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しおりを挟む「ーー…好き、です」
言葉にしてから、何となく後悔した。
胸が、先生への気持ちでいっぱいになる。きゅっと胸元を押さえて深呼吸をしていると逆の手に何かに当たって、チャリ、と音を立てた。
「?」
もうすっかり暗闇に慣れた目でそれを拾い上げる。掌に転がして月明かりに照らしてみると、それは何かの鍵のようで。先生のかな? と思った瞬間、何か暖かい物に包まれた。
ギクッと、体が強張った。
それが何かーー誰なのか、分かってしまったから。
「……せ、んせ…」
「…お前、こんな時にこんな所で何してんだ?」
ぎゅっと腕を巻き込んで抱き込まれ身動きが取れなくて、しゃべる度に首筋にかかる息に、カッと体の体温が上昇した。
「………っ、」
後ろにある先生の体温に体が過剰反応して禄な抵抗が出来ない。そんな俺を嘲笑うかのように、先生が手を俺の掌に重ねた。
「…!」
「コレ、探してたんだわ。良かった、見つけてくれたのがお前で。コレ無いと家入れなくてさー」
俺の体が強張っているのを無視して、先生は言葉を紡ぐ。コレ、先生の家の鍵なのか、とか、そんなこと気にならないくらい俺は違うことが気になっていた。
「せ、先生、」
「…ん? 何だ?」
柔らかく問い返してくれる先生に体の力を抜き、恐る恐ると訊いた。
「いつ、ここに…?」
「? たった今だ」
「……そ、そっか…」
キョトンと、何でそんな事を訊くんだって顔をする先生に胸を撫で下ろした。
――良かった、聞かれてない。
「…………にしても、お前。何で本人いないのに告白とかしてんの?」
「!?」
胸を撫で下ろしたその瞬間、からかうように言い放った先生の言葉に、体どころか心臓まで止まったかと思った。
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