上 下
13 / 52

二回

しおりを挟む
「そうだったのですか、知りませんでしたわ」
「知らなかっただろ、そうだと思って伝えておいた。だから今夜からは二回目を所望する。お願いします」

アレクセイは全裸でもお願いする事は忘れない。

「なるほど。では継続してわたくしに触れない事を、お約束頂けるのであれば」 

了承はしてくれたものの、アリスティアは頑なにアレクセイが触れようとするのを拒もうとする。
そんな妻の言葉にアレクセイは胸が苦しくなった。

「アリスティア…私は貴女に触れたい…そして出来れば……!!?」

本当の夫婦になりたいと、そう言いかけたがアリスティアが突然アレクセイの腿に腕を置き、男根に自身の顔を近づけた。そんな彼女の突拍子も無い行動に動揺してしまって、最後まで言えなかった。

そして可愛らしい顔を至近距離に持っていったと思ったら、男根にふっと息を吹きかけられ、この状況と相まって再びすぐに熱を取り戻していた。

「確かに……先程出したばかりなこに、もうこんなに涎を零して、イケないですね」

純粋無垢にみえる容姿をしているアリスティアが、羞恥を煽るような言い方をしてくるなんて。
毎度この見た目と行動の不一致に、心が乱され目が離せなくなる。

じっと澄んだ瞳で、真っ直ぐに屹立を見つめるてくるアリスティア。彼女の髪や頭に触れたくて、堪らず手を回そうとした瞬間「駄目ですよ?」と呟かれ、仕方なく動きを止めた。

「アリスティアに触れたい…」
「駄目って言いましたでしょう?何だか信用出来ませんわね……そうだわ。少しだけお待ちを」

そう言ったアリスティアは鏡台へと歩いていき、引き出しを開けてゴソゴソと中から何かを探して来たと思ったら、青のリボンを手にしていた。そしてアレクセイの両手を後ろに回させてから、リボンで結んで拘束した。

「ここまでしなくても……」

切なそうに妻を見つめるアレクセイは、中性的な美貌が憂いを纏う事により、蠱惑的な美しさが増していた。

そんなアレクセイを見て満足そうに微笑んだアリスティアは、華奢な人差し指で屹立の裏筋をなぞらせる。

アレクセイは椅子に座ったまま跳ね上がりかけた。

「手でして欲しかったら、ちゃんとお願いして下さいね?」

アレクセイは即大きめの声で「お願いします!」と叫び気味にお願いした。

するとアリスティアの女性にしても、小さく華奢な手と指が、アレクセイの男根を優しく包む。

初めはゆるゆると優しく遠慮がちに上下に撫で擦る。それに対し「もう少し強く」とお願いすると、その手は次第に力を強めて扱いていった。
両手で懸命に慣れない奉仕に勤しむアリスティア。左手で支えつつ、右手で根本から先端まで念入りに刺激を与えていく。

そこからは、天にも昇る心地だった。

そしてそれは新しい快感も伴っていた。
縛られて両手が不自由な中与えられる快楽。暴かれ剥き出しのまま一切抵抗出来ないという感覚。と、それを至近距離で見つめるアリスティア。 

アレクセイは小さく呻いた後、腰を浮かし気味に、先端から本日二度目の射精を行い、それと同時にまた新たな扉を開いてしまった。

今日もアレクセイにとって、妻のアリスティアと過ごす時間は至福だった。しかも今日は二回もしてくれた。

アリスティアは一見根っからの女王様に思えて「今日はどちらでなさいますか?寝台ですか、それとも床に座りますか?寝そべりますか?這い蹲りますか?」とちゃんと聞いて、アレクセイの気分に合わせてくれる。

そして今日は足のみではなく、手を使ってくれるなんて、何だか夫婦の中が進展した気がした。
しかも縛りプレイという新たな扉付きで。




アリスティアとの時間以外は、ほぼ仕事に時間を割り振る仕事人間のアレクセイ。現在は兄王から賜ったシルヴェストの領地の事もある。

彼が熱心に国政に携わって身を粉にして働くのは、尊敬する兄王の助けになりたいからという理由がやはり大きい。

そんな兄思いの彼だが、アレクセイが王をここまで慕っている事を知っている人間は限られている。

側妃の産んだ第三王子であるアレクセイのことを利用して、王を陥れようとする人間が近づいて来る事は今迄で何度もあった。
分かりやすい人間ならまだしも、何年越しでの計画を立てて、信用を築き上げてから裏切る人間が掃いて捨てるほどいる世界。

そんな人間を炙り出すためにも、敢えて兄弟の仲の良さは、僅かな人間の中でのみ知られる事となっている。
自分の存在が枷にならぬよう、宮中では常に気を張って生きて来た。兄のためだけではなく、国を乱さない為にも必要な事なのだから。


そんな彼にとって、妻のアリスティアと過ごす夜のひと時は確実に癒しの時間となっていた。
側から見たら女王様と犬のようにしか見えなくとも。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

望むとか、望まないとか

さくりふぁいす
恋愛
「望まない婚約」「真実の愛」「白い結婚」「親の望み」……それ、いったいどういうこと? 常識に疑問を感じたとある伯爵令嬢の、メイドに向けたぼやきの物語。 それと、その伯爵令嬢の玉の輿。

【R18】貴方の想いなど知りません

大城いぬこ
恋愛
初夜の夜、彼から言われたことは忘れない。貴方が義務を果たさないなら勝手に果たすまでよ。 外伝始めました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から

Mimi
恋愛
結婚初夜、旦那様は仰いました。 「君とは白い結婚だ!」 その後、 「お前を愛するつもりはない」と、 続けられるのかと私は思っていたのですが…。 16歳の幼妻と7歳年上23歳の旦那様のお話です。 メインは旦那様です。 1話1000字くらいで短めです。 『俺はずっと片想いを続けるだけ』を引き続き お読みいただけますようお願い致します。 (1ヶ月後のお話になります) 注意  貴族階級のお話ですが、言葉使いが…です。  許せない御方いらっしゃると思います。  申し訳ありません🙇💦💦  見逃していただけますと幸いです。 R15 保険です。 また、好物で書きました。 短いので軽く読めます。 どうぞよろしくお願い致します! *『俺はずっと片想いを続けるだけ』の タイトルでベリーズカフェ様にも公開しています (若干の加筆改訂あります)

処理中です...