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魔導
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道なりに進み続けると一直線の道の先に検問所のような建物が道を挟むようにあり奥に進む馬車をいったん止めている。ユウト達もその建物にたどり着いた。数人がその場所に詰めていてその中の一人がヨーレンたちを確認すると事務的な口調で声を掛けてくる。
「身分証か通行許可証の提示をお願いします」
「ええ。わかりました」
ヨーレンは胸元からユウト達に渡したプレートに似た形のものを取り出す。ただ色が赤っぽいものであったようにユウトには見えた。ユウト達もヨーレンにならい先ほど貸し与えられたプレートを声を掛けてきた人に掲げて見せる。一人ずつ丁寧にそのプレートをその人は確認し持っていた金属製の板を下敷きにして髪に何か書き込んだ。
「工房主任が一名と招待の方が三名で確認しました。どうぞお進みください」
「ありがとう」
ヨーレンは簡単に言葉を交わすと塔に向けて進みだし、ユウト達も続く。ユウトは大工房に来てからのヨーレンへの周りの接し方が気になり少し速足でヨーレンの隣まで進むと尋ねた。
「なぁヨーレンって大工房の中でどういう立場なんだ?主任とか言われてたけど」
「あーそうか。ユウトはまだ知らなかったね。私が大工房所属の魔術師であることは前に言った通りなんだけど大工房内での肩書は魔術医療研究開発部門の主任なんだ」
「へぇー、部門主任って結構すごい役職なんじゃないのか?」
思わぬヨーレンの優秀さを垣間見てユウトはその納得感でなぜかうれしくなっていた。
「あはは。いやぁそう言ってもらえると照れるよ。
まぁ実情は新設されたばかりの部門でね。まだまだ実用化も道半ばだし魔術具にできるほどの知見も情報もなくて地道に研究している感じかな。
こうしてゴブリン討伐遠征に参加しているのも現場の情報を得るためっていう目的もあるんだよ」
「なるほど。やっぱり怪我を治したりするのは魔術ではまだ難しいのか」
「うーん、そうだね。確かに魔術ではまだ難しいか。魔導では結構確立しているんだけどね」
ヨーレンの言った言葉の微妙な意味の違いにユウトは気づく。
「魔導?そういえばヨーレンの妹さんは魔導士って名乗ってたな。魔術と魔導って何か違うのか?」
「お!よく気付いたね。
簡単に説明すると魔導士は代々家系で受け継がれ続ける技術なんだ。家系毎に門外不出の技術を持っていてそれぞれが独自に研究と継承を行ってきた。だから一時はその力が魔法なんて言われてたこともあるくらい尖った能力を持ってる家系もあってその内に治癒に特化してるものもある。ほんとに奇跡なんじゃないかっていうものもあるくらいだ。
もう一つの魔術は魔導をよりたくさんの人たちに使いやすくすることを念頭に研究されている学問みたいな感じかな。魔導を扱う家系や人は保守的になりがちでね。家系内の決まりが厳しかったり内輪もめなんかもよくあって家系から離れた魔導士があの塔に集まって始めたのが魔術というわけだ」
ヨーレンの説明を聞いてユウトはあることに気づく。
「なら、魔術師と魔導士の間柄ってかなり険悪なんじゃないのか?せっかくの特権をばらまかれることになるだろ」
「その通りなんだよ。底の見えない谷のような亀裂が走ってる。
ユウトならもう予想ついてると思うけどカーレンがそうであるように私も本来なら家について魔導の道を進む予定だったのをかなり無理して亀裂と飛び越えてここにいるんだ」
ヨーレンは困ったような笑顔で塔を見上げている。
「魔導と魔術のどちらが優れているとか劣っているとかじゃないんだけれどね。私はたまたま魔術の可能性に興味を持ってしまったんだ。それをどうしても我慢できなかった。
私の我がままのためにカーレンにはだいぶ苦労させてしまったかな・・・砦でユウトと別れた後ずいぶんしぼられたよ。やっぱり怒ってるよなぁ」
「ちょっと違いますよ!ヨーレンさん」
少し後ろを歩いていたレナがヨーレンに向かって話しかけてきた。
「カーレンはヨーレンさんのことが心配だからもっと連絡してって言ってるだけです。もうずいぶんと実家にも帰ってないんでしょう?手紙くらい出しましょうよ」
レナの訴えをヨーレンはバツが悪そうに頭を掻く。
「努力するよ。砦最後の夜のご飯は意気投合したレナとカーレンの説教で味がしなかったよ」
ヨーレンはユウトに目配せしつつ苦笑いを浮かべる。
「それは大変だったな・・・」
ユウトも苦笑いでヨーレンに返した。その場にいなかったことをすこしだけ幸運だったと思う。
「あの歳で騎士団付きの魔導士やってるってだけですごい頑張り屋なんですから。ヨーレンさんへの怒りだけじゃなれませんよ。だからもっとカーレンを褒めてあげください!」
「は、はい!必ず手紙を書くよ」
語気を強めたレナにヨーレンはたじたじと返事を返すので精一杯な様子だった。
ヨーレンが饒舌に自身のことを語るのは初めてかもしれないない、さっきまでの工房長への面会で緊張していたヨーレンの顔が少しだけ柔らかくなったとユウトは感じて自身の顔もほころんだ。
