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しおりを挟む「あ、ふーみん、」
「………、劉堂くん」
「は、はい?」
すぐに逸らされると思った視線は、しかしそのまま逸らされることはなく、馬鹿の声を遮るようにその人が俺の名を呼んだ。
そして視線を絡めたまま、ぐ、とテーブルに乗り出してきたその人に思わず声が上擦った。
「…あ、あのっ?」
「……ちょっとジッとしててね、」
「…え、」
神々しいまでに整った顔が近付いてきて、…まぁ避けるよな。俺の場合はこの人が嫌いだし。
が、何を思ったのか、逃げようとする俺の顎を掴み、更に顔を近づけてきたその人に、……不本意だが、当然俺の力では逃げることなど出来ず、何をするんだと身構えた俺は目を細めて笑ったその人に、
べろり、と口の端を、舐められた。
「!!?」
周りから上がる悲鳴、視界の隅で心底驚いたような顔をする馬鹿、ポカンとアホ面を晒すクソ猿、ピシッと、固まった俺を余所に、
そのまま舌が、ついでとばかりに下唇を滑り、そこでようやく我に帰った俺は渾身の力でその人を突き飛ばした。
そして案外簡単に離れたその人は、にこりと笑いながらアクのない顔で言ったのだ。
「ご飯粒ついてたよ」
だからって、わざわざ舌で取る必要はねぇだろ!!
などと言い返してやりたいのは山々だったが、クソ猿によってかなりの精神を削られていた俺は、あまりのショックにくらりと目の前が眩み、情けないことにそのまま意識がブラックアウトした。
「っ、ふーみん!?」
「……僕、何か悪いことした?」
倒れ行く霞む意識の中、そんな声が聞こえて、本当に気が狂うかと思った。
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