背後に注意を

響影

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あの後、暫く頭が回らなくて志麻の腕の中でぼーとしていた。が、すぐにハッとして起き上がる。泣きべそをかきながら、
「しまのばーっっか」と言い残し、自室へと帰った。

その日の夜は志麻のが効いたのか、スレンダーマンが現れることもなく眠ることができた。…眠ることはできたが、ぐっすりとまではいかなかった。




「母さん、いってくるね」

朝、靴を履き鍵を開ける。

「よっ!」

玄関から出ると志麻が家の前で待っていた。正直、昨日の今日で志麻と顔を合わせるのは抵抗があると言うか…、昨日のことを思い出してしまいそうになる。

「顔色悪いな、熱は………ないな」

志麻が俺のおでこに手をあてる。誰のせいで眠れなかったのか、人の気も知らないで。

「……結季?昨日大丈夫だったか?」

昨日と聞いてボンッと俺の顔に熱が一気に集まるのを感じる。幼馴染にあんなことをされて大丈夫なわけがない。

「……大丈夫じゃねぇよ」

「え、……おまじない効かなかったのか?来ちゃった感じ?」

……そっちの心配か。スレンダーマンを追い払えたどうかの「大丈夫か?」だった。

「…………別に来てない。大丈夫だった。」

「よかったな!念の為、今日はもっとヤるか」

赤い顔が更に赤くなる。本当に、こいつは……

その後、俺は登校中も教室でも志麻のことを無視した。どんなに志麻が話しかけてこようが、謝ってこようが完全無視を決め込む。
後ろから、「なにあいつ、」「志麻君かわいそー」「調子乗ってんじゃねーよ」と言う声が聞こえてくるがそれを含めて無視する。

全部デリカシーのない志麻が悪い。今考えれば、あ、あんなことしなくても盛り塩とか置いておけばよかったんだ!今日からはそうしよう。





学校が終わり、下駄箱で靴を履き替える。

「ゆうきー、俺が悪かったって、…今度からはもっと優しくやるから。」

ソコジャナイ。こいつは人の気持ちが一切分からないのだろうか?

「ふんっ、」

「ゆうきぃぃぃ」

こんな会話?をしていると後ろから人がやってくる。

「おい、志麻。俺ら剣道部3年全員集合だって」

志麻と同じ部活の人だ。

「はー?俺部活引退したんですけど、………悪い結季ちょっと待ってて。」

そういうと志麻と部活の人は下駄箱へ戻っていってしまう。俺はいつも通り校門に立って待つ。ぼーとしながら道路を眺める。昨日よりも落葉が減ったな。そろそろ本格的に冬が始まるのかな。学校の前は閑散としており、あまり車が走らない。が、奥から一台の赤い車が走ってくる。

あの車高そうだなーと思いながら走り去った車を眺め、前へと視線を戻す。


俺の体は固まり、背筋が一気に冷える。


道路を挟んで向かい側に帽子を深く被り間から見える肌は青白く、背があまりにも高すぎるスーツの男。スレンダーマンが立って、こちらを見つめていた。

あ、うそ…なんで、

俺は後ろを振り返ると全力で学校まで駆け出した。

今のは絶対見間違えじゃない。用がないのに呼び出した俺を殺しに来たんだ。

学校に行けば誰かしらいて、助けを求めることができる。
早く、誰かに助けを求めねば、

結季は後ろも振り返らずに走る。
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