和気あいあいと話しながら歩き続けるユウト達の周りの景色は検問を抜けてから徐々に変化している。これまでの建物よりずっと大規模な工場といったいでたちへと変わり大規模な施設を動かしているような様相へと様変わりしていた。ユウトには工業地帯の中を歩いているような感覚だった。
「身分証か通行許可証の提示をお願いします」
「ええ。わかりました」
ヨーレンは胸元からユウト達に渡したプレートに似た形のものを取り出す。ただ色が赤っぽいものであったようにユウトには見えた。ユウト達もヨーレンにならい先ほど貸し与えられたプレートを声を掛けてきた人に掲げて見せる。一人ずつ丁寧にそのプレートをその人は確認し持っていた金属製の板を下敷きにして髪に何か書き込んだ。
「工房主任が一名と招待の方が三名で確認しました。どうぞお進みください」
「ありがとう」
ヨーレンは簡単に言葉を交わすと塔に向けて進みだし、ユウト達も続く。ユウトは大工房に来てからのヨーレンへの周りの接し方が気になり少し速足でヨーレンの隣まで進むと尋ねた。
「なぁヨーレンって大工房の中でどういう立場なんだ?主任とか言われてたけど」
「あーそうか。ユウトはまだ知らなかったね。私が大工房所属の魔術師であることは前に言った通りなんだけど大工房内での肩書は魔術医療研究開発部門の主任なんだ」
「へぇー、部門主任って結構すごい役職なんじゃないのか?」
思わぬヨーレンの優秀さを垣間見てユウトはその納得感でなぜかうれしくなっていた。
「あはは。いやぁそう言ってもらえると照れるよ。
まぁ実情は新設されたばかりの部門でね。まだまだ実用化も道半ばだし魔術具にできるほどの知見も情報もなくて地道に研究している感じかな。
こうしてゴブリン討伐遠征に参加しているのも現場の情報を得るためっていう目的もあるんだよ」
「なるほど。やっぱり怪我を治したりするのは魔術ではまだ難しいのか」
「うーん、そうだね。確かに魔術ではまだ難しいか。魔導では結構確立しているんだけどね」
ヨーレンの言った言葉の微妙な意味の違いにユウトは気づく。
「魔導?そういえばヨーレンの妹さんは魔導士って名乗ってたな。魔術と魔導って何か違うのか?」
「お!よく気付いたね。
簡単に説明すると魔導士は代々家系で受け継がれ続ける技術なんだ。家系毎に門外不出の技術を持っていてそれぞれが独自に研究と継承を行ってきた。だから一時はその力が魔法なんて言われてたこともあるくらい尖った能力を持ってる家系もあってその内に治癒に特化してるものもある。ほんとに奇跡なんじゃないかっていうものもあるくらいだ。
もう一つの魔術は魔導をよりたくさんの人たちに使いやすくすることを念頭に研究されている学問みたいな感じかな。魔導を扱う家系や人は保守的になりがちでね。家系内の決まりが厳しかったり内輪もめなんかもよくあって家系から離れた魔導士があの塔に集まって始めたのが魔術というわけだ」
ヨーレンの説明を聞いてユウトはあることに気づく。
「なら、魔術師と魔導士の間柄ってかなり険悪なんじゃないのか?せっかくの特権をばらまかれることになるだろ」
「その通りなんだよ。底の見えない谷のような亀裂が走ってる。
ユウトならもう予想ついてると思うけどカーレンがそうであるように私も本来なら家について魔導の道を進む予定だったのをかなり無理して亀裂と飛び越えてここにいるんだ」
ヨーレンは困ったような笑顔で塔を見上げている。
「魔導と魔術のどちらが優れているとか劣っているとかじゃないんだけれどね。私はたまたま魔術の可能性に興味を持ってしまったんだ。それをどうしても我慢できなかった。
私の我がままのためにカーレンにはだいぶ苦労させてしまったかな・・・砦でユウトと別れた後ずいぶんしぼられたよ。やっぱり怒ってるよなぁ」
「ちょっと違いますよ!ヨーレンさん」
少し後ろを歩いていたレナがヨーレンに向かって話しかけてきた。
「カーレンはヨーレンさんのことが心配だからもっと連絡してって言ってるだけです。もうずいぶんと実家にも帰ってないんでしょう?手紙くらい出しましょうよ」
レナの訴えをヨーレンはバツが悪そうに頭を掻く。
「努力するよ。砦最後の夜のご飯は意気投合したレナとカーレンの説教で味がしなかったよ」
ヨーレンはユウトに目配せしつつ苦笑いを浮かべる。
「それは大変だったな・・・」
ユウトも苦笑いでヨーレンに返した。その場にいなかったことをすこしだけ幸運だったと思う。
「あの歳で騎士団付きの魔導士やってるってだけですごい頑張り屋なんですから。ヨーレンさんへの怒りだけじゃなれませんよ。だからもっとカーレンを褒めてあげください!」
「は、はい!必ず手紙を書くよ」
語気を強めたレナにヨーレンはたじたじと返事を返すので精一杯な様子だった。
ヨーレンが饒舌に自身のことを語るのは初めてかもしれないない、さっきまでの工房長への面会で緊張していたヨーレンの顔が少しだけ柔らかくなったとユウトは感じて自身の顔もほころんだ。
和気あいあいと話しながら歩き続けるユウト達の周りの景色は検問を抜けてから徐々に変化している。これまでの建物よりずっと大規模な工場といったいでたちへと変わり大規模な施設を動かしているような様相へと様変わりしていた。ユウトには工業地帯の中を歩いているような感覚だった。
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