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 ――もともとふたりは幼馴染だった。ルーシェは北の大地に住んでいるため、会えたとしても年に1回ほどだが、ルーシェが父に連れられて王都に来た時は、ふたりでよく遊んでいた。

 男女の差がわからない幼いころ『ルーちゃん、けっこん、しよ』と舌足らずな声で、告白されたことさえあるのだ。あの頃のガルシアはそれはそれはかわいかった。気の強そうな眦がやや緩んで、ルーシェに花を贈ってくれたのだ。

 今はすっかり逞しくなり、幼馴染として少しさびしさを感じていた。

 距離が近い理由としてはガルシアと旅を始めて以降、肉体関係があるからだろう。

 8年前、15歳で旅に出たころからずっと。しかしそれも、狩人としての修行中にガルシアが変な女に引っかからないようにと性欲処理を担うことが当初の目的だった。

 ルーシェは当時、まだ宰相補佐だったオスカーから手ほどきを受けることになった。旅に出る前の1か月間、男の部屋に連れ込まれ、腸内の洗浄や拡張する方法、処理方法まで指導されてしまった。わずか1歳差とはいえガルシアよりルーシェの方が年上なので、閨は導くべしと、いろいろと教え込まれたのだ。

 昔からルーシェは楽観的であったが、あれは黒歴史と呼べる。最後の一線は免れたものの、口に出せないような行為を度々させられた。

 オスカーとの過去を思い出し苦虫を嚙み潰したような顔をするが、今話題にすべきところはそこじゃない。

「考えてみたら、俺も辺境伯として親父の後を継がなきゃいけないし、お前も国を背負わなくじゃ行けないしさ。

 ――だからさ、そろそろ俺の役割を誰かに担ってもらいたいわけよ」

 童貞ではあるが処女ではない。ルーシェも一応は貴族の男なので、次代につながないといけない。女性を抱いたことはないが、いざとなったら自分が生んでしまうというのも…。

 思考に沈んでいると、ぐっと腰を咲き寄せられ、ルーシェは見上げる。そこには、ガルシアの深い紫紺の双眸があった。

「ルー。酒の席にそんな話題は楽しくない」

 久しぶりに見る深い双眸だった。怒りや苛立ちを感じているとき、ガルシアはこんな目をする。

「そうだな、悪い…」

 ルーシェは素直に誤った。確かに楽しい酒の席にはずなのに、無粋な話をしてしまった。ルーシェの声色に、ガルシアはそのままルーシェのプラチナブロンドに口づけた。瞳の色もミントブルーという色合いで唇は桃色だ。

「そうだ。今日は面白い菓子が手に入ったんだ」

 そういってガルシアが持ってこさせたものは、ルーシェもよく知っているものであった。

「もしかしてグミか?」

「正確にはグミを象った、お菓子らしい」

「よく作られているな。しかも、黄色だけでなく、赤も青まで。しかも金色もある」

 本来なら自生しているものだ。旅の途中何度も世話になった。ただし食べたことがあるのは、黄色、赤色、青色までだった。

「なんか懐かしいな~」

 戦闘中、うっかり赤か青を食べてしまえば、媚薬効果があるせいでその後の体の高ぶりが異常であった。グミの効能がわからなかった若い時など、魔獣が倒れているすぐそばでガルシアと交わることに夢中になってしまったことがある。なので、いつもは黄色しか食べていなかった。

 人工的に作ろうという試みもされてきたが、未だに成功していない。ならばせめて似た菓子を作ってしまおうと職人が丹精込めて作り上げたのだそうだ。

「あ、なんか違う味も入ってるな」

 パクパクと数個口にすると、妙に甘い一つがあった。それは口の中に広がり、一気にのどを滑り落ちていく。

「ルーシェ」

 ルーシェの名を呼びながら底光りする視線を向けたガルシアは、さらに身を寄せてきた。ルーシェの耳にかかる髪をかき上げて、耳たぶにキスをした。そして次いで、唇を奪われる。いつも通りのキスだ。お互いの性欲を処理するための、気分を高ぶらせるためのキスだった。舌を絡めあい、ぬちゃぬちゃと音を鳴らす。

 ルーシェの弱い上顎部分をガルシアの肉厚な舌でねっとりと舐められ、全身が震えてしまう。

 耳に再び舌を這わせられる。ピアスごと絡めとられ、ルーシェの背にぞくりと快感が奔る。

 ――北の出身の者は幼いころにピアスをあけるのだ。それは、はるか昔、北の大地に魔獣が多かったころの伝統だ。戦っている途中で死亡し、喩え顔がつぶされても耳朶のピアスを見れば誰かわかる。ルーシェは両耳にひとつずつだけだが、人によってはいくつもつけることがある。ルーシェがしているものは極小の珠が連なり、先に瞳の色と同じミントブルーの宝石がついているものだった。

