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9章、魔法学園、本格始動
第69話
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ケイト・モリーン侯爵令嬢は長い手足が美しいモデルのような美女だ。家格も侯爵家と高く、性格も悪くはない。もし欠点をあげるとしたら侯爵令嬢の割に高くない魔力量くらい、それでも黄色と貴族の平均値には達している。
泣き出したケイトの手を引いて私は医務室に連れて行った。
魔獣に驚いて精神的に不安定になっていると教師には説明した。実際、そう言う令嬢は多いらしい。
私はケイトが泣き止むまで彼女に付き添った。
恋愛に疎い私にはアドバイスする事も出来そうにないし、ただ寄り添う事しか出来なかった。
「ごめんなさい。泣いてしまうなんて恥ずかしいわ」
しばらくして、落ち着いたケイトが顔を上げた。
「気にしないで。泣きたくなることなんて誰にでもあるでしょ」
私の言葉にケイトが微かに微笑んだ。
私はケイトにヒールをかけた。彼女の泣き腫らした顔が綺麗になる。
「ジュリア様は何も聞かないのね」
「ジュリア様はやめて。男爵令嬢だから様づけされると落ち着かないの。ジュリアと呼んでくれる?」
「じゃあ私のこともケイトと呼んで」
「う、うん、ケイト‥‥」
「ジュリア‥‥」
「なんだか告白した直後のカップルみたい」
私たちは顔を見合わせて笑った。
「私たち、友達になったのよね?」
「うん。私、女友達が出来たの初めてかも‥」
ホーン男爵領にいた時は身分が近い女性が周りにいなかった。ウォルターと仲が良いせいで嫉妬されることも多かった。
「私は友達が出来たのが初めてだわ」
「えっ、いつも一緒にいる人たちは?」
「彼女たちはモリーン侯爵家に頼まれて私の側にいるの」
「そうなんだ」
「高位貴族が本当の友人を見つけるのは難しいわ。みんな利を求めて近付いて来るから」
「大変だね」
「何を人事みたいな顔をしているの。ジュリアは聖女様なんだから、これから私なんて比べものにならないくらい、大勢の人が寄って来るわよ」
「うわっ、考えたくない」
ふふっとケイトが笑った。ケイトの笑顔がこんなにかわいいなんて、初めて知った。
「あのね、ユーリ様のことなんだけど、ふくよかな人が好きだと思うの。沢山食べてユーリ様の好みに近付いたらどうかな?」
私はずっと思っていたことを言ってみた。
「私がそれを考えなかったと思う?沢山食べても太らない体質みたいなの」
「そうなんだ」
このライメルスではケイトみたいなスレンダーな女性が好まれている。ケイトの体質を羨む人は多いだろう。
それなのに、ケイトはどうして巨乳好きのユーリが好きなんだろう。世の中、上手くいかないことだらけだ。ちょっと切なくなった。
泣き出したケイトの手を引いて私は医務室に連れて行った。
魔獣に驚いて精神的に不安定になっていると教師には説明した。実際、そう言う令嬢は多いらしい。
私はケイトが泣き止むまで彼女に付き添った。
恋愛に疎い私にはアドバイスする事も出来そうにないし、ただ寄り添う事しか出来なかった。
「ごめんなさい。泣いてしまうなんて恥ずかしいわ」
しばらくして、落ち着いたケイトが顔を上げた。
「気にしないで。泣きたくなることなんて誰にでもあるでしょ」
私の言葉にケイトが微かに微笑んだ。
私はケイトにヒールをかけた。彼女の泣き腫らした顔が綺麗になる。
「ジュリア様は何も聞かないのね」
「ジュリア様はやめて。男爵令嬢だから様づけされると落ち着かないの。ジュリアと呼んでくれる?」
「じゃあ私のこともケイトと呼んで」
「う、うん、ケイト‥‥」
「ジュリア‥‥」
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私たちは顔を見合わせて笑った。
「私たち、友達になったのよね?」
「うん。私、女友達が出来たの初めてかも‥」
ホーン男爵領にいた時は身分が近い女性が周りにいなかった。ウォルターと仲が良いせいで嫉妬されることも多かった。
「私は友達が出来たのが初めてだわ」
「えっ、いつも一緒にいる人たちは?」
「彼女たちはモリーン侯爵家に頼まれて私の側にいるの」
「そうなんだ」
「高位貴族が本当の友人を見つけるのは難しいわ。みんな利を求めて近付いて来るから」
「大変だね」
「何を人事みたいな顔をしているの。ジュリアは聖女様なんだから、これから私なんて比べものにならないくらい、大勢の人が寄って来るわよ」
「うわっ、考えたくない」
ふふっとケイトが笑った。ケイトの笑顔がこんなにかわいいなんて、初めて知った。
「あのね、ユーリ様のことなんだけど、ふくよかな人が好きだと思うの。沢山食べてユーリ様の好みに近付いたらどうかな?」
私はずっと思っていたことを言ってみた。
「私がそれを考えなかったと思う?沢山食べても太らない体質みたいなの」
「そうなんだ」
このライメルスではケイトみたいなスレンダーな女性が好まれている。ケイトの体質を羨む人は多いだろう。
それなのに、ケイトはどうして巨乳好きのユーリが好きなんだろう。世の中、上手くいかないことだらけだ。ちょっと切なくなった。
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