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22 不穏な気配
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娘は礼花を呼びに行くとナギが目覚めたことを報告した。礼花は「もう目覚めたの?」と少し驚きつつもナギの自室へと足を運ぶ。娘はその後についていった。先程のこともあり気恥ずかしく、礼花の後ろに隠れるようにしてナギの自室へと再び入った。礼花の背中からひょっこり顔を出すとナギはとても怠そうに寝っ転がっていた。礼花がナギに近づくと足蹴りする。
「だらしない。俺だって龍になった反動ですごい足腰痛いのに、あーあ、もう動きたくない寝たい」
「人を足蹴りする力はあるんだな」
そう言うとナギは起き上がり礼花の足首を掴むと思いっきり引っ張る。礼花は盛大に尻餅をつくとそのまま床に四つん這いになってとても痛そうにしていた。
醜い喧嘩だなぁ…………
娘はその様子を半分呆れた目で見ていた。先程といい、今といい、ナギは案外本当に子供っぽいのかもしれない。もちろん礼花も含めて。礼花はナギの胸ぐらを掴むと怒りをあらわにして言う。
「ほんっっと最悪。足腰痛いってさっき言ったよね⁇人の話聞いてた?」
「俺には関係ない」
「殺す」
ナギと礼花との間に火花が見えそうなのは見ての通り喧嘩腰だからだ。娘はため息をつくと2人の間に割って入る。
「醜い喧嘩はやめてください、すごい見てて呆れる」
その言葉が衝撃的だったのか2人が娘を見て固まった。ちょうどその時縁側を歩いてくる2人の足音が聞こえてきた。障子から顔を出したのは国と天だった。国と天は今の状況をみて首を傾げた。娘が「またいつもの喧嘩だよ」と言うと国はため息をついたが天は面白そうにニヤニヤしていた。そんなこともあって2人の醜い争いが収まると礼花は立ち上がりナギに言う。
「気を取り直すけど、今のところこの屋敷に異変はないし、沼にも異変はないよ。ただこの前ので邪神が消えたわけでは無さそう。また何かしら被害を出すかもしれない」
「図太いな、あの邪神」
「それだけ過去に生贄に捧げられた人達が多いんだよ。あの儀式も古くからあるらしいからね、村自体そうとう昔からあるのかも。花雨ちゃんの代で一体どのくらいなんだろうね……」
娘が以前住んでいた村は小さい村だけれど土地神様のおかげで稲の収穫にも困らないし、村も安泰というなんとも不思議な村だった。何度か都というところに行ってみたいと思ったことはあったが行く前に娘は生贄に捧げられそうになった。生贄の娘を捧げる家系というものが昔はあったとか無かったとかいう噂は聞いたことがあったが基本的には村の美しい娘であった。なんでも、愛する娘を生贄に差し出さなければならない悲しみに耐えられなくなり一家心中したとか。そこでその家系は途絶えたことになる、悪魔で噂だ。この屋敷にいた奥方様はいつ生贄に差し出されたのか明確ではない。水神も何百年と生きているもしかしたら何百年も前かもしれない。
娘が難しい顔をして考えているのを見た礼花は気を遣ってべつの話題へと話を変える。その話というとが少し変わった案件だった。
「そういえば、屋敷に俺たち以外の誰かが入った痕跡があったんだけど、知らない?比売も泣沢女もここに来ている痕跡はあるんだけど。いつもは来てない水神のなかで誰か…」
「御津羽だろう。何を探りに来たのか微かに痕跡がわかる」
「流石当主様。やっぱ働いてもらわないと困る」
比売といえば、ナギが娘を朝顔の花畑へと連れてってくれる道中出会った水神だ。男癖が悪いことだけは分かった。泣沢女は以前仲良くしてもらったばかりで記憶も鮮明だった。2人とも屋敷に来ているのかと少しだけ驚く。でもまあ、いつもご飯をいただく際娘達の分の他に2つだけ箱膳が置かれている。娘達が食べ終わった後ひっそり来て食べているのかもしれない。それにしてもほかに水神がいること自体驚いた。一体どのくらいいるのだろうか。
「御津羽様ですか……ネチネチと絡んでくるので個人的には嫌いです」
「俺も~」
国と天もどうやら御津羽という水神を知っている様子だった。あまり評判は良くないようだ。礼花は注意するように娘達に言うと縁側へと行く。
「気を付けてね。特に花雨ちゃんは人間だから興味示して話しかけてくるかもだから。害はないと思うけど絡まれると怠いよ。それじゃ、やること増えたから俺は行くね。ナギはしばらくは安静してて。俺の寛大な心遣いに感謝して」
そう言うと礼花は部屋を出ていった。
国と天もどうやらこの後2人で仲良く遊ぶらしく部屋を出ていった。娘は先程と同じ状況にはなりたくなかったのでナギに「やること思い出したから私も…」と言って部屋を出て行く。目を見つめているだけで心臓が早鐘を打ってしまうのだからしょうがない。娘は縁側を歩いて自室へと戻る。庭先から見つめている存在に気づかないまま。
