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しおりを挟む国民向けのパレードが終わり、贈呈式に移った。
贈呈式には一般市民は参加することが出来ないが、王城の広間には先程のパレードと変わらないくらいの貴族たちが英雄を一目見ようと所狭しと並んでいた。
明らかに平素よりも多い参加者の思惑が透けて見えるようで、げんなりとしながら俺も王族の端くれとして上段に立っていた。
「クレブ=アルアドル。前へ」
「は、」
名前を呼ばれ、彼が王の前に跪き口上を述べ、それを頷いて受け取った王から勲章を胸に送られて、盛大な拍手が巻き起こる。
それも王がひら、と手のひらを上げたことで収まり、彼へと厳かに問いかけた。
「この度の戦争、我が国に一番貢献したのは貴殿だ。何か望むものがあるのなら、申してみよ」
その言葉で、彼がようやく顔を上げた。
その目はまっすぐと王を見上げ、そして少しずれた。
「(……ん?)」
今、目が合った…? …いや、流石に自意識過剰だな。
みんなが彼に注目しているのを確認してから少し頭を振って、思い直す。
傍仕えを交代制にしたときも、彼が王城から去るときも、俺は何も言わなかった。
彼からしてみれば、やりたくもなかった仕事を急に辞めさせられて、嫌々ながらも懸命に仕えていた主にボロ切れのように捨てられたも同然だ。良い感情を持っているはずがない。
彼が優しいからって、本当…俺は浅ましいな。
「…恐れながら陛下。どんなものでもよろしいのでしょうか?」
沈黙を破った彼の言葉で意識が現実に引き戻される。
『なんでも』と言われたのにまるで念を押すような言葉に少し違和感を感じた。けどもし、本当に敗戦国の姫君を娶りたいというならそれくらいは言う…かな?
「よい。申してみよ」
王が鷹揚に頷くと、少し嬉しそうに口角を上げた彼が口を開いた。
「では――第三王子を、我が伴侶に迎えたく存じます」
一瞬の沈黙のあと、ざわりと会場の空気が騒ぎ立ちぐるりと貴族たちの視線が俺へと向けられた。
その威圧すら感じる視線に怯えるよりも先に、頭が真っ白になった俺は混乱した。
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