 ピアスごとガルシアに齧られ、舌先で弄られる。あまりにもガルシアがそうやってピアスごと舐めるせいで、耳たぶも感じるようになってしまった気がする。

「――あっ」

 その時、いきなり心臓がドクリと逸った。背に痺れが奔り、それが一気に全身に広がる。

 腕の中で跳ねた体を押さえつけ、ガルシアは耳元でささやいた。低い美声は腰に来る。しかも、ルーシェの好みなのだ。

 ガルシアはそれを理解しながら、わざと耳元で囁こうとする。

「ルー、どうした?今日はやけに、高ぶっている」

 孔が疼く。おかしい…酔っているせいだろうかと思うが、酷く孔が濡れているのがわかる。

「あ、んあ…」

 座り心地の良いソファに押し倒されて、首筋を強く吸われる。ピリッと小さな痛みが走る。

「ルーシェの肌はいいな。直ぐに痕がついて、美しく色づく」

 大きな掌が胸を覆い、揉みしだく。硬い掌で押し込まれ、硬い指の腹で乳首をつままれてしまえば、ルーシェはガルシアに縋り付くしかなかった。

 なんせ、肉体関係をもって8年は経つのだ。ルーシェが15歳、ガルシアが14歳で旅に出て、故郷を離れた寂しさを紛らわすように、まもなく体をつなげることになってしまった。

 体の相性は良いのだ。どこが感じるか、お互いによくわかっている。だからずっと、旅の間は繋がってきた。

「すごいな、前も後も糸を引いている」

 下穿きをゆっくりとはぎとられ、足首から抜き取られてしまう。膝を押し上げられ、大きく下肢を広げた状態になる。

「や、めろ…こんな、明るい場所で…」

 何もかもをさらけ出すことになり、ルーシェは思わず右手の甲で目元を覆う。

「ん、あ…」

 ガルシアの分厚い掌がなだめるように内股をさすり、肉厚の舌が会陰をなめる。さらに二つの肉を押し広げられ、後孔にふうと息を吹きかけられる。

「ルーのここは、ずっと淡い色のままだな」

「いうなよ、恥ずかしい…」

「どうして?俺をいつも受けとめてくれるのは、ここなのに」

 尻の間に顔を寄せて舌でねっとりとなめる。

「や、やめろって…」

 いくら準備はしてあるといっても、不浄の場所だ。

「今日は妙に濡れているぞ。香油も塗り込んできたか?」

 確かにいつも、香油を塗り込んでいるが、それにしても孔がもう濡れそぼっているのだ。しかもガルシアが内壁を舌で舐めてくるので、舌さえも締め付けてしまう。

「う、ひゃああん、だめ、だめだってぇ…!」

 自分の声が甘く媚びているのがわかる。べちゃべちゃと舐められる音と、自分の忙しない喘ぎ声がこの部屋を支配している。

 ガルシアの髪を両手でつかみ、行為を止めさせようとするが、逆にその手を取られ孔まで導かれる。

「ほら、こんなになってる」

 自分の指先を抜き差しされ、隙間にガルシアの肉厚の舌も入り込んでくる。自分の指先に触れる内壁がぞわりと蠢いているのがわかった。

「ガルっ、ガル…!や、…」

 ガルシアの太い指も加わり、孔が水音を激しく立てていた。ガルシアの空いた掌は陰茎と玉を柔らかく揉みこみでいた。

「ルー、いくぞ」

 両足首をそれぞれ持たれ、ガルシアがのしかかってくる。筋が浮き出た赤黒い雄身で会陰をさすられる。

 外側からそこに押し込まれると、期待してしまう。内側からぐちゃぐちゃに突いて、犯してほしい。

 快感が待ちきれなくて涙があふれてしまう。顔中、火照ってしまっているのがわかる。

 いつもなら存在を知らしめるべくゆっくりと犯してくるガルシアだが、今日は一気に奥まで押し込んできた。

「あ、あああ!」

 甘い嬌声が響き渡る。狭隘を太いカリの先で強引に押し広げる。何度か行き来したのち、直腸の奥までずっぷりと埋め込まれてしまう。

 身動きできないほど深く埋め込まれ、歯がぶつかり合う程の強い刺激に、ルーシェは気を失ってしまいそうになる。

 ルーシェの陰茎はどぷっと白い液を漏らし、自分の腹から胸元に広がっていた。

「ルー。ルーシェ。いつもより熱い。蕩けそうだっ」

 ガルシアも興奮しているのだろう。すでに陰毛がルーシェの尻をくすぐっているのに、更に腰をひねって押し付けてくる。陰毛のチクチクした細かい刺激もたまらなかった。

「あ、ああ!」

 結腸の奥にもガルシアの野太い亀頭が埋め込まれ、弁の抵抗を楽しむように腰を動かしている。

「だ、して…!あ、ぁ、…だしてぇ」

 ルーシェはガルシアの首に縋り付きながら必死にねだる。ルーシェの足はガルシアの腰に絡みつく。ガルシアの熱い液が欲しい。それしか考えられない。

 腹の力を籠めると、くっとガルシアも呻く。

「まだだ、ルー。まだ、だしてやらない」

「ひど、い…あ、ん!ひどいぃ!ああ…!」

 珍しく意地悪をするガルシアにルーシェはすすり泣いた。狂ってしまいそうな快感だった。

 体が熱くて、まともに視界が開けられない。ガルシアの肩に額を擦り付け、髪を振り乱し、はやく出してほしいと強請ってしまう。

 8年も肉体関係があったのに、さらなる快感がまだあったのだ。病みつきになりそうな熱さに、ただただ翻弄された。

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