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 ――その夜、ふたりはベッドの上にいた。いつも同じベッドで眠っているが、お互い服は纏っていなかった。
 なんたって今夜は初夜なのである。肉体関係など、10代の半ばにはすでに結んでいたが、今日は特別だ。
 新婚であるガルシアとルーシェ、そして新たな居候であるセルドアとオスカーを交えた夕食はにぎやかだった。いきなり居候が増えて、食料は大丈夫なのかと執事のベンに聞いたところ『今年はなんだか、物入りになるような気がしていましてな。肉なども多めに保存してあるのです』とのことであった。持つべきものは優秀な執事だ。
食事後、ガルシアがセルドアに妊娠中の性交は可能かと聞いたところ、
「お前らの下半身事情なんか知るか。北にきて、そうそうそんな相談をするな」
 と言われてしまったが、懇切丁寧に話をしてくれた。
「挿入はまあいいけど、奥まではだめだ。後、中で出すのも。グミがびっくりして、出ていこうとするかもしれないしな」
 ――湯あみを済ませ、ベッドに上がると、お互い待ちきれなくなり寝間着を脱いだ。久しぶりに見る裸体に目を細めたのは、ルーシェだけではなかった。
 考えてみれば、抱き合ったのはもう2か月も前なのだ。互いに飢えているのは当然だった。
 8年も旅をしていれば、当然、傷はある。見知った傷があることになんだか、安堵しているルーシェがいた。
 お互いに顔を寄せ、唇を重ねる。
 いつものように濃厚に、互いの気持ちを伝えあうように、舌を絡めあい、唾液を奪い与えていく。
 唇同士が離れるとその間に糸が引いている。普段は薄く色づいているルーシェの唇が色濃くなっていた。
「愛してる、ルー」
 頬から横髪をかき上げて、ガルシアが切なく見下ろす。
「俺も好き。誰よりも…」
 ガルシアの唇が首筋や肩に落とされ、色づいた乳首も舐める。やわらかく吸い、指の腹で押しつぶすと、すぐに芯を持ち、乳輪もぷっくりとしてくる。その乳輪を唇全体で座りながら、舌で乳首を絡めたり、甘噛みされるとルーシェが後頭部をシーツに擦り付ける。
「んん…」
 唇をかみしめてルーシェが耐えていると、乳首から離れたガルシアの顔が再びキスをしてきた。
 またぬちぬちと舌を絡め合い、ルーシェはまっすぐにガルシアを見上げた。
「ガルの顔、俺好き」
 惚れ惚れするほどいい男なのだ。幼いころからずっと見てきた顔なのに、年とともに男らしさが増してくると、更に愛しくなった。
「顔だけか?」
「髪の硬さも、目の色も、高い鼻も、柔らかい唇も…」
「俺も好きだぞ。髪も目も、鼻も唇も…いつも愛おしい」
「体も好きだ。旅に出て逞しくなるお前を見て、俺がどんな気持ちだったか知らないだろ?」
「それは俺の台詞だ。ずっと抱きたかったのに、お前はなかなか最後まで許してくれなくて…あと1日でも抱くのが遅くなったら、襲っていたかもしれない」
 ガルシアは体をずらし、ルーシェの胸に頭を寄せ、掌でルーシェの腹を撫でた。
「お前が子を孕んだとわかった時、嬉しいと同時に怖くなった。もう、俺だけのルーじゃいられなくなる。まだ形の成さない我が子に嫉妬したんだ」
 まだ胎動を感じるには早い。だが確実に、愛の証は大きくなっている。
「頼むから、この子が生まれても、俺のことは大切にしてくれよ?」
「当然だろ」
 ルーシェの応えに、ガルシアは目元を緩まシュリ。
 さらに体をずらせたガルシアは、ルーシェの腰を微かに浮かシュリシェの下肢に武者ぶりついた。滑らかな内股を唇でなぞりながら、付け根を舌で何度も舐める。
 その間、指先はルーシェの薄い陰毛を柔らかくすいていた。時より付け根を押し、すっと指の腹で茎をなぞる。
 舌も同じように伝い、ゆるやかな快感を呼び起こしていく。
「ガル…俺も、ガルの食べたい」
