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本編
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しおりを挟む断続的に続く鈍い音に、父上が寄せた眉根を揉みながら頭が痛いとばかりにため息をついた。
「…お前に会わせろと、早朝からここに乗り込んできてな」
「………サディアが、ですか?」
弟のサディアとは幼い頃はよく一緒に過ごしていたが、最近は互いに忙しくて碌に顔も合わせていないのに…。色々とあったし、心配してくれたのだろうか…。
ほっこりとした気持ちになっていると、父上が苦い顔をしながら続ける。
「…あぁ。大方、お前の部屋を移動したのを耳にしたのだろう。どういうつもりなのか、お前に無体を強いていないか、朝から喧しくてな…。離宮にいる者ではどうすることも出来ないから俺が相手をしていた」
「……はぁ、」
…うん?心配してくれたにしても、なんか、父上に尋ねる内容がおかしい気もするのだが…。というか、よほどのことがなければ王子であっても王の離宮に入るのって出来なかったはず、うーん、だったような…。
「……言い訳になるが、目覚めたときに傍にいれなくてすまなかった」
もんもんと考えている俺の頭を撫でながら、父上が唐突に謝罪してきた。
見上げた顔は申し訳なさそうにしていたが、さっき泣いていたのが父上がいない寂しさからだったと察せられていることに頬が熱くなるのが分かった。
そんな俺を父上は微笑ましそうに見つめたあと、目尻に口付けをしてくれた。
もう既に涙はとまっていたが、幼い頃を思い出してくすぐったい気持ちになって頬が緩んだ。
「これ以上待たせると面倒だから、先に行く」
お前は、頬の火照りが冷めたあと、着替えてから来なさい。
そう言って、父上はまだ叩かれている扉に向かっていった。
扉が開いた一瞬、サディアが捲し立てるように父上に文句のようなものを言っているのが聞こえたが、すぐに閉められたから正確に何を言っていたのかまでは分からなかった。
「………ふぅ、」
サディアが来たのは朝と言っていたし、待たせすぎてしまったかな…。俺といるときは穏やかな子なんだけど。あんな風に捲し立てるところは初めて見た。
たまにお茶に誘ってくれるサディアとのやり取りを思い出していると、火照りが治ってきた気がする。
さて、なるべく早く身支度を整えよう。
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