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野営地
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ガラルドと一緒にしばらく洞窟内を歩く。
ある程度整備されているようでさほど歩きにくさは感じない。ただ素足で地面の冷たさを感じながら歩くのには心細さを感じた。明かりはガラルドが腰に光を発する何かを備え付けているようで前方はぼんやりと明るかった。
そして洞窟の先から強い光が差した。だんだんと明るさが増す。強い光にユウトは思わず目を細めたがそのまま歩き続けた。しばらくして目が慣れたのか周りの様子が見えてくる。そこは大木が生い茂る森のようだった。少し開けておりそこには何人か人がいて武装している。その人らはガラルドを見てほっとしたようだったがユウトの方へ視線を移した途端に緊張が走りすぐさま武器を構えて臨戦態勢に移った。ユウトは思わず後ずさる。
「ま、待ってくれ。オレはゴブリンじゃない!」
ユウトからの言葉を聞いて武器を構えた人らは困惑を見せたが武器と殺気はそのままだった。
「こいつはこれでも人間なのだそうだ。名をユウトというらしい。チョーカーを付けてある。問題を起こせば俺が処理する。ここを通してくれ」
ガラルドが臨戦態勢の人たちに話しかけた。するとしぶしぶといった様子で武器をおろして道が開けられる。それでも殺気までは押さえきれそうになくユウトはピリッとした視線を感じながらガラルドとともにそのばを後にした。
それからしばらくユウトはガラルドとともに木々の間を歩いた。木々はたくましく大きい。それぞれの木が所狭しと茂らせた葉で薄暗く木漏れ日が点々と地面を照らしている。地面には落ち葉が広がりふかふかしていたので洞窟を歩いていたときのような心細さは多少まぎらわしてくれていた。道しるべはないが数多くの足跡が重なり踏み固められたのか新しい道が出来上がっている。素足のユウトでも不自由なく歩くことができた。
歩いている間、ガラルドは全く喋らない。完全に顔を覆ってしまう鎧兜のせいで表情を読み取ることはできないが初めて会ったときのような殺気はユウトには感じられなかった。さしせまって命の危険はないと判断する。ユウトは思い切ってガラルドに話しかけてみた。
「あの・・・ガラルド・・・さん?」
恐る恐る声を掛けるがすぐに返事はない。聞こえたのか不安になりもう一度声を掛けようとしたときガラルドは答えた。
「“さん”はいらない、ガラルドでかまわん・・・なんだ?」
声を出そうとしたタイミングでガラルドが答えたため不意を突かれてユウトは焦ってしまう。いろいろとこの世界のことについて情報を集めようといくつか質問の内容を考えていたが全て飛んでしまった。
「い、いい天気だな!」
若干声が裏がりながらあたふたとどうでもいいことを口走った。
「そうだな」
一言、ガラルドは答えてそれ以上会話は続かない。ユウトはめげずに話を続ける。なかばやけではあったが最大限このチャンスを活かそうと努める。
「あまり寒くないから今は春?夏だろうか?」
「今は春だ」
「じゃあ夜はまだ冷えるのか?」
「ああ」
「着るものをもらえなかったら凍えて死んでかもしれないな」
「ああ」
「・・・オレはこれからどうなるんだろうか」
「おとなしくしていればすぐに死ぬことはない」
「そ、そうか・・・おとなしくしているよ」
それからしばらく話しかけてみたがガラルドは簡単な返事しか返さず、あまり多くの情報をユウトは得ることができなかった。
そうしているうちに歩く先に火の明かりが見えてくる。どうやらそこが野営地のようだった。いくつかのテントのようなものの周りに数人の人がいて、周辺を見張っている者や料理をしている者、布を敷いて休んでいる者もいる。キャンプのようだとユウトは思った。
ガラルドは洞窟の入り口でのやり取りと同じような会話を見張りと行い、キャンプへ入っていく。ユウトもそれに着いていくと相変わらずの視線を感じる。こんな自分を連れているのだからガラルドにも注目が集まっているのだが全く気にすることはなく動揺など微塵も見せない。
野営地に入ってからもガラルドは何人かに声を掛けて服や靴を集めている。そして集め終わるとユウトへ渡し、布でできた簡素なテントをあてがわれそこで着替えるように促された。服や靴は単純な構造でユウトでも手間取らず着込むことができた。
「ありがとうガラルド。とりあずこれで少しは落ち着くよ」
「そうか。次は医者だ」
「あ、ああ。わかった」
医者がこのキャンプに同行していることにユウトは少し驚いた。ここまでの短い間に見た人たちのユウトに対する反応の素早さ、不服そうでもガラルドの言うことに従う聞き分けの良さからみんなただものではないとユウトは感じていたが、装備は統一されておらず軍隊には見えない。しかし医者までついてきているというのは予想外でユウトは思っていた以上にこの武装集団は大がかりで大規模なのではと考えた。
この異形の身体を医者に見せて容態を確認するか、人であることのお墨付きをもらうのだろうとユウトは予想する。
そんなことを考えながら少し歩くと大きい天幕を張ったテントに着いた。ガラルドがまず中に入りそれに続いてユウトも入る。テントの中は清潔感があり外とはまた変わった匂いがしていた。いくつかベッドのようなものや折りたたまれまとめられた布など簡素ではあるがここが救護所であることがわかる。
そして木箱を利用した台の傍らに座っている人が一人。白い服を着こんだ男が折り畳み式のように見える椅子に腰かけている。その男はガラルドを視界に入れるやれやれといったあきれた様子で声を掛けた。
