下町育ちの侯爵令嬢

ユキ団長

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  オスカー様は真面目に基礎訓練を続けていた。護衛と一緒に走り込みもしているらしい。ひと月もすると筋肉がついて体がひとまわり大きくなった。身長もまた伸びたみたいだ。

 「体力が付いてきたから護身術だけでなく剣術も教えて欲しい。」とオスカー様に頼まれた。
 「ムリ。」
 「どうしてだ?」
 「わたし、戦う時に剣は使わないの。得物はナイフのみ。近付いて急所を狙う戦法だから騎士みたいな戦いかたは出来ないわ。」
 「おっかね~。まさに暗殺者じゃないか。」とギルバートが言った。
 「この見かけで油断させられるし向いているとは思うわ。やらないけど。」

 「騎士科に進みたいと言っていたから剣も得意なのだと思っていた。」
 「ユインティーナ様はどうして騎士科に進みたいのさ?」
 「騎士科で学んだらエドガー様も倒せるかなと思って。」
 「エドガー兄さんを倒したいって、どうして?」
 「こう頭の中でシュミレーションするでしょ。オスカー様なら瞬殺できる。ギルバートも倒せる。でもエドガー様はどうしても倒せないんだもの。」
 「わかった。お前は基礎学科が終わったら卒業して、すぐ結婚しろ。おれはこれ以上巻き込まれたくない。」
 「エドガー様と結婚したらギルバートはわたしの義弟になるんだね。」
 「ああ、そうだった。」
  ギルバートが頭を抱えた。
 「おれはユインティーナ様から逃れられないのか。」

 「まだハッキリ決まった話でもないだろう。これから別の相手と恋仲になるかも知れない。」
 「そうだな。物好きなのはエドガー兄さんだけじゃないか。ユインティーナ様はどんな男性が好きなんだ。」
 「うーん、笑顔が素敵な人がいいな。一緒にいて楽しそうにしていると嬉しいでしょう。」
 「意外に普通だな。」
 「ギルバートはわたしをなんだと思っているのよ。」
 「他に希望はあるか?」とオスカー様が聞いてきた。
 「屋台とかで奢ってくれると嬉しいな。あっ、監禁とかしたがるのは絶対にダメ。」
 「普通、しないだろ。」
 「この前会ったとき、エドガー様が閉じ込めておきたいって言ってたの。」
 「最近の兄さんは様子がおかしいな。ユインティーナ様が何かしたんじゃないのか?」
 「・・・。」
 「やっぱり何かしたんだな。」
 「酔っ払ってキスをしたみたいなんだけど覚えてないの。」
 「学園を抜け出した日か。あの真面目な兄さんをおかしくするなんて、どんなキスなんだよ。」

 「ユインティーナは酔うとキス魔になるのか?」とオスカー様が聞いてきた。
 「一回しか飲んだことがないからわからない。」
 「今度一緒に飲んでみようか?」
 「ビールは苦いから嫌い。」
 「ワインやシャンパンは甘くて飲みやすいぞ。」
 「はーい、却下却下。護衛として許しません。」
  ギルバートがわたしとオスカー様を引き離した。
 「邪魔はしないけど真っ当な方法にしてくれよ。」と言った。
 
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