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 ――ガルシアに連れられ宿に戻ったルーシェは、部屋に入った途端、ガルシアに抱きしめられた。
「…ガル、どうしたんだ?」
 腰まで押し付けられ、ガルシアの欲望が起っているのがわかった。
「もしかして…薬の影響か?」
 ガルシアの腕に手をかけルーシェが見上げると、ガルシアの顔は苦しそうに歪んでいた。
「流石に王家もカサンドラ家に伝わる媚薬までは把握してないらしい…」
 息も荒々しい。腰を抱かれたまま、耳元で熱い息を感じると、ルーシェはそれだけで切なくなる。なんでも願いをかなえてやりたいと思うほどに、ガルシアはルーシェにとって特別な存在なのだ。
「ガル、座れよ。楽にさせてやる」
 元々、このためにルーシェはいる。皇帝の血を引くガルシアを守るため。ガルシア自身がトラブルに巻き込まれないために…。
 手を引いて、ガルシアをベッドに座らせると、ルーシェは足の間に跪く。ボトムズの前を広げ、下穿きも下げると、ぶるんと元気よくガルシアの雄身が飛び出した。
「可哀そうに、しんどかったろ?」
 掌でするりと撫でると、ガルシアは低く呻いた。ルーシェは口を寄せて、赤黒い亀頭を口含んだ。体の成長とともにガルシアの男性器も立派に成長していた。
 媚薬は強烈なものだったらしい。ルーシェが暫く柔らかく愛撫していると、ガルシアがルーシェの頭を掴み、深く沈み込ませる。腰を突き上げて、ルーシェの口内に雄身を擦り付けると、まもなく喉奥に向かって吐き出したのだ。
 喉に叩きつけられる熱い物にルーシェは呻くが、躊躇いなくごくりと飲み込んだ。喉に滑り落ちる液は苦いはずなのにルーシェは嫌悪がなかった。
 どこか幸せそうにガルシアの残滓を飲み込んだルーシェをガルシアは膝に乗せる。ガルシアの体温は高い。媚薬もまだまだ聞いているようで、再び勃起したものがルーシェの尻に擦り付けられている。
 ガルシアとルーシェは互いの着ているものを奪い合うようにベッドの上で絡んだ。互いの下唇を柔らかく噛み、腕と足を絡ませてあう。
(気持ちいい…)
 お互いのものをすり合わせると、すぐに液がどちらとなくあふれだす。
「ルー」
 上気した頬のままガルシアはルーシェの唇に噛みついた。応じるように舌を差し出すと、根元から引き抜かれるのはないかと思うほど激しく貪られる。
 後頭部をシーツに擦り付けていやいやをしても、ガルシアは離してくれない。
 ルーシェが背に爪を立てると、ようやく離してくれた。
「ルー、ルーシェっ」
 首筋に顔を埋めて熱っぽくルーシェの名を呼ぶガルシアに、ルーシェは切なくなる。おそらく媚薬を飲まされ、マリアンの誘惑を受けてかなり辛かっただろう。
 だが王族であるという理性が、ガルシアをとどめた。おいそれと女性と関係を持つことはできない。
 ルーシェは手を伸ばしダークグレーの髪を撫でた。慰めるように、労わるようにやさしくゆっくりと。
 ガルシアはルーシェの首筋に強く吸い付いて痕をつけると、桃色の突起に吸い付いた。
「ん…!」
 男の乳首など弄っても何も楽しくないだろうに、ガルシアはよくルーシェの胸に吸い付いた。女性のような豊満さは当然ない。顔を埋めても硬い胸板なのに、舌で突起を絡めとられ、胸元を揉まれるのだ。
「ガル…!ガルやめっ…」
「どうして?ルーのここは甘いのに」
 ガルシアの唾液でぬれた桃色の突起を指先ではじかれてしまうとそれだけでルーシェの腰は跳ねるのだが、ガルシアに抑え込まれてしまった。
 ルーシェの腹に微かに溜まっていた残滓を掬い、ガルシアは指先を孔に宛がった。
「ひゃうっ」
 いきなり一本目を根元まで入れられ、指の腹で内壁を弄られる。
「柔らかい。昨日もしたせいだな」
 お互いまだ10代だ。2年の間に、徐々にお互いの感じる部分を知り、奪い合うように快感を求めるようになった。
 昨日の夜も、久しぶりの宿ということで安堵が広がり、ガルシアに迫られるまま朝方まで繋がっていた。
 ガルシアの指が入口まで戻り、浅い所を抜出し、二本目を従えて奥まで差し込まれた。
「ん、あ…」
 苦しいが気持ちいい。縦横無尽に擦り上げられ、しこりも押しつぶされると、ルーシェの先から蜜がとろとろとあふれ出す。
 3本目の指が挿入され、ナカから広げられると、たまらなくなった。
「ガル、もう…!」
 ルーシェの泣きに、ガルシアは顔をゆがめる。膝裏を掬い取られ、ガルシアが腰を進めてくる。
「ああ…!」
 徐々に深くなり、頭に靄が掛かる。強すぎる快感は、ルーシェを翻弄する。
(やっぱり、ガルが良い…)
 ガルシアに強直に奥の壁を擦り上げられながら、ルーシェは甘い吐息を漏らす。
 抱かれるのはガルシアだけでいい。他の男に犯されるなど、拷問でしかない。
 ガルシアをここまで想ってしまう理由は分かっている。
 ルーシェはガルシアが好きだった。幼馴染であるというだけでなく、この徐々にたくましくなる少年に憧れ、恋い慕っていた。
 だが、ルーシェはその思いをガルシアに告げる気はなかった。ガルシアを縛るわけにはいかない。そして、ルーシェはガルシアの伴侶には決してなれないのだ。
 王族に今まで同性の伴侶はいない。となれば、ガルシアにはいずれかは相応しい伴侶が選ばれるだろう。
 ルーシェはただの幼馴染だ。しかも、北の辺境伯の一人息子であるため、いずれかは北に戻らなくてはいけない。
 結ばれることのない恋なのだ。
 それを自覚すると胸が痛むが、こうして抱き合っている時だけは、ガルシアに甘えられる。快感を求めるふりをして、ガルシアの心が欲しいのだと奥底で叫ぶことができる。
 自分が女に生まれたら…と思ったことはない。男であったからこそ、ガルシアの相棒として隣に立てるのだから。
 それだけで満足しなくてはいけないのだから…。

「ミラー領、ミラー領」
 ――随分と懐かしい夢を見ていたようだ。馬車の中で眠っていたルーシェは微かな胸の痛みと共に目を覚ました。
「ガル…」
 南のカサンドラ領でルーシェはガルシアへの想いを自覚した。他の男ではだめだった。ガルシアでなくては、ルーシェは気持ちよくなれない。
 あの思いダークグレーの髪と、鋭い紫紺の双眸…肌の色は日焼けのためやや浅黒く、身体は逞しい。あのすべてを、ルーシェは8年間も独占していた。
 ガルシアとの快感に溺れ、淡い恋に一喜一憂した。
 だが今は一人だ。孤独感を感じたところで、いや違うとルーシェは己の腹を撫でる。
 ここにもう一人いる。自分の恋がこんな決着を迎えるとは思わなかったが、何よりも嬉しい形が…。
 馬車を降りたルーシェは北の大地を踏みしめる。
「ん~」
 背伸びをし、やや冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。見上げた空は高く、王宮とは大違いだった。
「さあ、帰ろう」
 父の屋敷に向かって、ルーシェは歩きだした。

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