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しおりを挟む「…っ、先生! 聞いて…!?」
「仕方ないだろ、お前が勝手にべらべらしゃべってたんだから」
「…っ!!」
カァと顔が赤くなる。ちょ…っと、待って! 待って! どこから、何を聞いてたの!?
「……、先生っ」
焦って振り返ろうと身を捩ると、ぎゅっと更に強く抱き込まれて動けなくなった。そのとき、ちょっと意地悪く笑った先生が見えて胸が高鳴った。首筋に頭を埋めるようになだれ掛かってきた先生は、俺の耳元で囁いた。
「ほら、ここにいてやるから。…言ってごらん?」
「!」
低く甘い囁きに、胸がきゅっと狭まった。
やっぱり、先生全部聞いてたんだ! だから、こんなこと…!
今更本人前にだなんて恥ずかしすぎて、からかわれてると思ったらすごく惨めになって、イヤイヤと首を激しく振った。
すると、面白くなさそうにふーんと呟いた先生は顔を上げ、俺の顎を持ち上げた。必然的に俺が下から、…しかも後ろから先生を見上げる形になって、無理な姿勢に若干涙目になってしまった。
「!!」
「…ふ、顔真っ赤。バレバレだってーの」
「…っ!」
きっと情けない顔で頬を真っ赤にしていたんだと思う。そんな俺の顔を見て、ふっと柔らかく笑った先生はすごく格好良くて、更に顔が赤くなった気がした。
「……ほら、言ってごらん?」
柔らかく目を細め、先生が俺を促す。
せっかくのチャンスなのに。本人に直接言えるのに。それなのに、どれだけ優しく言われても本人に言う勇気が出なくて。また『好き』と口にするのは恥ずかしくて首を振った。
「……!」
数秒の沈黙の後、カプリと耳を咬まれて体が震えた。文句を言いたくて、でも言えなくて。振り返りたくても振り返れなくて。何も出来ないもどかしさに地団駄を踏みたくなった。
「言って、ごらん」
「………っ!」
最早疑問系じゃない。
言え、と優しく命令されているみたいで。言うまで帰してくれないと悟った俺は、緊張と恥ずかしさで震える唇で再びその言葉を紡いだ。
「…好き、です」
「ん、……誰を?」
「………っ、せんせい、です」
恥ずかしさをかみ殺して、先生の質問に答えた。だから、答えたから帰して、そう言う前に先生はクルリと俺を回転させて、向き合う体制にした。
先生はふわりと柔らかく笑って、言った。
「うん、俺も好きだよ」
そして、衝撃発言の後、チュッと俺の額にキスを落とした。
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