その人物は面白そうに娘を見ると口角を上げるて目を細める。
「人間かぁ…………」
不穏な気配はすぐそこへと近づいていた。
「だらしない。俺だって龍になった反動ですごい足腰痛いのに、あーあ、もう動きたくない寝たい」
「人を足蹴りする力はあるんだな」
そう言うとナギは起き上がり礼花の足首を掴むと思いっきり引っ張る。礼花は盛大に尻餅をつくとそのまま床に四つん這いになってとても痛そうにしていた。
醜い喧嘩だなぁ…………
娘はその様子を半分呆れた目で見ていた。先程といい、今といい、ナギは案外本当に子供っぽいのかもしれない。もちろん礼花も含めて。礼花はナギの胸ぐらを掴むと怒りをあらわにして言う。
「ほんっっと最悪。足腰痛いってさっき言ったよね⁇人の話聞いてた?」
「俺には関係ない」
「殺す」
ナギと礼花との間に火花が見えそうなのは見ての通り喧嘩腰だからだ。娘はため息をつくと2人の間に割って入る。
「醜い喧嘩はやめてください、すごい見てて呆れる」
その言葉が衝撃的だったのか2人が娘を見て固まった。ちょうどその時縁側を歩いてくる2人の足音が聞こえてきた。障子から顔を出したのは国と天だった。国と天は今の状況をみて首を傾げた。娘が「またいつもの喧嘩だよ」と言うと国はため息をついたが天は面白そうにニヤニヤしていた。そんなこともあって2人の醜い争いが収まると礼花は立ち上がりナギに言う。
「気を取り直すけど、今のところこの屋敷に異変はないし、沼にも異変はないよ。ただこの前ので邪神が消えたわけでは無さそう。また何かしら被害を出すかもしれない」
「図太いな、あの邪神」
「それだけ過去に生贄に捧げられた人達が多いんだよ。あの儀式も古くからあるらしいからね、村自体そうとう昔からあるのかも。花雨ちゃんの代で一体どのくらいなんだろうね……」
娘が以前住んでいた村は小さい村だけれど土地神様のおかげで稲の収穫にも困らないし、村も安泰というなんとも不思議な村だった。何度か都というところに行ってみたいと思ったことはあったが行く前に娘は生贄に捧げられそうになった。生贄の娘を捧げる家系というものが昔はあったとか無かったとかいう噂は聞いたことがあったが基本的には村の美しい娘であった。なんでも、愛する娘を生贄に差し出さなければならない悲しみに耐えられなくなり一家心中したとか。そこでその家系は途絶えたことになる、悪魔で噂だ。この屋敷にいた奥方様はいつ生贄に差し出されたのか明確ではない。水神も何百年と生きているもしかしたら何百年も前かもしれない。
娘が難しい顔をして考えているのを見た礼花は気を遣ってべつの話題へと話を変える。その話というとが少し変わった案件だった。
「そういえば、屋敷に俺たち以外の誰かが入った痕跡があったんだけど、知らない?比売も泣沢女もここに来ている痕跡はあるんだけど。いつもは来てない水神のなかで誰か…」
「御津羽だろう。何を探りに来たのか微かに痕跡がわかる」
「流石当主様。やっぱ働いてもらわないと困る」
比売といえば、ナギが娘を朝顔の花畑へと連れてってくれる道中出会った水神だ。男癖が悪いことだけは分かった。泣沢女は以前仲良くしてもらったばかりで記憶も鮮明だった。2人とも屋敷に来ているのかと少しだけ驚く。でもまあ、いつもご飯をいただく際娘達の分の他に2つだけ箱膳が置かれている。娘達が食べ終わった後ひっそり来て食べているのかもしれない。それにしてもほかに水神がいること自体驚いた。一体どのくらいいるのだろうか。
「御津羽様ですか……ネチネチと絡んでくるので個人的には嫌いです」
「俺も~」
国と天もどうやら御津羽という水神を知っている様子だった。あまり評判は良くないようだ。礼花は注意するように娘達に言うと縁側へと行く。
「気を付けてね。特に花雨ちゃんは人間だから興味示して話しかけてくるかもだから。害はないと思うけど絡まれると怠いよ。それじゃ、やること増えたから俺は行くね。ナギはしばらくは安静してて。俺の寛大な心遣いに感謝して」
そう言うと礼花は部屋を出ていった。
国と天もどうやらこの後2人で仲良く遊ぶらしく部屋を出ていった。娘は先程と同じ状況にはなりたくなかったのでナギに「やること思い出したから私も…」と言って部屋を出て行く。目を見つめているだけで心臓が早鐘を打ってしまうのだからしょうがない。娘は縁側を歩いて自室へと戻る。庭先から見つめている存在に気づかないまま。
その人物は面白そうに娘を見ると口角を上げるて目を細める。
「人間かぁ…………」
不穏な気配はすぐそこへと近づいていた。
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