 その声に、ガルシアがゴクリと息を飲む。そしてベッドに横たわっているルーシェの頭を、胡坐をかいた太ももに乗せる。
 ルーシェは顔を埋める。色の濃い茂った陰毛を梳いてやって根元から先までを舌で伝う。
 先っぽを口に含んで吸うと、ガルシアがくっと息をつめた。
「ルー、俺も」
 溜まらないようにルーシェの頭をベッドに置き、そのまま乗り上げてルーシェの下肢に顔を埋める。垂れてきたガルシアの雄身がぺちりに頬をたたかれるが、そのまま口にして、たっぷりと膨らんでいる陰嚢も指先で触った。
お互いのものを口にして、高めあっていく。
 だがそれは、いつまでも続かなかった。
ガルシアが陰茎だけでなく、珠と会陰、孔まで舐め始めると、たまらず口を離した。
「や…ガル…」
「ルー、そろそろいいか?」
 ルーシェがうなづくと、ガルシアは起き上がり、ルーシェの背に張り付いてきた。
「あ、ぁ、ん…」
孔を指先で広げ、浅い部分を抜き差ししていく。腹に負担をかけないように、ゆっくりとした動きで挑まれていた。
柔らかな肉に包まれたガルシアの雄身は膨らんでいく。久しぶりということもあり、すぐに限界まで膨れ上がったようだ。
孔から抜かれ、物足りなさを感じてると、ガルシアが熱い眦でルーシェの顔を見下ろしていた。
「ルー、目と口を閉じてくれっ」
 切羽詰まった声のガルシアに言われ、慌ててルーシェは目と口を閉じる。次の瞬間、勢いよく顔にガルシアの精液が振りかけられた。
 ルーシェの火照っていた顔に、更に熱い物が飛び散らされる。
「ん、ガルの味」
 唇についた残滓をなめると苦い味がした。だがよく知っている味だ。
 ようやく味わえたガルシアの味に安堵してしまったのか、ルーシェを眠気が襲う。
 うとうととする中、ガルシアが再び孔に入ってくるが、また浅い所で何度も抜き差しされる。だが、疲れてしまったルーシェは、ゆるく心地よい快楽を得ながら、すっと寝入った。
――衝撃は翌日にあった。ルーシェが眠ってしまった後もガルシアの欲望は収まらなかったようで、顔と言わず、髪や胸元、内股、脇、腹にもガルシアの残滓がこびり付いていたのだ。
全身にまとわりついたそれに、ルーシェの顔が引きつる。
「いや、さすがにこれは…」
 絶句する中、隣で眠っていたガルシアが起き上がる。やけにすっきりとした顔が、ルーシェと対照的だ。
「本当なら、三日三晩、励みたかったんだが、さすがに妊娠中の体にそんな無体をするわけにはいかないしな」
「お、おう…」
 思わず返すが、顔が引きつったままのルーシェにガルシアは体を擦り付けてきた。
「奥まで挿入しなくても満足感が得られることがわかったし。これで毎日できるな」
 ひいいと内心悲鳴を上げる。ガルシアのことは愛しているが、毎日こんな状態になるまでするなんて、度を越してはいないか。
 ルーシェの考えを呼んだガルシアが、顔をのぞき込んでくる。
「何を言ってるんだ。俺はそういう男だ。お前を前にしたら、欲望が止まらない。いまだって、ほら」
「ひっ」
 勃起したものを見せられ、ルーシェは今度こそ悲鳴を上げる。
「――本性を知られたらお前に逃げられると思って、この8年、ずっと隠してきただけだ」
 ルーシェの考えを呼んだガルシアが強く抱き寄せてくる。
「ガル…」
「愛しいルー、もう絶対に逃さない。逃げることも許さない。
――俺が2人いれば、どちらかが常にルーのそばにいてやれるし、愛し合う時も上からも下からも注ぎ込んでやれるのに…」
 とんでもなく好ましい声で、恐ろしい言葉を吐いてくる。
 ガルシアがふたりなどとんでもない。ひとりでも精一杯なのだ。
 太陽が霞むほどの美しい顔で笑う夫に、ルーシェは結婚を早まったのではないかと後悔していた。

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