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討伐編

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 ――ルーシェとシュリが北の大地に旅立ったその夜、ガルシアは寝室のベッドの前に座り込んでいた。
「ルー…、シュリ…」
 美丈夫が絶望に打ちひしがれていた。その美丈夫が愛する二人は心底、北に帰るのがうれしいようで、
『じゃあな、お土産楽しみにしてろよ!』
『とうちゃん、ばいば~い』
 と未練がましく眺めているガルシアに一瞥すると、さっさと馬車にのってしまった。暫く立ちすくんでいたガルシアは周りの文官たちの憐みの視線を受けていた。
「ベッドが広い…寒い」
 いつもある二つの温もりがない。右にシュリアーノ、左にルーシェを抱いて眠るのがガルシアの何よりの癒しなのだ。
『ガル、お疲れ様。今日も頑張ったな。ほら、早くベッドに上がってこいよ、癒してやるから』
『とうちゃん、ねんねしよ?シュリがなでなでしてあげる』
 ふたりに誘われてベッドに上がると、二つの塊が引っ付いてくる。
 二つのプラチナブロンドの髪に顔を埋めて、それぞれの匂いの違いを堪能して、一日の疲れをとるのに、今になってこんな寂しい思いをすることになろうとは…。
 ベッドから降りたガルシアは床に転がっている馬車のおもちゃを手に、ルーシェのピアスが収められている宝石箱を開ける。
 そこには色とりどりの宝石がついたピアスが収められていたが、奥底にあるのは若い頃ガルシアがルーシェに贈ったピアスが収められている。
「ルー、俺はこんなに寂しいぞ」
 シュリアーノの妊娠がわかった時、ルーシェはガルシアに何も言わず北に戻った。自分が意図的に孕ませたのだがルーシェから相談がなく、他国の戴冠式に出掛けることになってしまった。戴冠式から戻ったガルシアはルーシェに結婚を申し込むつもりでいた。
 あれから3年、シュリアーノを中心とした生活とはなっているが、ガルシアのルーシェへの愛は変わらない。いやますます、増しているというべきか。片時も離れたくない…己の半身であると、お互いに溺れていたと思っていたのに。
 ルーシェはあっさりと北に旅立った。
「こうなったら…」
 ガルシアは何かを決意し、ベッドを抜け出したのだった。

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