迷子

響影

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ピチャ……ん、っふ………

どこからか変な音がする。

ふ…ん、う…

なんだろう、息がくるしい。
無意識に体の前にある重い何かを両手で押す。
布団、こんなに重かったっけ?

「…ふ…、ん…はぁ、息が苦しいの?可愛いね」

知らない人の声…

………ん?知らない?知らなくはない気がする…。さっき聞いたような

だんだんと意識がはっきりしてくる。
未だ寝ぼけかかった瞳でぼーと天井を見つめる。

あれ?ここばあちゃんの家じゃない。
格子状の窓から淡い月の光が差している。いつのまにかこんなに暗くなったのだろうか?

ここはどこだっけ、

おれさっきまで何してたんだっけ、、、、!?

「まずい!帰らなきゃ!!」
「起きた?」

視界いっぱいに黒い髪に黒い瞳の男が現れる



、!?!?
「で、でたな変態!」

すぐさま起き上がり後ろに後退りする。

「変態とは心外だね。疲れて寝ちゃった君をここまで運んだのは僕なんだけど」

そうだ、おれはばあちゃんの夕飯の時間に間に合わなくなるから急いで森を抜けて帰ろうとして……そして…?



「そうだ!あの森どうなってるんだ。進んでも進んでも全然前に進まなかった!」

眠ってしまう前の一連の不思議なことは全部この男のせいだろうと思って聞いてみる。
しかし、八代は首を傾げた。

「僕もわからないんだよね。」

嘘だ。絶対嘘だ。
確証がないが違和感を感じた。

「嘘だ、…だって神社からこの家まで真っ直ぐ連れてきたじゃん!」

そうだ、おれは神社まで辿りつかなかったのに、やしろは道に慣れてるように進んでいた。

「神社?僕は森の中にいた君の落とし物を拾って声をかけただけだよ?」

あの時から、おれは森にいたってことだろうか?
コインを追いかけた時点でこの森に迷い込んでいた?
嘘であってほしかったが、

……
「たとえば、やしろも本当に森について知らなかったとして、この森から出ておれが帰ることはできる、のかな……」

もしかしたら帰り道がわかるかもしれない。
やしろの返事に期待を寄せる。が、返ってきた言葉は…



「僕も出られないんだから君が出る方法なんて分からないかな」



そんな…
「おれ、やっぱりもう帰れないのか…?」

「残念だけどね」

視界が涙で滲む、が水分が足りていないのだろうか?
悲しいはずなのに涙がそこまで出ない…



「夕飯持ってきたんだけど、食べる?」

今はそれどころじゃない。
聞こえているがショックすぎて反応を返せない

「こんな時こそ食べて元気出さなきゃ」

と、無理やり大きめのお椀が乗ったお盆を膝に乗せてくる。
落ちそうになって慌ててお盆をにぎる
お椀の中には野菜がたっぷりと入っており、肉が少ない。今の絶望な気分に加え野菜多めの夕飯にげっそりする。

ぼーとお椀を見ていると横から木のスプーンが差し出される。

「どうぞ。召し上がれ」


八代は自分の作った手料理が誰かの胃袋に入る初めてのひと時を感じるために握られたスプーンとあさとの顔をじっと凝視する。

その視線は痛いほど感じる。
こんな気持ちで、野菜で、じっと見られて、
すっっごい食べずらい…。

ぐぅぅぅうぅぅ……。

それでも、身体は素直だ。あれだけ走り回ったのだから腹も減る。

「い、いただきます。」

唯一のスープに入った肉を口に入れる。
思っていたより柔らかくて、食べやすい。

「…おいしい?ねぇ、おいしい?」

やしろが顔を近づけてこちらの様子を伺ってくる。

「おいしい…」

実際美味しい。にんじんとか以外の野菜はスープが染みていてかなり美味しい。
そう言えば、ばあちゃんもこんな料理作ってたな…
野菜残すとかなしい顔をするからいつも残さず食べる。

ばあちゃんのご飯が食べたい…
思い出すとキリがない、
おれは寂しさを誤魔化すために食べる速度を早めた。






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