上 下
40 / 40
第三章 誰が為の未来

第二十幕 未来

しおりを挟む
アルフレッドはそのまま退出の許可を願うと足早にリナと謁見の間を後にする。

控えの客間の様な所入るとアルフレッドはリナを力強く抱きしめた。

リナは驚いて何も行動が取れなかった。

「馬鹿!みんなの前でこんな…リナだけが頑張る必要なかったのに!」

アルフレッドは苦しそうに言葉を吐いた。

リナは優しくアルフレッドを抱きしめ返す。

「そんなに悲しむ必要なんかない。私達は常に身体を見られているし、あそこで恥ずかしがっていたら変になる。私は一切恥ずかしいとか思わなかったし寧ろ見ろっと思ってドレスを切ったよ。」

首の傷を見てアルフレッドが再び顔を歪めた。

テーブルに置いてある水差しに自身のマントを濡らしてリナの傷口に押し当てる。

「リナは止めて欲しくないだろうから必死に我慢したが、本当は凄く止めたかったんだからな。」

アルフレッドは少し怒る様にリナに言い聞かせた。

扉を背にしていたが侍女を連れたラライが扉を静かにノックした。

「アルフレッド様、新しい着替えと治療の為の医者をお連れしました。」

アルフレッドは不機嫌な顔で扉の取っ手に手を掛けると静かに扉を開いた。

ラライの後にルイとユーリも続いていた。

ルイは泣きそうな顔をしているしユーリは苦笑いしている。

リナが観察すると二人とも複雑な気持ちの様だった。

思わず苦笑いを浮かべてリナは謝った。

「2人とも心配かけてごめんね。」

「本当…何個心臓があっても足りないですよ!」

ルイの発する声は震えていた。

ユーリは苦笑いをしながら言葉を吐き出す。

「リナがあのまま死んだりしたら私は一生後悔してただろうな。その前に暴れちゃってたかも。」

「先生!物騒な事言わないでください!そんな事言って大丈夫って思ってたから1人で行かせてくれたんでしょ?」

医者に促されてリナはソファに腰掛けた。

アルフレッドが向かいの席に座り心配そうにリナを見守る。

診察が終わると安静にする様に一言言って医者は部屋を後にした。

マントに包まれたままのリナを侍女達に奥の部屋へと連れて行かれる。

「予想以上に凄い方ですね…。」

ラライは硬い顔でユーリに話しかける。

「でもこれで良い方に進んだんじゃないですか?」

「確かに、ここに居る誰にも出来ない事を成し得たな…。」

アルフレッドは預けられていた和平への条約書を手にしてソファに身体を沈めた。

一瞬目を瞑ると、先程の光景が瞼の裏に焼き付いている。

裸体を晒しても一切の躊躇いがなく、誰も彼も目が離せず、あの父上すら言葉を失っていた。

絵画の様でその場が現実ではない様な気さえした。

着替えたリナが出てくるとアルフレッドの反対のソファに座る。

「ドレスは動きにくいので、騎士服を用意してくださって助かりました。」

リナはラライにそのままお礼を言った。

ラライは軽く腰を折って返した。

「さて、これからリナは自国に戻るだろうが…今度は私が一緒に行こうかな。そして、そのまま婚姻の準備をして一緒に戻ってこよう。」

「ぇえ?普通王族の婚姻って何か色々準備があってそんなにすぐ準備とか出来るんですか?」

ルイは思わずといった様にアルフレッドに質問する。

「普通はそうだが、この婚姻は長引けは長引くだけ面倒な事が起きる気がする。なので早める。リナもそれでいいか?」

「そうだね。早い方が良いと私も思う。じゃぁ一緒に行って挨拶して戻ってこよう。」

ラライは言葉を聞いて頭を抱えた。

そこからは誰もが信じられない早さで物事が進む事になった。

リナとアルフレッドが一緒になると周りはついていくのがやっとだという事がその時分かった。












しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

静内燕
2020.07.29 静内燕

読ませていただきました

リナさんとってもかわいいです🎵

紫苑
2020.07.29 紫苑

感想ありがとうございます😊
とっっても嬉しいです!!

より、リナが魅力的になるよーに続き頑張って書きます☆

解除

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。