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2章、ライメルス魔法学園
第8話
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ライメルス魔法学園は全寮制の学校だ。
ただし一部の入寮は除外される。王族、公爵家、侯爵家の子息令嬢は王都の屋敷から馬車で通うことが許されている。
あんまり偉い人がいると寮で気が安まらないもの、これにはみんな賛成している。
でもね、どうして寮と学校がこんなに離れているんでしょうか?
魔法学園の敷地は広いんだからそこに寮を建てればいいのに、わざと少し離れた場所に建てられている。
これって、アレだよね。お役人さんが偉い人に気を使って、馬車通学の方が断然お得デスよ、って見せるためだよね。
魔法学園には徒歩で30分くらいで着きますよ、と言われたけど入学式の1時間前には着くように計算して寮を出た。出たんだけど、ジュリア・ホーンの体力のなさがハンパない。
他の人よりだいぶ早く登校したのに、どんどん追い越されていく。
3分の2くらい歩いたところで力尽きた。
しゃがみ込んでゼイゼイしていたら声を掛けられた。
「おい、どこか悪いのか?」
顔を上げると体の大きい男の人が心配そうに私を見つめている。
ウォルターはすらっと背が高いが、この人は横にも縦にも大きかった。格闘家みたいな体つきの男の人だ。大男だけど目が優しいので怖さは感じなかった。
「大丈夫です。体力がないだけなので」
私はゼイゼイと息をしながら何とか答えた。
「通学だけでへばっちまうなんて、大丈夫なのか?」
すぐには何も答えられなかった。自分でもジュリアの体力のなさに不安を覚えていたから。
「少し休めば何とかなると思います」
「そんな悠長なこと言ってたら、日が暮れちまうぞ」
そう言うと男は片手でひょいっと私を持ち上げた。そのまま片手で私を抱き抱えると歩き出した。
「えっ、ええー!」
「俺はガイ・ハベル。ハベル伯爵家の長男だ。
怪しいもんじゃないから安心しろ。それにしても軽いな」
ガイ・ハベルは私を抱えたまま、すごい速さで学園へ向かって進んでいく。
「きゃあ、ハベルさん、降ろしてください!」
「どうして?入学式に遅刻するぞ」
「恥ずかしいから降ろしてください!」
「却下だ。恥ずかしいなんて、学園まで休まず歩けるようになってから言え」
そのまま有無を言わせず、私は魔法学園まで運ばれてしまった。
ガイ・ハベルが魔法学園の生徒なのは制服でわかっていたが、まさかの同級生だったとは。
「本当に15歳なんですか?」と私が驚いて言うと、
「俺も同じ事を思っている。制服を着ているから間違いないと思うが、本当に15歳なのか?」
学園の制服は身分証代わりにもなっている。魔術が施されていて本人にしか着れないらしい。卒業するときに学園に返却するから魔法学園の生徒しか着ていない。
「あの、ハベルさん、学園まで運んでくださりありがとうございました。
私はジュリア・ホーン、ホーン男爵家の長女です」
「ガイだ。ガイと呼べ。同級生なのにさん付けもないだろう」
「じゃあ、私のこともジュリアと呼んでください」
こうして私は学園一の大男、ガイ・ハベルと友達になった。
この日から毎日、通学路でへばった私をガイは魔法学園に運んでいき、いつの間にかそれは当たり前の風景になっていった。
ただし一部の入寮は除外される。王族、公爵家、侯爵家の子息令嬢は王都の屋敷から馬車で通うことが許されている。
あんまり偉い人がいると寮で気が安まらないもの、これにはみんな賛成している。
でもね、どうして寮と学校がこんなに離れているんでしょうか?
魔法学園の敷地は広いんだからそこに寮を建てればいいのに、わざと少し離れた場所に建てられている。
これって、アレだよね。お役人さんが偉い人に気を使って、馬車通学の方が断然お得デスよ、って見せるためだよね。
魔法学園には徒歩で30分くらいで着きますよ、と言われたけど入学式の1時間前には着くように計算して寮を出た。出たんだけど、ジュリア・ホーンの体力のなさがハンパない。
他の人よりだいぶ早く登校したのに、どんどん追い越されていく。
3分の2くらい歩いたところで力尽きた。
しゃがみ込んでゼイゼイしていたら声を掛けられた。
「おい、どこか悪いのか?」
顔を上げると体の大きい男の人が心配そうに私を見つめている。
ウォルターはすらっと背が高いが、この人は横にも縦にも大きかった。格闘家みたいな体つきの男の人だ。大男だけど目が優しいので怖さは感じなかった。
「大丈夫です。体力がないだけなので」
私はゼイゼイと息をしながら何とか答えた。
「通学だけでへばっちまうなんて、大丈夫なのか?」
すぐには何も答えられなかった。自分でもジュリアの体力のなさに不安を覚えていたから。
「少し休めば何とかなると思います」
「そんな悠長なこと言ってたら、日が暮れちまうぞ」
そう言うと男は片手でひょいっと私を持ち上げた。そのまま片手で私を抱き抱えると歩き出した。
「えっ、ええー!」
「俺はガイ・ハベル。ハベル伯爵家の長男だ。
怪しいもんじゃないから安心しろ。それにしても軽いな」
ガイ・ハベルは私を抱えたまま、すごい速さで学園へ向かって進んでいく。
「きゃあ、ハベルさん、降ろしてください!」
「どうして?入学式に遅刻するぞ」
「恥ずかしいから降ろしてください!」
「却下だ。恥ずかしいなんて、学園まで休まず歩けるようになってから言え」
そのまま有無を言わせず、私は魔法学園まで運ばれてしまった。
ガイ・ハベルが魔法学園の生徒なのは制服でわかっていたが、まさかの同級生だったとは。
「本当に15歳なんですか?」と私が驚いて言うと、
「俺も同じ事を思っている。制服を着ているから間違いないと思うが、本当に15歳なのか?」
学園の制服は身分証代わりにもなっている。魔術が施されていて本人にしか着れないらしい。卒業するときに学園に返却するから魔法学園の生徒しか着ていない。
「あの、ハベルさん、学園まで運んでくださりありがとうございました。
私はジュリア・ホーン、ホーン男爵家の長女です」
「ガイだ。ガイと呼べ。同級生なのにさん付けもないだろう」
「じゃあ、私のこともジュリアと呼んでください」
こうして私は学園一の大男、ガイ・ハベルと友達になった。
この日から毎日、通学路でへばった私をガイは魔法学園に運んでいき、いつの間にかそれは当たり前の風景になっていった。
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