれたのは、SSS級狩人ヴァンディア・グランダーと、S級狩人のクロエ・ハンナとキロエ・ハンナ姉妹、A級狩人のケーシー・ミケルセンといずれも王城に努める武官としては精鋭だ。いずれも北の大地に興味を持ってくれた狩人たちで、北の魔獣討伐にも参加予定だった。ルーシェが王城に住んでいる間、ひそかに交友を深めてきたのだ。
狩人たちが自分たちの馬をそれぞれ休ませている間、ルーシェも用意をしていく。
見通しの良い場所なので見張りは立てず、大きな布を引いた上に、バゲットやハム、チーズ、オリーブ漬けの便の入った籠を置き、各々が挟んで食べている。
湯も沸かし、珈琲も配られた。
「かあちゃん、おいしいね」
「おいしいね。――やっぱりこういうのは、王城じゃできないから、いいよなあ」
王城では好き嫌いをすることの多いシュリアーノも、旅に出るとよく食べている。苦手な肉も狩人たちと一緒に食事をすることで少しずつ食べる量が増え、食べ物だけでなく各々の街の特産品にも興味を持っている。
「かあちゃん、これ何?」
「自分で触ってごらん」
北の大地に辿り着く間、こういった自由があるのが何よりもうれしい。実際に見て触れて、シュリアーノにいろんなことを教えてやれる。
ガルシアの伴侶になることは納得したものの、王城での暮らしはやはりルーシェには窮屈だった。
ヴァンディアとキロエの会話が聞こえてくる。
「はやり南のサラマンダーははやり最強では?」
「西のワイバーン後に出てきた千年樹もなかなかではありせんか?」
みな王城に努める前は、狩人として旅をしていた経験もあり、話題ははやり魔獣のことになる。
クロエも興味深げにきいてくる。
「ルーシェ様は、どんな魔獣を駆ったことがおありですか?」
まだ19歳で、一番年の若いケーシーが訪ねてくる。ケーシーは北の大地に来るのが初めてということもあり、とても楽しみにしているのだ。
「そうだな~。俺は極東の島の魔獣は小さいけど独特で面白かったなあ。『ヨウカイ』っていう面白い生き物もいたなあ」
あれは、20歳のなったばかりの頃だった。極東の島々は独自の文化で、魔獣も独特なのだ。通称『ヨウカイ』と呼ばれる魔獣が厄介で、二人で悪戦苦闘品がら旅をしていた。
「シュリもいきたい!」
「ああ、もう少し大きくなったらな」
今回の北の帰省で、シュリアーノを狩人としてデビューさせるつもりだった。シュリアーノが狩人として生きていくかはわからないが、自由に世界を見て欲しいという親心があるからだ。残念ながら、もう一人の親であるガルシアは、シュリアーノが少しでも危ないことをしようとするのをとめる。この前など、ルーシェの見守る中で木登りをさせていたのだが、執務室からガルシアがすっ飛んできたのだ。
20
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる