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【番外編】緻密な暴露

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「それも、最初のうちだけだったが」


父上の黄金が更に熱量を増すように煌めいた。

添えられたままの掌にまるで犬猫のようにくすぐられながら、俺は見上げた黄金から目が逸らせなくなってしまった。


「最初は純粋に償おうと、母親の死を慰めようと思って会いに行った。なのに、会って話せば話すほど、俺の方がテオンに癒されていた。

戸惑いながらも、俺を見上げて向けてくれる笑顔に。
俺の話に瞳を輝かせて、聞いた後はたどたどしくも賛辞の言葉を並べる、真っ直ぐな心に。

テオンの存在そのものが、俺の心を揺さぶって仕方がなかった。

他者に指摘されてから自覚するほどに、一目見たときから俺はテオンに執着した。
執着がない故に感情の起伏がほぼ無かった俺は、その感情を自覚してようやく他者の機微が分かるようになったんだ」


目を細めた父上は、親指で俺の唇を辿りながら妖艶に笑んだ。


「手元から離れることが許せない。
これだけは譲れない。
どうしても手に入れたい。

そんな抑制し難い感情を得て、テオンに情欲を覚えるようになるまでそうかからなかった。

自分でも異常だと自覚はしている。

故に、決して悟られないように緻密に計画し実行していたのだ。それこそ、サディアにあんな態度を取らせるほどにな。

……テオンと想いが通じても、その感情には温度差があると思っていたのだ。テオンが悪いわけではなく、俺は俺の想いが常軌を逸しているのを自覚していただけだ」


頬に添えられているのとは反対の繋いでいる掌に、ぐっと力が入る。まるで、離さないとでも言うように。


「侮っているわけではなかった。だが……いや、これは言い訳に過ぎないな。事実、俺はテオンのことを侮っていたのだ。だから、俺が張り巡らせた囲いの中から抜け出そうとしていると分かって、焦った。その結果、テオンを不必要に傷つけてしまったことも、後悔している」


「父上……」


気遣わしげな視線に、背中の傷のことか、と思い至る。

あれはもう完治していて、痛みも傷跡すら残っていないのに。父上はまだ覚えていてくださったのか。


「だが、理解した。テオンも同等の想いを俺に抱いていてくれた、と。こんな恐ろしい男でも構わない程に想っていてくれることを、とても嬉しく思う」

「! そんな…俺こそ………この想いを、父上が受け入れてくれて、こんな…これほどまでに俺をあ、愛して下さっていたなんて…とても嬉しいです」


普通なら重く、息苦しさを感じるほどの父上の愛を心地よく感じる俺は、きっととても愛に飢えていたんだと、思う。

俺にとって母親は、一番近い他人だった。母親は自分のことで精一杯で、俺のことは二の次だった。そんな訳アリ満載の俺たちに、他人はもっと素っ気なくて。だから俺は飢えを抱えたままこの城に来た。

でも、この愛情を心地良いと感じる今が、あの過去の積み重ねであったなら、感謝を捧げたいほどだ。

父上が異常ならば、その想いを許容する俺だって異常だ。常軌を逸しているからなんだというのか。別に、構わないじゃないか。


「……テオン」


父上の低い声が優しく響く。掌が離れ、身体を反転させてから俺の頬を包むように添えられる。



「俺の全てを受け入れてくれるか?」


「はい、もちろんです!」






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