「お怪我ですね。ガラルド隊長」
ある程度整備されているようでさほど歩きにくさは感じない。ただ素足で地面の冷たさを感じながら歩くのには心細さを感じた。明かりはガラルドが腰に光を発する何かを備え付けているようで前方はぼんやりと明るかった。
そして洞窟の先から強い光が差した。だんだんと明るさが増す。強い光にユウトは思わず目を細めたがそのまま歩き続けた。しばらくして目が慣れたのか周りの様子が見えてくる。そこは大木が生い茂る森のようだった。少し開けておりそこには何人か人がいて武装している。その人らはガラルドを見てほっとしたようだったがユウトの方へ視線を移した途端に緊張が走りすぐさま武器を構えて臨戦態勢に移った。ユウトは思わず後ずさる。
「ま、待ってくれ。オレはゴブリンじゃない!」
ユウトからの言葉を聞いて武器を構えた人らは困惑を見せたが武器と殺気はそのままだった。
「こいつはこれでも人間なのだそうだ。名をユウトというらしい。チョーカーを付けてある。問題を起こせば俺が処理する。ここを通してくれ」
ガラルドが臨戦態勢の人たちに話しかけた。するとしぶしぶといった様子で武器をおろして道が開けられる。それでも殺気までは押さえきれそうになくユウトはピリッとした視線を感じながらガラルドとともにそのばを後にした。
それからしばらくユウトはガラルドとともに木々の間を歩いた。木々はたくましく大きい。それぞれの木が所狭しと茂らせた葉で薄暗く木漏れ日が点々と地面を照らしている。地面には落ち葉が広がりふかふかしていたので洞窟を歩いていたときのような心細さは多少まぎらわしてくれていた。道しるべはないが数多くの足跡が重なり踏み固められたのか新しい道が出来上がっている。素足のユウトでも不自由なく歩くことができた。
歩いている間、ガラルドは全く喋らない。完全に顔を覆ってしまう鎧兜のせいで表情を読み取ることはできないが初めて会ったときのような殺気はユウトには感じられなかった。さしせまって命の危険はないと判断する。ユウトは思い切ってガラルドに話しかけてみた。
「あの・・・ガラルド・・・さん?」
恐る恐る声を掛けるがすぐに返事はない。聞こえたのか不安になりもう一度声を掛けようとしたときガラルドは答えた。
「“さん”はいらない、ガラルドでかまわん・・・なんだ?」
声を出そうとしたタイミングでガラルドが答えたため不意を突かれてユウトは焦ってしまう。いろいろとこの世界のことについて情報を集めようといくつか質問の内容を考えていたが全て飛んでしまった。
「い、いい天気だな!」
若干声が裏がりながらあたふたとどうでもいいことを口走った。
「そうだな」
一言、ガラルドは答えてそれ以上会話は続かない。ユウトはめげずに話を続ける。なかばやけではあったが最大限このチャンスを活かそうと努める。
「あまり寒くないから今は春?夏だろうか?」
「今は春だ」
「じゃあ夜はまだ冷えるのか?」
「ああ」
「着るものをもらえなかったら凍えて死んでかもしれないな」
「ああ」
「・・・オレはこれからどうなるんだろうか」
「おとなしくしていればすぐに死ぬことはない」
「そ、そうか・・・おとなしくしているよ」
それからしばらく話しかけてみたがガラルドは簡単な返事しか返さず、あまり多くの情報をユウトは得ることができなかった。
そうしているうちに歩く先に火の明かりが見えてくる。どうやらそこが野営地のようだった。いくつかのテントのようなものの周りに数人の人がいて、周辺を見張っている者や料理をしている者、布を敷いて休んでいる者もいる。キャンプのようだとユウトは思った。
ガラルドは洞窟の入り口でのやり取りと同じような会話を見張りと行い、キャンプへ入っていく。ユウトもそれに着いていくと相変わらずの視線を感じる。こんな自分を連れているのだからガラルドにも注目が集まっているのだが全く気にすることはなく動揺など微塵も見せない。
野営地に入ってからもガラルドは何人かに声を掛けて服や靴を集めている。そして集め終わるとユウトへ渡し、布でできた簡素なテントをあてがわれそこで着替えるように促された。服や靴は単純な構造でユウトでも手間取らず着込むことができた。
「ありがとうガラルド。とりあずこれで少しは落ち着くよ」
「そうか。次は医者だ」
「あ、ああ。わかった」
医者がこのキャンプに同行していることにユウトは少し驚いた。ここまでの短い間に見た人たちのユウトに対する反応の素早さ、不服そうでもガラルドの言うことに従う聞き分けの良さからみんなただものではないとユウトは感じていたが、装備は統一されておらず軍隊には見えない。しかし医者までついてきているというのは予想外でユウトは思っていた以上にこの武装集団は大がかりで大規模なのではと考えた。
この異形の身体を医者に見せて容態を確認するか、人であることのお墨付きをもらうのだろうとユウトは予想する。
そんなことを考えながら少し歩くと大きい天幕を張ったテントに着いた。ガラルドがまず中に入りそれに続いてユウトも入る。テントの中は清潔感があり外とはまた変わった匂いがしていた。いくつかベッドのようなものや折りたたまれまとめられた布など簡素ではあるがここが救護所であることがわかる。
そして木箱を利用した台の傍らに座っている人が一人。白い服を着こんだ男が折り畳み式のように見える椅子に腰かけている。その男はガラルドを視界に入れるやれやれといったあきれた様子で声を掛けた。
「お怪我ですね。ガラルド隊長」
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