上 下
19 / 40
第二章 誰が為の出会い

第八幕 ただいま

しおりを挟む
「リナ様ー!やっっと帰ってきたー!!お帰りなさいませー!!」

息を弾ませて、足早に小柄で可愛らしい金髪の女性がリナに駆け寄ってきた。
その後ろを、よく似た顔立ちの金髪の青年が苦笑いを貼りつけて、追いかけてきた。

「姉さん、心配だったのはわかるけどリナ様、まだ馬上じゃないか…失礼だよ。」

「ルイったら…自分だってさっきまでずーと、帰ってこないってヤキモキしてたくせに!だって、急にユーリ様連れて、王城行っちゃうし心配で心配で…」

リナは馬上から降り立ち、息が上がり汗ばんでいる、愛馬のアスランを優しく撫でた。

「ただいま。マリーとルイ、お留守番ご苦労様」

満面の笑顔でリナは、二人に声を掛けた。

「「おかえりなさいませ。」」

マリーとルイも胸に手を当て敬礼をする。リナの天使の様な笑顔を見て、マリーとルイの頬は少し赤くなった。

「今日もマリーは、熱烈なお出迎えだね。私も一緒に帰ってきたのに、眼中にないのかな?」

ユーリも馬上から地上に降りて、笑っている。マリーとルイの視線がユーリに移動する。

「「ユーリ様もお帰りなさいませ。」」

「ユーリ様は、リナ様とご一緒だったから、私達に歓迎されなくてもいいじゃないですかー。私達は久しぶりに、リナ様から離れてお留守番だったんですよ!」

マリーが、可愛い顔をまるでリスの様に膨らませてユーリに抗議した。

「負傷兵の治療の為に残ってくれて、ありがとう。早速、救護テントに行ってその後は、お昼ご飯を食べながら、隊長達と今後の流れを確認したいんだけど…」

「そーおしゃると思って、お昼の準備もバッチリですし、隊長達にも集合の旨伝えてあります!」

「さすがマリーとルイ!ありがとうね。」

ルイが、リナとユーリの馬の手づなを預かり馬小屋に連れて行く。

リナの帰還に気づいた、周りの兵達が騒めき出した。
リナが歩いていると、声を掛けてくる。
「姫将軍様おかえりなさいー!」

その声に応えつつ、リナが救護テントに入って行くと、何人もの包帯姿の怪我人達が簡易ベットに寝ている。

白衣を着た初老の男性と若い助手の男性がベットに横たわる、怪我人を診ていた。

「ロー先生、患者達はどーですか?」

リナに話しかけられたロウは、振り向いた。

「姫さま、お帰りなさいませ。姫さまの采配で軽傷の人は、近くの村に移送済みです。重傷者はみな、こちらのテントで寝ています。後は、安静にする事が一番です。」

ベットに横たわる兵の中で、意識のある兵達がリナが来たことで、敬礼をしようと起き上がる。リナは、それを手で静止しながら声をかけた。

「休んでる所ごめんなさい。みなさん身体をゆっくり休めてください。」

そして、リナは一人一人の名前を呼んで声をかけて回った。

「生きていて良かったです。ゆっくり休んでください」

救護テントの中は殺伐とした雰囲気から一変していた。リナの声掛けに感動して兵達が涙を浮かべていた。

ユーリとマリーとルイは、そんなリナと兵士達の触れ合いをテントの入り口で見つめている。

リナは声を掛け終わると、救護テントを後にした。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...